
昨日、CX-5の自動ブレーキ体験試乗の場でシステムが作動せずに重軽傷者が出る事故が起こったというニュースをカミさんから聞きました。
今朝、ネットのニュースを2、3チェックして大体状況が判り、ふーんという感じで特にブログにこうして書くつもりも無かったのですが、ニュースサイトのコメント欄や、みんカラのブログの記事をいくつか見るうち、段々腹が立ってきたので一筆書こうと思い立ちました。
最初に断わっておきますが、辛口です(--)/
今回、不幸にして事故が発生してしまったワケですが、これを取り上げて"それみたことか"と、まるで鬼の首を取ったかのごとく批判的な意見を述べる輩というのは居るものです。しかしまぁ彼らの主張を斜め読みしましたが、なんとも陳腐なモノばかり(苦笑)
「自動ブレーキを過信するな!」
「システムが誤動作する可能性がある。」
「クルマが勝手に止まるなんて有り得ない!」
などと捲くし立てます。一見、正論のようにも見えますが、まぁ自動ブレーキ否定派にとっては、格好の口撃材料といった感じでしょうか?
こういった連中の主張で真っ先に噛み付きたくなったのがコレです。
「自動ブレーキを過信するのは禁物」
マスコミも含めて実に多くの人が書いていて、一見至極真っ当な意見のようにも思えるかもしれませんが、ボクは彼らに問いたい。
自動ブレーキを
過信するって、一体どーゆーことを言っている?
仮にそれが「
クルマが自動で止まってくれて、事故を回避してくれる」としましょうか。
じゃぁ、その自動ブレーキを
過信したドライバーの、一体
どんな運転が問題と、貴方たちは考えているの?
マツダのSCBSもそうですが、多くのメーカーの自動ブレーキは、前方の障害物に対して
減速を開始しないと衝突が避けられないと判断したときに初めて作動するものです。ということは、システムは衝突の危険ギリギリまでは作動しないのです。
そんなシステムを過信するってことは、前方の障害物に衝突するギリギリになってもブレーキを踏まない、ということを貴方は言っているの?或いは踏むのはもっぱらアクセルだけで、停止は一切クルマに任せてブレーキは踏まないとか?
そんなドライバーが世の中にいるのか???
「ここでブレーキを踏まなきゃ追突するかも?」という場面で、ブレーキを踏まずにクルマに減速を任せられるドライバーが世の中に居るとは、ボクには思えません。
仮に「この条件なら100%クルマが自動で止まってくれる」と解っていたとしても、クルマに任せてブレーキを踏まないという行為は、障害物を目前にして相当な勇気や忍耐を伴うハズです。
つまり、現実問題として自動ブレーキを十分に信頼したとしても、クルマを減速、或いは停止させる行為を疎かにするドライバーは存在し得ない。それを疎かにするということは、衝突の恐怖に打ち勝って減速をクルマに委ねる行為であって、常識的に考えて生理的には困難でしょう。
さて、改めて問う。「自動ブレーキを過信する」とは、一体何のことを言っているのか?
「システムの動作条件をきちんと理解すべきだ」とか言う意見も同類です。
じゃぁ貴方は「時速30km以下になると作動する」という事を知ったら、時速30kmを下回った時点で、ブレーキペダルを離せるのか?クルマが停止しなければ、前方車両に追突する危険がある場面で。仮に自動ブレーキを信頼していたとしても、普通はそのままブレーキを踏んでクルマを止めますよね?
これも問いたい。自動ブレーキシステムの作動条件を理解したからとって、何か普段の運転が変るのか?
