
トヨタ車が続きましたので、他社を取り上げることにします。
さて、何を取り上げようかと考えまして、910ブルーバードに翻弄されたもう一台のライバル車をやってみようかと。1番の影響は130コロナだと思いますが、2番を挙げるとすればこちらになるでしょうね。
その関係か、特に前期モデルについては、途中の追加グレードがとても多くなっています。どれくらいかといえば、私も完全には記憶できないくらい(笑)
その辺りを時系列に取り上げて行ってみます。
●1980/4/24(5/10発売)
○フルモデルチェンジ
先代は1976年5月の登場でしたので、4年ぶりのモデルチェンジとなりました。先代はそのスタイルやMCA-JETが好評で、1977年は小型車部門の第2位(126,841台)、1978年は同3位(142,351台)という大成功の記録を残しています。末期となった1979年の販売台数こそ落ち込みましたが、モデルチェンジで十分挽回可能なものと思われていました。(台数は自販連出版の自動車統計データブックから引用)
販売台数だけでなく、月刊自家用車誌の人気投票では、小型車クラスで1位を連続して獲得する人気モデルでもあったのです。
三菱としては、そんな先代の成功を受けて、かなり力の入ったモデルチェンジを行いましたが、新たにフォグランプ一体型ヘッドランプを採用したフロントマスクを除くスタイリングだけは、ほぼ従来型を踏襲していました。
三菱は、これを内容の充実を重視した新時代のモデルチェンジだと銘打っていたのですが・・・
登場当初のカタログを紹介
表・裏表紙と綴じ込みを使って、目玉グレードが掲載されています。
左からGSR、ロイヤル、ターボディーゼル GSLスーパー
GSRは、ツインキャブの代わりにECIを得て、復活
ロイヤルは、従来のスーパーサルーンの上級(=最上級)として設定
ターボディーゼルは、新開発エンジンを搭載して日本初登場
となります。
背景はスイスのマッターホルン。
(小型車の)頂に存在するという意味が込められているのでしょうね。
ここからはグレード一覧の紹介
ロイヤルとGSR
この2グレードのみが、新開発の4輪ストラットによる独立懸架を採用しています。
左は2000で、右は新設定された1800
旧型にも前期の途中まで1850があったのですが、途中で設定廃止
新開発のシリウスエンジンの登場により、1800が増えた形です。
シリウスエンジン=今も海の向こうで生産の続く、名機4G6シリーズですね。
1600のみ従来から継続のサターンエンジンを搭載していました。
2300ディーゼルは、ガソリンエンジンのアストロンシリーズをベースにディーゼル化が行われました。
以上のように、先代に比べてグレードは大幅に充実。上級グレードを新設定したため、ブルーバードとコロナのみに留まらず、マークIIやスカイラインとの競合もあり得る価格帯の広さとなりました。

左が主要装備一覧、右は主要諸元表です。
CMキャラクターには、高倉健氏を起用。氏のイメージを強く反映させたCMは名作ですね。特に前期のCMはクロード・チアリの音が印象的です。
このモデルチェンジ、雑誌の評価はご祝儀を加味しても評価は悪くなく、ユーザー側の反応も決して悪くはありませんでした。登場直後に開始となった月刊自家用車誌の人気投票でも、小型車部門のみに留まらず、スカイラインの常勝状態だった総合部門でも、一時期は1位となったくらいだったのです。
ところが、「スタイリングがやはり代わり映えしない」という評価が定着したことで人気が急落したため、三菱の五月雨式のテコ入れが開始となります。
●1980/9/26(即日発売)
○1600/1800スーパーサルーンを追加
登場後5ヶ月弱での追加です。
先代で新設定となったスーパーサルーンは、2000のみの上級グレードで比較的販売比率の高いグレードでした。低燃費/小排気量を志向しつつも、高級仕様を求めるユーザーが増加しているということで、1600と1800にも準じた装備のスーパーサルーンが追加となります。
特に1600スーパーサルーンは、ブルーバード1600GFにも設定の無かったパワーウィンドーを標準装備し、クラス水準を超えた豪華さでした(ただしパワーステアリングはなし)。
●1980/11/28(即日発売)
○2000GSRターボ/2000GTターボを追加
○1600スーパーカスタムを追加
前回追加から僅か2ヶ月。
当初、ターボはディーゼルのみだったのですが、ガソリンにも設定されることになりました。ディーゼルの先行設定は省資源の時代らしい設定ということで好評だったのですが、市場の要望に応えた形です。
ブルーバードターボの1800に対して、こちらは2000ということで、+10馬力&2kgのトルク増。トヨタと日産の2000ターボは6気筒で、こちらは4気筒ながらも、トルクでは両社を上回る数値でした。
これ以降、ガソリンターボが主力車種となっていきます。
スーパーカスタムは、SLスーパーとGLの間に半ば捻じ込まれたグレード。あまり開きのなかった両グレード間への設定は、装備と価格が吟味される小型車市場の競争の激しさを物語るものでもありました。
●1981/4/3(即日発売)
○2000GSRターボにオートマチックを追加
○2300ディーゼルターボにCXオートマチックを追加
○2000ロイヤルECIを追加
従来、ターボはマニュアルのみだったのですが、オートマチックが追加されます。同時にディーゼルターボは、GSLスーパーよりも上級のCXが新設定。
また、従来はキャブ仕様だったロイヤルが、初期GSRに設定されていたECI仕様となります。
この時点のカタログを抜粋して掲載。
左から、GSRターボ、ロイヤルECI、CX
並んだ趣向は同じですが、1年足らずでこの3台とも仕様が変更されているということに。
ガソリンターボの追加までは、グレードが増える一方だったのですが、ここで一旦整理されています。その結果、1年前と同じグレードの方が少ないという激変ぶり。
軽く紹介していきます。
・ロイヤル → ECI仕様に変更、マニュアルと本革仕様の廃止
・GSR&GT → ターボ付に変更
・GSLスーパー&GSL → 設定廃止
・1600/1800スーパーサルーン → 途中追加
・1800SL → マニュアル仕様廃止
・1600SLスーパー → 設定廃止
・スーパーカスタム → 途中追加
・2300CX → 途中追加
・2300GSLスーパー → 設定廃止
・・・ということで、そのままなのは、2000スーパーサルーン、1800SLスーパー、1600GL・Lの4グレードのみとなりました。

