戦争は、とっくの昔にはじまっていた
現在の世界の状況を「戦争状態である」と言えば、多くの人が「大げさな」「荒唐無稽ない」と思うかもしれません。それは無理からぬ事と思いつつ、興味のある人はお付き合いください。
ただ最初に明記しておきますが、ここでボクが言う「戦争」って「新型コロナウイルスが細菌兵器である」とか、パンデミック(世界的な感染流行)が「中国の生物兵器による攻撃である」、
という話ではありませんので念のため(^_^;)。
先ず前提知識として、例によって池田直渡氏のコラムを2本ほど紹介。
2020年の中国自動車マーケット(前編)
2020年の中国自動車マーケット(後編)
記事で紹介されている通り、このパンデミックが始まる以前から米国と中国は「経済戦争」と呼ばれる状態にあり、文中で
「米国は明らかにこれまでと別種の決意をしていると見るほかはない」
「今回の米中摩擦が一時的な問題ではなさそう」
と紹介されていますが、この記事を読んでボクはふと
あるエピソードを思い出しました。
かつて日本と米国が「貿易戦争」と呼ばれる貿易摩擦の時代があり、家電製品や自動車などから鉄鋼、繊維製品まで、1960年代の中頃から1990年代の初頭まで両国間の大きな問題となりました。
この問題が或る程度終息した1995年頃だったと記憶しているのですが、或る米国の通商代表部の要人が、メディアに対して以下のような趣旨の回述をしていたんです。
「我々は日米貿易摩擦が、
日本の通産省が描いた戦略に基づき、民間企業が経済活動を通じて
仕掛けた経済戦争ではないか?という懸念を
真剣に抱いており、調査を続けてきた。第二次世界大戦で敗戦した日本が、今度は資本主義のメカニズムを用いて米国を支配しようという野心があったのではないかと考えていたのだ。しかしながら、
いくら調査を進めてもそのような陰謀はどこにも無かった。今回の日米貿易摩擦の背景に日本政府の戦略も戦術も何もなく、純粋に日本の民間企業の努力によって引き起こされていたことがわかった。」
我々は「戦争」と聞けば、兵器を使った武力行使(つまり暴力)によって
他国に侵攻し領土を奪うことという先入観があり、経済戦争などと言われてもピンと来ません。そこでは「兵器は使われない」「人が死なない」ワケで、(リアルな)戦争に基づく危機感を持つことは難しい(イメージできない)のは無理からぬことだと思います。
まぁ
ライバル企業同士の市場(シェア)争い辺りがもっともイメージし易い話で、それを「戦争」と表現しても、別に
物騒なものではないでしょう?というワケ(^_^;)。
アメリカ映画で良く「ナショナル・セキュリティ(国家安全保障)」というセリフを聞いた記憶のある人は多いかもしれません。
それはスパイ映画など、最終的には主人公や兵士が武器でドンパチやるクライマックスに繋がるパターンが多いのですが、今回、米国並びに西側諸国が直面している「ナショナル・セキュリティ」は、実は
かつての米国通商代表部が日本に対して疑念を持ち、しかし実際には取り越し苦労に終わった懸念が、現実の脅威となったと言えます。
なぜ米国がその危機感を持てたのか、ボクは非常に興味深い話だと思っています。かつての日本との貿易摩擦の教訓が付け継がれていた?或いは誰かから何らかの情報がもたらされたからか、真相は判りません。
判りませんが、池田氏の記事に記載の通り、米国、否トランプ大統領は明確な危機感と決意を持って行動を起こしていましたが、既に述べた通りで、この危機感はイメージし難いが故に欧州など他国と必ずしも共有できていたワケではなく、したがって足並みは揃っていませんでした。
と、こ、ろ、が、、、
この新型コロナウイルスのパンデミックと、それによって炙り出された様々な事実によって、どうも米国の持っていた危機感に気付き始めた国が多いようです。
(欧米のマスメディアには「Wake up call」なんて言い方がされています。)
孫氏の兵法に「戦わずして勝つ」という中国のコトワザがあります。
国家の安全保障といえば、
エネルギー、食糧の自給率は一般に良く知られています。しかし現代の我々の生活、そしてリアルな戦争に於いても、エネルギーと食料さえあれば良いかと言えば、それだけでは立ち行きません。
グローバル化がもたらしたサプライチェーンは戦争に置き換えれば補給線であり、それを敵性国家が押さえてしまえば、彼の国は正に「戦わずして勝つ」ことが出来るばかりか、そもそも戦を挑まれることすら無くなります。
