
中古車市況話、第4回です。
既に展開を予測されている方もいるようですが(笑)、満を持して(?)、そろそろこれを取り上げようかと。
マークII系は、2代目まではどちらかというと中古車では不人気(特に2代目はブルーバードUと並ぶ、不人気車の双璧)でしたので、3代目以降、急に人気が上がったクルマとなります。
この特集で取り上げているのは、セリカとシルビアの間ですから、1983年のボーナスシーズン真っ盛りといったところでしょうか。初代クレスタは1980年4月の登場、4代目マークII&2代目チェイサーは1980年10月の登場ですから、3年前後が経過して、中古車としてはそろそろ買い頃となった時期でしょうね。
ちなみに余談ながらも、あえて掲載順にしなかったのは、トヨタ車を続けるのに躊躇したというわけでして。
それでは早速、関東の概況から引用していきます。
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○中古車市場に出回っているのは3代目の40~43系と4代目の60~63系。主流年式は54~55年であるから、主役はわずかの差で3代目。しかし現行の4代目も月を追うごとに幅をきかせつつあり、今秋までには主役の座が入れ替わる方向にある。
○メイングレードは圧倒的な大差で最上級の4ドアHT2000グランデのオートマチック。ボディカラーがホワイトなら飛ぶように売れる。
○おおよその価格と年式推移をみると、56年166万円、55年後期154万円、同前期126万円、54年113万円、53年101万円となっており、旧型の40~43系がかなりこなれており、このことが動きのよさにつながっている。グランデが高人気なのは、フル装備という豪華さ、運転のしやすさによるものだろう。
○タマ数でグランデの次に来るのは1クラス下のLGツーリングであり、グランデと差はあるものの結構よく見かける。価格はこちらの方が15万円ほど安くなる。やはり主力ミッションはATである。
○グランデは、2000の方が2800よりずっと人気高であり、このため新車では20万円も2800の方が高額なのに、中古車では2万円方逆に2000の方が高くなってしまう。2800は同じグランデとはいえ、タマ数がグッと少なくなり、展示場でお目にかかる機会は少ない。
○ターボは、新車発売後1年10ヵ月が経過しようやく目につくようになった。初期モノで185万円近辺の高値をつけている。多少時間がかかるが着実に買い手がつくまずまずの人気車といえるだろう。
○タマ数は、セダンと4HTがほぼ均衡しており、人気は4ドアHTの方がセダンをかなりの差で引き離している。
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3代目は、当初GLやLG等の中下級グレードの販売台数も多かったのですが、モデル後半になるにつれ、最上級のグランデの比率が上がっていきます。通常、モデル後半になると、販売の主力グレードは下がることが多いのですから、6代目コロナの影響もあるとはいえ、比較的珍しい事例でしょうね。
4代目は、最初からグランデが販売の主力でした。一つ下のLGツーリングにエアコンを付けると、グランデとは10万円差ぐらいに縮まりますから、それならグランデにしてしまえとなるのは、このクラスなら当然の帰結かと。もちろん、中古車の人気もそれを反映している訳です。
3代目時点で、新車販売比率は4ドアセダンが7~8割を占めていて、セダンは中年紳士やファミリー層、2ドアは独身貴族やカップル層という形で住み分けが出来ていました。中古車では、新車価格同様、2ドアがやや高め程度でしたから、同じようなユーザー比率だったということなのでしょう。
そんな販売比率から、4代目ではCMやカタログの表紙に4ドアセダンを据えて主力をアピールしていたのですが、この時期辺りから、CM・カタログの表紙共に4ドアHTに入れ替えられることになります。販売比率を反映した変更と言えるのですが、途中での入れ替えは珍しいケースだと思います。それほど、この4ドアHT人気が一気に盛り上がったということでもあるのですが。
続いては、兄弟車となるチェイサーの概況です。
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(チェイサーについて)
○タマ数は新車の月販台数でマークIIが9,000台に対し、チェイサーは2,300台と大差があるからマークIIの方が圧倒的に多い。ただ、チェイサーはスポーティタイプだけに、セダンより4ドアHTの方がタマ数は多くなる。