「システムの誤動作の可能性がある?」「100%は有り得ない?」
メーカーが想定した条件を満たせばシステムは100%機能すべきであって、作動しなかったのならそれはなんらか作動条件を満たさなかったから。
条件を満たしていたにも関わらず作動しないのは不具合です。即刻リコールでしょう。
ただそれだけです。
メーカーによっては、作動条件を満たせばクルマは自動で完全停止します。スバルのアイサイトはCMでちゃんと止まってますよね?TOKIOの太一君が「スゲー」って言っているヤツ(^_^;)。
結局、ピーチクパーチク言って(書いて)いるブログの多くが、まぁ深い考えも無しにネタとしてヒステリックに騒いでいるだけのように見えて、ある意味非常に不愉快でした。なんといってもウチのクルマにもSCBS、付いてますしね(苦笑)。
今回の事故は「自動ブレーキの体験試乗会」で起きました。つまりドライバーは、このままブレーキを踏まなければ衝突するという場面で、ブレーキを踏まなくてもクルマが止まるという機能を体験しに行って事故にあったんですよ。これを取り上げて「自動ブレーキへの過信」を云々するのはお門違い。彼とて別に過信していた訳ではないでしょう。
システムの不具合等の誤動作の可能性はゼロではありません。しかし事故の発生時間から推察するに、事故以前には正常に動作していたことが伺えますから可能性としては極めて低いと考えれます。調査結果を待つべきで断定は出来ませんけどね。
ニューズからうかがい知れる状況から推察すれば、今回の事故は「自動ブレーキが作動する条件を揃えられなかった」という極めて単純な操作ミスという可能性がもっとも高いと考えられます。なんしろ「この条件で作動します」を体験する試乗会であって「自動ブレーキが作動するかしないか」を実験していた訳ではないんですから。
事故原因がハッキリするまでマツダは体験試乗を自粛するそうですね。妥当な判断だと思います。
原因はその内、明らかになるでしょうが、今回の事件から学べる教訓は次のようなものでしょう。
先ず、障害物をウレタンパッドではなくカーテンというかスダレのようなモノにすべき。別にウレタンパッドでも良いのですが、要はクルマがぶつかっても損傷はせず、ドライバーも怪我をしない、クルマがそのまま通り過ぎられるようなモノを考えるべきでしょう。そしてその障害物を通り過ぎた後、安全に止まれる十分なスペースも確保すること。
理由は勿論「万一のため」ですが、この万が一というのはシステム誤動作のことではありません。時速30km以下で走行しなければならないのに、それ以上出すバカ者が居た場合に事無きを得るためです。
そして体験試乗ですが、消費者が運転するのであれば運転条件をきちんと説明すること。
目的が自動ブレーキの体験である以上、システムの作動条件を整えないと話になりません。
ボクが企画担当であれば、以下のようなメニューを考えます。
①時速30km以下で走行し、ブレーキを踏まなくても障害物手前で自動停止することを体験。
②次に、時速30km以上で走行し、自動ブレーキが作動せずに障害物に当る(スダレをくぐる)ことを体験。これで「いつでも自動で止まってくれる」という期待や誤解は解けます。
③再び30km以下で走行しますが、自動ブレーキが掛かると同時にブレーキペダルを軽く踏んで貰い自動ブレーキが解除されされることを確認。止まりきれずに障害物にぶつかればbest。
④最後に30km以下で走行し、自動ブレーキ作動と同時にブレーキを力いっぱい踏んでもらい、正しく停止することを体験。
③と④が「ドライバーがブレーキ操作を行うと自動ブレーキが解除される」というマツダのシステムなどでは非常に重要で、④が正しいシステムの使い方であるという事をシッカリ理解してもらえば、参加者も満足でしょう。
今回の事故に於けるポイントは、ドライバーがシステムの作動条件を正しく理解していたか?がひとつあります。怪我をしたお二人は気の毒でしたが、販売員が説明を怠っていたなら彼が加害者でドライバーが被害者。説明を受けたにも関わらずドライバーが守らなかった、或いは守れなかったのならドライバーが加害者で、販売員が被害者です。
そしてもうひとつは、そのような万一システムが作動しなかった場合にも大事に至らないような会場設定をしていなかった主催者に、安全管理に対する過失の可能性があります。
しかしながら、冷静に考えればただそれだけであって、自動ブレーキというシステムそのものの是非で喧々諤々議論をするような事故だとは、ボクには思えません。何しろ「体験試乗会」という特殊な場での話ですから。
もし原因が車両のシステムにあったとしたら、それはリコールなりで改修して貰わないと困りますが、それを言うのは時期尚早。
ってな感じで、事故の起こった特殊な状況や想定される原因などそっちのけで、やれ自動ブレーキは是か非か?みたいな議論に持っていくのは、ボクには子供の揚げ足取りにしか見えませんでしたね。
自動ブレーキと事故で過去のニュースをネット検索してみても、トヨタ車のレーダーがトラックか何かに反射して必要のないところで急ブレーキが掛かった件が引っ掛かるくらいです。恐らく自動ブレーキによってちょっとした軽微な接触事故を回避したケースは数多いのでしょうが、事故にならなければ統計は取りようがありません。そして「自動ブレーキが効かなかったから事故った」なんて事例は見当たりません。それが現実です。
ちなみにボクは自動ブレーキに対して肯定派でも否定派でもありませんけど、これが大小問わず多少なりとも事故の際の被害軽減や、衝突回避に繋がるのであれば、それは素晴らしいことだと思っています。