このリアル戦争に於ける補給線が、現在の平時の自由資本経済に於けるグローバル・サプライチェーンと見立てると、某国の進出(侵略)は防衛する必要がある、という結論に帰着します。
これがタイトルでいうところの
既に始まっていた戦争の中身ですが、医薬品(ジェネリックドラッグ)と医療製品(マスク等)は既に中国に侵略されてしまっていました。この問題は米国・医療関係者の間でかなり前(2004年とか)から問題視する声が上がっていたようですが、当時は単なる貿易問題、或いは経済問題として取り扱われていたようです。
しかしながら今回のパンデミックで、医薬品、マスク・防護服などの医療品に於いても他国依存度が高過ぎたり、その「他国」がどこなのかによっては大きな問題になることを、米国のみならず世界中の国が気付かされたと言えます。
もし日本が市場を独占していたら、どこも何も思わなかったでしょうww
そしてこの問題は、何も医療品に限らず市場のあらゆる分野で起こっていることも判ってきました。この流れは2000年以降、米国が中国との自由貿易を推進し、2001年に中国がWTOに参加して以降のことです。当時のアメリカ大統領はビル・クリントン氏で、その思惑は恐らく中国を自由主義経済に招き入れることによって、
中国がかつてのソビエト連邦のように
民主的・自由主義的な国家に変貌していくことを期待していた、と言われています。
ところが
現実は全く逆で、かつての米国通商代表部が日本の通産省に抱いた
懸念(これは単なる幻想でした)
が、中国共産党によって現在進行形で実行されているワケです。
これに対する防衛(というよりもはや奪還)は当然、一朝一夕にはいきません。数年単位、もしかしたら10年以上掛かるような話ですが、具体的な動きは既に始まっています。
中国・新興カフェ「深刻な不正会計」のつまずき(東洋経済)
中国の動画配信大手「iQIYI」に不正会計疑惑(東洋経済)
こんなことです。このタイミングで米国に進出した中国企業の不正経理の問題が明るみになるのは、恐らく偶然ではないでしょう。この戦争が「武器を使って殺し合う」モノではないが故に、こういう動きになるワケですね(^_^;)。
実はサプライチェーンの奪還に留まらず、米国内では様々な動きがあるのですが、もう既に十分長くなっちゃったので、それは別の機会に。
最後にオマケですが、判り易い具体的な例をひとつ挙げましょう。
4月の初旬に米国トランプ大統領が「3M社のマスク禁輸を要請」と報じられて、批判を受けた件は記憶にあるでしょうか?
日本では
表面的にはそういう風に報じられていますが、意外に報じられていない事実があります。
米3M、マスクの生産・輸入増加表明 トランプ氏の批判「正しくない」(朝日新聞)
問題の本質は記事の最後の一文に隠れています。
マイク・ローマン最高経営責任者(CEO)談
「3Mが中国で生産するN95マスク1000万枚を
米国向けに出荷する許可を中国当局から得たことを明らかにした。」
3Mは米国の民間企業の筈ですが、3Mの中国工場から米国に向けてマスクを輸出するのに、
どうして中国当局の許可が必要なのでしょうか?(苦笑)
これは3Mの中国工場(現地法人)が中国共産党に株式を買い占められて事実上、国有化されてしまい、株主(つまり中国当局)の意向に逆らえなくなっていることを示唆しています。
トランプ大統領からしたら、国家の危機に自国の企業に最大限の協力を得たいところが、3M社の中国法人は中国共産党の支配下に下り、彼らの言うことは聞いても大統領である自分の言うことは聞けない、となったらハラワタが煮えくり返ったことでしょう。
つまり3M社の経営陣は中国への工場進出、そして現地法人の株式売却などで巨額の利益を得た可能性があり、結果として中国の外交カードとして3Mのマスクは使われたワケです。
3Mの経営陣がやったことは真っ当な経済活動でありますが、米国民からすれば売国奴ということになるのでしょう(^_^;)。これが中国共産党のやり方で、しかも我々自由主義経済の中には、彼らに懐柔され協力し、利益を得ている資本家が大勢居るのです。それ故に厄介、、、というか自由主義世界は非常に厳しい(きわどい)状況にあることは、覚えておいた方が良いと思います。
この記事は、
環境戦争が体制の死期を速めた。について書いています。
Posted at 2020/05/20 00:20:55 | |
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