○メイングレードは現行の60~63系が4ドアHTアバンテ、旧型はSGツーリングといずれも最上級車であることは兄貴分のマークIIと同様である。価格はHTアバンテで、56年165万円、55年後期153万円、同前期SGツーリング116万円となっており、マークIIよりわずかながら安い。
○グレード別によるタマ数は最上級のアバンテ、SGツーリングがメインであるものの、SXL、GS、XLといった他の低グレードもかなりあり、かなりのバラつきがうかがえる。
○ボディカラーはマークIIがホワイトをメインにツートンが人気高であるのに対し、チェイサーはホワイトに加え、レッドの比重が高くなる。やはりスポーティモデルという味付けが効いているものと思われる。
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一つ下はコロナとなるマークIIに対して、チェイサーはスプリンターまで開いてしまうため、チェイサーは歴代含めて、4気筒系の販売比率が高くなっていました。それがタマ数に反映していたようです。
ボディカラーにレッドが多いというのは、初代後期のSGSや2代目のGTやSGツーリングターボのイメージカラーだったということの反映でしょう。結局、これらのスポーティモデルは、イメージリーダーは担っても販売の主力となることはなく、マークIIやクレスタ同様、最上級のアバンテの比率が上昇していくこととなるのですが。
もう一つの兄弟車、クレスタの概況は、以下のとおりとなっています。
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○全国的に安定した人気を保持しており、地域によってはマークIIをしのぐほど。
○メイングレードは最上級のスーパールーセントAT。展示場でこれ以外をさがすのは難しいくらい。ボディカラーはホワイトとシルバー&グレーのツートンが人気高であり、タマ数も両社が多くを占める。
○つい最近までは大手の専業店の最前列を飾っている程度だったが、このところ中堅の専業店、ディーラーでもよく見られるようになった。とくに昨年8月にマイナーチェンジを実施し、初期モデルが代替に入ってからめっきりタマ数が多くなっている。
○価格は55年の初期モノがスーパールーセントで153万円、56年は164万円、57年前期173万円と10万円きざみでかなりの高値だが、それでも動きはよい。人気車だけに値がこなれる度合いが少ない。ほとんどがフル装備であり、アルミホイールをはいたり、カーコンポと豪華版がよく見られる。
○新車は中年紳士の乗るクルマといった風格があるが、中古車になると一転して20代のヤング人気が高まっている状況にある。
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クレスタは新規販売網だったことから、後発のマークII&チェイサーが発売されると、一時的に販売は押されることになります。そのため、中間グレードとなるスーパーデラックスエクストラを追加して販売のテコ入れを図るのですが、そんな状況が反転して、若者を中心とした独自の人気が盛り上がることになります。
クレスタ人気が、マークII・チェイサーに飛び火したという見方が正しいと思いますし、その後、3兄弟の終焉となる100系までは、初代クレスタの方向性を深化させ続けたと言えるでしょう。さらには、この人気は3兄弟のみに留まらず、このクラスの在り方にも大きな影響を与えることとなります。あの独自の人気を誇ったスカイラインですら、クレスタを意識したというのですから、その影響力の凄まじさが窺えようというものです。
以下は、関東編まとめです。
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○マークII系については人気車ゆえにディーラーも専業店もたっぷり揃えている。トヨタ系のマイカーセンターでは3代目の40~41系がほぼ完全に主役であるのに対し、専業店では現行の60~63系がすでにとってかわっている。またターボ、ツインカム24の高年式最新モデルは、専業店だとたまに展示場の最前列を飾っているケースがあるが、マイカーセンターならまずない。人気車ゆえにデモカーあがりや新車を直接購入して客寄せのために展示する”新古車”が多く出回っているため。
○全般的に専業店が55~56年式と高年式が主流になっているのに対し、ディーラーは54~55年と1年式くらい古くなる。したがって価格は、マークIIに関する限り専業店の方が高値感がある。
○最近のユーザー動向としてはヤング化が目立つこと。150万円以上もするグランデやアバンテでも20代のヤングが好んで購入している。ほとんどが2ドアないし4ドアHTに集まり、セダンにはさすがに手を出すケースは少ない。高額でも36回に分ければ4万円そこそこの均等払いで購入できるのだ・・・
