■■ 【ショルダー形状、トレッド・パターン、溝の幅、深さ】 ■■
「NS-2R」単一で見るよりも、
一般的なトレッド・パターンとグルーブをもっていて(※やや旧々世代ではありますが)、
同じアジアン・タイヤである新品の「
PINSO(
PS91)」と比較して見ると、より分かりやすいかと。
書くまでもないことですが、一目瞭然で。
走りの方向性において、全くキャラクターが違いますね。
◆◆ 「ショルダー形状」 ◆◆
見比べやすいように、
ショルダーからショルダーへ色を塗ってみると↓
まん丸ラウンドの「PINSO」と比べると、
「NS-2R」のスクエアさが異常に際立ちますね。
業界の今の流れで言えば、一般ラジアルのエクストリーム・スポーツ系で、
ここまで分かりやすく「スクエア」なのは、間違いなく少数派。
ショルダーの形状だけなら「Sタイヤ」といってイイほど。
スクエア形状は、皆さんご存知のとおり、一般的に「トラクション」派。
誤解を恐れずに端的に言えば、縦方向(加減速)が得意。
とはいえ、決して横方向が弱いというわけではなく、
タイム的に美味しくなるよう “タイヤなり” に走らせる時、
縦方向に活かした方が、このタイヤは活きてくる方向性(タイヤ特性)を
“一部” 持っているという話ですね。
◆◆ 「トレッド・パターン」 ◆◆
どちらとも、ほぼシンメトリー・パターン。
「
センター・リブ」(
赤)は、「PINSO」は 「
1」本。
「NS-2R 」は、「AD08R」のように 「
2」本。
初期のレスポンスや直進性がいいのはどちらなんでしょうね。
これって些細なことのようですが、拘る人には大事なことで、
個人個人で好きなフィーリングが分かれます。
ファースト・ブロック(
緑)、
セカンド・ブロック(
黄)があり、
それぞれがリブ化せずに細かく分かれている、「PINSO」。
ショルダーからセンターリブまでのブロックが結合し、
左右に巨大なリブのような大型ブロック(
黄)を持つ、「NS-2R 」。
当然このような形状はヨレが少なく、ブロック剛性は高い部類に入ります。
スリック・タイヤの中央に縦溝を掘って、
熱ダレを防ぐスリットを左右にチョコチョコ入れた、
近年の日本が発売するハイグリップ・ラジアルに似ています。
…と、いうか、これはどう見ても、
YHの「AD07」~「AD08R」の流れを汲んだ安価版みたいな感じでしょうか?
が、斜めに入っているグルーブの数は、日本各製品に比べて多く、長めなので。
よく言えば“ネジれる” 余地がけっこう残されている感じ。
ちなみにネオバは、
他の現行ハイグリップたちと比べてしまうと、ヨレを感じます。
ヨレそのものが悪いわけでありませんけど。わたしはヨレるほうが好きですし。
ネオバは、“動く(動かせる)タイヤ” が好きな人にはピッタリで、
「減らねぇ、減らねぇ」と言われるほど耐摩耗性(寿命)が異常に優れているので、
街乗りメインでハイグリップを長く使いたいという方には、超お奨めのタイヤです。
さて、話を戻しまして。
続いて「接地する有効トレッド幅」について。
分かりやすいスクエア形状と分かりやすいほどラウンド形状の違いで、
「235」と「225」の10mmの違い以上に感じますね。
「NS-2R」は、スクエア形状によって、
プラス5mm~8mmぐらい幅を稼いでいるように見受けられます。
ツライチだったクルマは、フェンダーとの干渉に注意ですね。
(※この点については、次回の3回目の記事に載せます。)
わたしの場合、【「225」→「235」】と替え、
「235」の「NS-2R」は、実質的には「241mm」の幅があるので、
結果的に以前よりも「16mm」ほどタイヤのトレッド幅を広くしたことになります。
タイヤのトレッド幅を広げると、
抵抗が増える、重たくなる、轍にハンドルを取られる、レスポンスが下がる。
だけではなく、基本的に荷重が浅い領域だと、
細いタイヤと(恐らく205ぐらいでも)グリップは変らない。
さらにブレーキング、特にウェットでは、前後方向のタイヤ接地面積が減るので不利。
と言われ、ほとんどメリットはないように思えます。
