
色々書きたいことが溜まってきてしまったが、イマイチ纏らない話題もあって、徐々に捌いていかねばならん。
フルSKYACTIV第一弾のCX-5が2月に発表されながら、日本国内には投入されなかった唯一のSKYACTIVテクノロジーである「SKYACTIV-MT」が新型アテンザと共にいよいよ投入される。このSKYACTIV-MTの扱いについて、ボクはずっと疑問に思っていた。CX-5に設定しなかった理由は需要予測によるものだろうと考えてはいたが、一方でその考え方が腑に落ちない点もあったのだ。
未だに知られていない話だが、SKYACITV-DriveとSKYACTIV-MTは同一のラインで生産可能な、メーカーにとっては画期的なミッションだ。当然、両方共に既に開発は完了しており、今後は個々の車種の開発に合わせて、文字通り合わせ込み(専門用語ではキャリブレーションというらしい)をするだけである。しかもCX-5もアテンザも、輸出仕様にはSKYACTIV-MTの塔載車があるのだ。国内市場に投入するにあたって、わざわざ何か開発作業を行うとか、生産のための準備をしなければならないとかいったことは何もないのだ。「国内では売れないから」「採算が取れないから」という人が居るが、そう言う人は上記の内容を全く理解していないのだろう。そもそも日本国内で単独採算を取る必要はない。更に乱暴に言えばSKYACTIV-MTが売れなくてもSKYACTIV-Driveで採算がある程度確保出来てしまうのだ。同一の生産ラインが使えるということは。
何がSKYACTIV-MT国内市場投入の障害だったのか?春先に某専門家と少しやり合った中で「マツダは国内にMTを投入したがっている」と彼は言った。そしてMTを投入しないのは残念だ、けしからん、と。ボクはこういった専門家が自動車メーカーの事業性を無視して「XXすべき!」と吼えるのが腹立たしいので大人気なく思わず噛み付いてしまったのだが、既に述べた通りでそもそも事業採算という観点でのハードルはこれ以上無い程、低くなっているのだ。マツダの中で一体、何が起こっていたのか?可能性として販売部門の抵抗というのは考えられる。ラインナップすれば当然、ノルマが発生する。それが例え計画販売台数の5%であれ、売るのであれば毎月50台(CX-5の月間販売計画は当初1,000台だった)を売らねばならない。これをモデルライフに渡ってである。「毎月50台のMTを5年間売り続けるなんて無理!」と販売サイドがゴネた?しかしそれなら受注販売という手だって取れる。やはり腑に落ちない。
どうもしっくりしないながらも、SKYACTIV-MTの国内投入は来年以降のアクセラ、デミオのデビューまで待つことになるのだろうと、なんとなく考えていた。CX-5に設定しなかった以上、アテンザにも当初は設定しないだろう。投入するとすればマイナーチェンジのタイミングかな?というのが、なんとなく根拠の無いながらのボクの予想であった。
ところが新型アテンザでSKYACTIV-MTを国内投入である。この報を受けて、改めて考え直してみたらピンと来るものがあった。もしそうだとすれば腑に落ちる。
既に述べた通り、アテンザのみならずCX-5においてもSKYACTIV-MTを国内投入するにあたり、開発部門も製造部門もなんら障害は無い。開発は既に終わっているし、生産ラインにも乗っている。作ることにはなんの問題もないのにCX-5ではSKYACTIV-MTを国内市場に投入しなかったのはなぜか?それはつまり「作ること以外の部分に障害があった」からだ。要はそれが何か?という話。
新商品を市場に投入するにあたって整備しなければならないもの、それは販売体制とサービス体制だ。販売体制は当然、カタログを作ったりディーラーの営業マンに研修を行ったりといったことが必要だ。一方サービス体制はディーラーのサービスマンにやはり研修などが必要となる。SKYACTIV-MTは新型のマニュアルトランスミッションだ。クラッチのO/H、シンクロの交換といったMTでは稀に必要となる整備をディーラーで行えるようにしなければならない。マツダのディーラーが全国に何店舗あるのか知らないが、各店舗のサービスマン2名を1日実地研修に借り出したとしたら、その費用はそれなりの額になる。そしてこういった費用は企業会計においては販管費に分類される。CX-5が発表になったのは2月であるから事業年度でいうと2011年度。つまり前年度であり、マツダは赤字決算をしている。
もしかしたら、マツダは元々CX-5でもSKYACTIV-MTをラインナップするつもりであったが、決算見通しの悪化を受けてSKYACTIV-MTのサービス体制の構築を先送りし、赤字幅の縮小(販管費の圧縮)を図ったのではないか?
ではアテンザでMTを設定できたのはなぜか?今期も歴史的な円高が継続、ユーロ安もあってマツダは引き続き苦しい状況にある。しかしCX-5が当初計画を大幅に上回る人気を博し、二度に渡る生産計画の上方修正を行うくらいに好調だ。今年は新型ミッションのサービス体制の構築費用を削らなければならない状況にはない。元々昨年度に行うはずだった施策(使うつもりだった費用)を今年に先送りしただけであり、来年以降、販売するラインナップも増えるのだから、やれるときにやってしまって商品ラインナップを拡充すべきだ。MTの国内需要は確かに微々たるものだが、クルマ好きにとってはラインナップしているだけでブランドイメージにとってはプラスの効果が期待出来る。
もしこのボクの憶測が当っていたら、CX-5にも遅くてもマイナーチェンジのタイミングでMTの追加があるだろう。アクセラ、デミオにも当然、SKYACTIV-MTもラインナップしてくるハズだ。アテンザディーゼルのMTは恐らく全体の5%も売れない。仮に年間の販売目標が12,000台だとしてもMTはたったの600台だ。そのためだけに日本全国にサービス体制を作るのは費用対効果の面でもったいない話だ。有効利用という意味では他の車種でもMTを載せていくべきだ。
以上がボクの憶測で、当然当っているとは限らないが、以上のことから今後のマツダのSKYACTIV塔載車6車種には、SKYACTIV-MTが必ずバリエーションに存在すると予想したい。ボク自身はそれを買うことは恐らく無いが、試乗車でもレンタカーでも、そのシフトフィールは一度は体感してみたいものだ。なにしろ、、、
FC3Sのシフトフィールはお世辞にも良好とは言えなかったからね(苦笑)。
Posted at 2012/10/13 21:06:08 | |
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