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3代目までは、一時的に人気が沸騰したチェイサーSGS等を除くと、購買層からしても専業店があまり手を出さないクルマだったはずなのですが、4代目はその人気を反映して、専業店が積極的に展示に走るクルマになったということなのでしょうね。
続いては関西編です。
これまで同様、関東とはまた違った人気動向を感じつつで、お楽しみくださいませ。
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○関西のマークII人気は沈静化してきた。「昨年夏はスゴかったけど、今年はかなりおとなしい」、「今年の2月、3月あたり、54~55年式で安いのがバカスカ売れたけどねえ」。各展示場の今夏の傾向はこんな調子だ。人気先行型がなりをひそめ、妥当な価格に落ち着いている。
○しかし「見栄を張るユーザーがマークIIを欲しがる傾向が強い」というように、グランデに限っては、まだまだ高めで推移している。この傾向はクレスタに最も極端な形で表れ、チェイサーにも同じことが言える。しかし、下級グレードについては「かつてほどの人気はなく、タダのクルマ」となっている。
○ただし、専業店の展示場に並ぶ割合は、グランデが70%以上を占め、ディーラー系でも半分以上だ。「このクラスのユーザーは、やはりグランデか、せいぜいLGツーリングでしょう」。新車販売からして上級クラス指向が強い。
○マイナーチェンジ後の53~55年と、56年以降の新型では、まだまだ新型は少数派だが、タマ数は十分にある。他地域よりマークIIのシェアが高い大阪のこと、タマ不足の心配はない。52年以前の低年式もなくはないが、グランデといえども別ものと考える。ビックバンパーになった53年以降が大部分である。
○またボディカラーは、53~55年式では白が60%。この年式、茶が随分多いのが特徴だ。人気は圧倒的に白なので、やはり茶はシンドイ。特に若いユーザーが希望するハードトップでは白人気が絶対であり、セダンでやっと「茶でもいいか」と妥協点が生まれる程度だろう。56年以降の新型を含めて、白、紺、シルバー、茶が人気の順になっている。
○53年式グランデ、白の4ドアで96~97万円。100万円を切っている。54年式ではプラス10万円で107~108万円。55年式では120万円を切る程度である。55年10月以降、多くは56年式以降になると一気に高くなる。56年式で159万円と160万円近い。白でアルミホイール付のAT車なら175万円という値がついている場合がある。57年式はめったにないが170万円弱が一応の目安だ。
○もっとも茶などの色目なら3~5万円は安くなっているし、ハードトップは3~5万円高である。AT車はマークIIの場合、60~70%を占める。グランデでは80~90%がAT車だろう。53~55年式で5速との差は5万円。56年以降で10万円弱。
○またLGツーリング、専業店の展示場では、54~55年式あたりでグランデの20万円安になっている。いくら高くても80~90万円台で買える。さらに1800GLは、20万円安を目安にすればよい。ただグランデ、スーパールーセント以外になると、専業店ではほとんど見かけない。売れ筋からはずれてしまうためだ。安いマークIIを探すなら、ディーラー展示場のほうが見つけやすい。茶などの色目も多い。
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3代目のグランデというと、ここで言う茶にあたる、エクストラカッパーが中心で売れていましたし、この色を最初に連想される方も多いと思います。ところが4代目が出回るようになると、白に人気の中心が移ります。ただ、3代目は白が少なかったですね。
ATは、53年の4速化以降、販売比率も右上がりで上昇するのですが、人気はそれ以上にATに寄っていきます。この後もその状況は続くことになるわけで、平成初期には、マークIIのMTとなると、セールス氏が極端に敬遠するような状況に至ることとなります。近年の旧車市場では、また状況も変わったようではありますが。
続いては関西圏のクレスタの解説です。
文面からすると、その人気ぶりは、関西の方が顕著だったようです。
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○一方、クレスタだが、これは高い。結論からいって、内容をはるかに超えた高値が続いている。それでも「白のスーパールーセントなら、展示すれば1週間と残らないバカ人気」という。スーパールーセントとグランデとの価格差は、55~56年式で約10万円。この価格差をものともせず、クレスタが売れるのだからわからない。