実際、「205」だろうが「235」だろうが、車重が変らなければ、
タイヤに掛かる最大荷重は、「イコール」です。
じゃあなんで、メリットが無いように思えるのに「幅を太く」したかと言うと…。
唯一、荷重を掛け切る付近から、もうこれ以上の荷重は掛からないトコ、
さらに、タイヤの潰しを戻し始める、という領域でのグリップが上がるからです。
剛性の高いタイヤを「潰しきれる(←ココ大事)」ドライバーにとって、
最後の領域で、あともう少し、あとひと粘りして欲しいというゾーンが美味しくなります。
わたしの場合、ここが欲しかったわけです。
アテンザは車重がある(フロント・ヘビーな)クルマですしね。
結果、上げ幅はコース次第ですが、
小気味よさの減少などのフィーリング変化は別として、
タイヤのトレッド拡大は、確実にタイム・アップにつながります。
また、実質効果のあるエアロ・パーツを装着して「ダウンフォースを増やした場合」は、
無条件でそれまで以上にタイヤにかかる荷重が増すので、
トレッド幅を太くするのは、特に、非常に、有効です。
さらに、「タイヤを太くする=転がり抵抗が増える」と、
世間ではまことしやかに囁かれていますが。
タイヤを太くしても、同一空気圧、同一負荷重量であれば、
接地面“形状”は変わりますが、接地“面積”はほとんど変りません。
つまり多少ワイドにしても、転がり抵抗はほとんど変らなく。
むしろ、ナローよりも縦方向の接地面の幅が減って、転がりやすくなります。
さらに、タイヤ様々な箇所の剛性が増しているスポーツ系タイヤは、
「弾性損失」が少なく、転がり抵抗を抑えますので。
このプラス・マイナスの作用で、
グリップの高いスポーツタイヤで、タイヤ幅を太くしたとしても、
意外と、走行燃費への悪影響は少ないか変わらないことが多いです。
わたしの場合、ピンソの時よりも良くなりましたし。
ガソリン満タン→空の場合、50~70kmぐらいは多く走れるようになったので。
0.8~1.0km/リッターぐらい向上したようですね。
ピンソの時より1本あたり「1.9キロ」重くなり、4本それぞれ幅が「16mm」も太くなり、
世間の常識では燃費がかなり悪化する傾向なのに。
面白いものです。
◆◆ 「溝の “
数” と “
深さ”」比較(※
メイン・グルーブ)◆◆
●「PINSO」……約8.00~8.03mm
●「NS-2R」……約6.65~6.70mm
●「PINSO」……4本
●「NS-2R」……3本
●
メイングルーブ比較
●
全グルーブ比較
へヴィーウェットがミューの低い公道で置きうる条件下では、
「一般的なタイヤ」の新品状態で、9~10mmは欲しいところ。
なので、
約8mmの「PINSO」も浅いほうで、スポーツよりに振っているのが分かりますが、
約6mmの「NS-2R」は、世界的に見てもかなり浅い、稀有なタイヤです。
「RE71R」と同じくらいでしょうか。
磨耗してきた時のウェット走行にて、
水溜り通過でのハイドロにはかなりの注意が必要ですね。
コンパウンドである程度はグリップすると予想できますが。
さらに、溝が浅いと言うことは、トレッドのゴムの総量が少ないとも言えるので、
減りやすいコンパウンド特性と合わさって、やはり寿命は短いほうと言えます。
□□ 「各グルーブの “
幅”」比較 □□
■PINSO
① 7 mm
② 10 mm
③ 4~5 mm
④ 3~4 mm
※メイングルーブのみの Void Ratio (溝の比率):15%
■NS-2R
① 10 mm
② 8.5 mm
③ a: 4.5 mm
b: 7.5 mm
c: 12 ~13.5 mm
d: 8.5 mm
④ 6.5 mm
※メイングルーブのみの Void Ratio (溝の比率):11%
□□ タイヤ裏側 □□
□□ 各部アップ □□
●ショルダーブロック~セカンドブロック&周辺グルーブ
いかにもスクエア。
いかにも剛性がありそう。
実際、手でショルダーからビートにかけて握ってみると、かなり硬いです。
当然、ピンソよりも数段硬い。BS並です。
ショルダーに逃げるグルーブの数を見る限り、サイドへの排水性は少ないように思えます。
が、実際の排水の様子を見ると、ショルダーのグルーブの先から、