主要装備一覧と主要諸元表です。
AT比率の増加の影響を受けたような、仕様の追加と変更がされています。
先代までは、マニュアルが標準でATも選べますよ的設定だったのですが、ATのみのグレードがいくつか散見されるようになりました。
●1981/5/20(即日発売)
○1600スーパーカスタムの一部改良
○1600スーパーサルーンにパワーステアリングを装着
○2300GSLスーパーにオートマチックを追加
○2300CXに5速マニュアルを追加
さらに、翌月には改良と追加がもう1回(笑)
前年秋に追加された1600の2グレードは、半年で再度仕様変更となりました。1600の強化は、モデル末期に追加されたコロナやカリーナの特別仕様を意識してのもの?
ディーゼルターボは、前月にGSLスーパーのマニュアルからCXのオートマチックに変更されたばかりでしたが、GSLスーパー・CXの2グレード2ミッション体制となります。
●1981/10/20(11/2発売)
○マイナーチェンジ
1981年春の変更はモデルイヤー的変更だったのですが、秋に再びの変更。
三菱的には、82モデルがここで登場したということになるようです。
マイナーチェンジということもあって、比較的大きな変更が入ると共にシリーズを再構成していますので、順を追って紹介してみます。
パネル類の変更は行われず、レンズ類の一新で新鮮さを訴えています。
ブラックテールが売りでしたね。そのテールランプは、従来ギャランとエテルナで差別化されていましたが、共通化。
上級グレードに設定のあったウレタンバンパーは板金バンパーに共通化されるものの、新たにブリック(バンパーガード)が付けられています。
最初はターボシリーズ
構成は、継続となるGSRと従来のGTに替わるGEの2グレードとなります。
GSRもOD付オートマチック、電子メーター、4本スポークステアリング等が新採用されています。
続いてはスーパーサルーンシリーズ
装備の取捨があった程度で一番変更の少なかったシリーズですね。
ロイヤルもここに類されるようですが、従来のECI&4独はスーパーサルーンと共通のキャブ&リヤリジッドに格下げされて、豪華仕様の色合いが強くなりました。
続いては、新設となるSXシリーズ
マイナーチェンジ前のGSLスーパー&SLスーパーの後継となります。
新たにガソリンターボも設定されて、GSRとGEの中間に位置しましたが、こちらはノンターボ同様にリヤリジッドのままでした。
グレード一覧です。
スーパーカスタムはGLサルーンに、CXはスーパーサルーンに名称変更されています。

●1982/10/27(即日発売)
○1800スーパーサルーンターボを追加
○1800GLサルーンAD仕様を追加
ライバル車のブルーバードは、2000のキャブと1800のターボという構成。コロナとカリーナは、2000ツインカムに替えて1800ツインカムターボを積んでくるということで、必要性を感じたのか、ランサーEXに先行投入されていた1800ターボが、スーパーサルーンに設定されることになりました。
その替わりに、2000ターボ&2000SXが設定廃止となります。
GLサルーンAD仕様は、名前からしてコロナのGX-ADを明らかに意識した新グレードで、コロナ同様、バックセンサーと電子メーターが採用されています。こちらはさらに電子チューナーの設定もあり。
●1982/11/16(即日発売)
○一部改良
一足早く追加された新グレードに追随して、一部改良が行われます。83モデルと位置付けられるようですね。
まだフルモデルチェンジは4年に一度、マイナーチェンジは2年に一度という基準が多かった時代、こうしたモデルイヤー的変更は新鮮でした。
この一部改良に伴い、ブロンズガラス・バックセンサーの新採用と60扁平タイヤ・アンチスキッドのオプションの新設定が行われています。
グレード構成は下のとおりです。
82モデルと比較すると、紹介した他にも、1800GLや2300ディーゼルGLが追加されています。

主要装備一覧と主要諸元表です。
●1983/8/23(9/1発売)
○フルモデルチェンジ
結局、810ブルーバードや130コロナ並みに短い3年4ヶ月で、FF化された次世代にフルモデルチェンジされたことになります。(この時の関連話は
こちら。)
この世代、先代のイメージそのままのボディスタイルを踏襲したのが全てで、ブルーバードの対抗馬とはなれずに、ほぼモデルイヤーを通して苦戦を強いられました。さらにライバルと目されたマークII・スカイライン・コロナと順を追ってモデルチェンジされていく中では、商品力の点でも厳しいものがありました。
さらに小型車はFF化が急浮上し、コロナ・ブルーバードがFFを選択したことで、ギャランもFF化が急務となりました。ここでの比較的大きいと思われる投資は、スタリオンで細々と償却する一方で、新たな投資を行うこととなったのです。FF化は社全体でみれば大成功でしたが、この判断は難しいものがあったでしょうね。
その一方で、モデルライフを支えるべく、ライバル車と応戦する最中での数々の追加は、トヨタと日産の小型車大戦争に巻き込まれた影響と言えるかもしれません。
ここでは一般モデルのみを取り上げましたが、他にも特別仕様車の存在を数種類確認していますから、果たして販売の最前線では、これだけの仕様と変更をきちんと理解&説明できていたのかは未だに謎でありますが。