○理由はただ「街を走るクレスタが少ないから」である。マークIIと同格にもかかわらず、人気が出ているのがクレスタと考えてよい。(中略)実際、展示場に並ぶクレスタは、極めて少ない。56年式スーパールーセントで174万円、57年式は179万円、ターボはさらに10万円高。
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当時の新車価格が210万円でしたから、マイナーチェンジを挟んだ2年差で35万円しか差がない形です。新車はオプションが付加されるとはいえ、ここから値引きもありますしね。
査定価格を逆算しても、7割近くは付いていたと想像できますから、当時の平均耐用年数からすれば、破格の価格だったといっても過言ではありません。それほどの人気だったということなのです。当時、一番人気だったソアラに次ぐ人気という評価も見られたくらいですね。
特にスーパールーセントは、人気とタマ数のギャップも影響していたのでしょう。
関西編、最後はチェイサーに触れつつで締めています。
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○チェイサーは、マークIIよりはぐっと少ないが、クレスタほどのバカ高さはない。マークII並の価格と考えてよい。グランデに対応するのがアバンテ。55年式で159万円、56年式169万円、57年式176万円というところ。SGツーリングは、20万円安となっている。
○それにつけても、現行60系、1Gエンジンを搭載した3車は割高だ。130~140万円くらいというのは当分ない。
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ここでは、クレスタ人気の理由を「少ないから」としているのですが、同じく少ないチェイサーの人気がそれほどでもないことからすると、クレスタには独自のものが見出されていたとするのが妥当だと思います。クレスタは3兄弟最後発ということからか、山崎努氏が出演されるCMといい、慎重にその世界観を構成された感があって、それが受けていたのかなというのは推測。「中年が憧れるものに若者が憧れることはあるが、逆はない」という意を書いたのは、故徳大寺氏ですが、クレスタは正しくその事例の気がします。
もっとも、チェイサーではなく、3代目のCMのように「私の場合、クレスタでなければならない」という理由を買い手が明確に説明できたかとなると、やや怪しいものがあるように思いますけれども(笑)
ここまで書いて、以下は諸考察です。
この3兄弟、特に最上級のグランデ・アバンテ・スーパールーセントは、中年紳士を意識はしても、若者を意識した作りとは思えませんでした。先代の売れ方からしても、それは当然の方針だと言えます。
ところが、想定外の若者人気が盛り上がるのですから、クルマの流行というのは本当に解りません。もっとも、前回のシルビアとは、走りそこそこでも、特に女性に受けるデザインや豪華装備を備えるという点で共通するものは、あるかもしれませんね。当時、若者がクルマに求めていのは、この辺りだったということなのでしょう。
ただ、やっぱりトヨタは商売上手だと思うのは、前回のシルビアは中古車人気を次世代の新車販売に繋げることができなかったのに、こちらは次世代の新車で、もっと成功させるんですよね。
初代クレスタの人気を分析して、70マークIIをHT主力にして初代クレスタにあったパーソナル感を強調する一方、当のクレスタは、HTの雰囲気を持つセダンに変更することで、若者に寄っていた年齢層を中高年にも広げることに成功させるといった具合です。
その結果、次世代は、老若問わずで売れまくり、社会現象の一つとされるぐらいとなります。
この年のマークIIは、新車でも長年追いつけなかったスカイラインを、ついに逆転するに至るのですが、そんな人気が中古車にも表れていたことを感じていただければ、と思います。
参考までに当時の新車販売台数を調べてみると、3兄弟計で月販約15,000台でした。最近の新車のみを知る人からすると、この3兄弟がこの台数を売っていたというのは信じられない話かもしれませんし、逆に私と同世代だと意外と少ないなと感じる数字かもしれません。この3兄弟、81の最盛期には月販40,000台(!)でしたからね。
最後に余談を一つ。毎度のことながら、あまり考えずにスラスラと文章が浮かぶクルマであるなあと、改めて再認識した次第であります(笑)