放水が勢いよく太く出ていて、サイドへの排水は意外と頑張っています。
グルーブとブロックの連続性は比較的滑らか。
ですが、国産のように、
エッジのラウンド化、溝壁への細かい加工などは施されていません。
こういうところの開発費はけっこう高くつくので、
こういう部分で開発&生産コストを抑えて商品の安価を確保していると思うのですが。
コストはかかりますが、金型の成型における細工や、生産精度の向上で、
モノマネでもいいので、こういう細かいを改良を少しでも多く施してゆくと―。
接地圧の均一化や耐熱ダレ、耐磨耗性がグンと良くなるので、
国産ハイグリップに匹敵する脅威となるでしょうね。
「NS-2R」MC版か、次期モデルでこういう詰められる所をどんどん詰めていってほしいです。
国産ハイグリップ4本1セット買う予算で、2~3セットも買えてしまって、
なおかつ、もちが良く、剛性もあって、一昔の国産ハイグリップ並みにグリップする。
夢のようなタイヤになる可能性が。
●メインのストレートグルーブ
トレッドの「中央に集中」した3本のメイン・グルーブ。
しっかし、溝が浅いですね~(汗)
スリップサインは、もうすぐそこです(苦笑)
磨耗度チェック用の凹みや、性能には関係ないものの商品性を上げる、
流行のお洒落なロゴ入りや模様入りなどの加工はされていません。
加えて、ここも主要メーカーのように、
リブのエッジのラウンド化や、溝壁に何らかの加工もされていません。
新品で溝が深いときは大きな差がありませんが、
磨耗が進んで溝が浅くなってきた時の排水性や、
接地圧の不均一につながって、耐磨耗や耐熱ダレには不利です。
■■ 最大とも思えるウィークポイント ■■
さて、最後にこのタイヤで特に気になる点について。
それは、「重さ」。
『このタイヤは重い』…というウワサが本当かどうか、計ってみたわけです。
今回履くタイヤ・サイズ「235/40ZR18 」1本を。
タイヤ1本を手で持ち上げた感じは、重いっちゃあ、重いけど。
BSのレグノよりはマシだと思えるレベル。
そして計測器へ。
結果―
重量:
12.9kg=(28 lb)
…こりゃあ、なかなかです。
やはり、へヴィー級です。
あのBS史上最も重いと評判だった?「
RE11」の
同サイズより、
…それよりもですよ、さらに1キロ近く重いわけで。RE11の「255/35R19」と大体同じ重さです。
下手すると、ヨーロッパ系メーカーの同サイズのものより、1.5~2キロは重い(汗)
慣性モーメント、「
mr2(角速度)」で考えると、
回転する物体は、軸となる中心点から離れた位置に質量がある場合、
距離があればあるほどイナーシャに響いてくるわけで。
ホイールとタイヤなら、中心点から離れているのはタイヤ。
なので、そのタイヤが、重い…、なんていうのは。
俊敏さが求められる環境では最悪の答えで。
よって、ホイールの軽量化より、タイヤを軽くしたほうが、
回頭性能、制動性能、加速性能、すべてにおいて圧倒的にプラスになります。
動きやすく、止まりやすく、ジャイロ効果が薄れて、回転する物体は向きを変えやすいからですね。
逆に言えば、タイヤが重いことの利点は「
直進安定性」に寄与するということ。
それにしても他と比較すると「NS-2R」はかなり重い。
…ちょっとだけ時代錯誤かと。
かつて、レースの予選タイヤはかなり軽かったですし。
近年のレコードキラーモデル「
RE-71R」も、他社のスポーツ・ラジアルより、
各サイズ0.5~1.5キロ位は軽く作ってあります。
71Rを履いたら、クルマが軽くなったように、加速が速くなり、
タイトなS字の
切りッ返し区間も速い、
なんていうのも、タイヤが軽くなってイナーシャが減少したからです。
「重さ」、これがこのタイヤの最大の弱点であり、デメリットですね。
※個人的な意見も書いていたら、超弩級の長文になったため、そのヴァージョンはボツに。
これは、個人的な意見をかなりカットし、なるべく見たままの観察だけを載せた、
「簡易版」……のつもりです。
このタイヤに関心がある方、皆さんがそれぞれの印象を持って判断していただければと思います。