

レヴォーグ2.0GT-S試乗インプレッションです。
最終型レガシィツーリングワゴン2.0DIT(BRG、E型)や
愛車4代目レガシィツーリングワゴン2.0GT(BP5、E型)と比較してみたいと思います。
<外観>
もはや言わずもがな。皆さんよくご覧になっているものです。
BP5と比較するとボンネットが縦方向に分厚くなっており
厳つい目つきと大きく開口したヘキサゴングリルがマッシブで力強い印象となっています。
スバルターボの象徴であるボンネットエアインテークも存在感は強いです。
アメリカナイズされたBRGから比べれば欧州的なテイスト、もっと言えばジャーマン風味になったように見えます。
個人的にはよりプレミアムな存在になるためボンネットエアインテークから卒業して欲しい思いがあります。しかしながらスバルのイメージ戦略やユーザーの抱くイメージそしてH4ターボの補機レイアウト上それは中々難しいでしょう。
リアビューはユーロ的な流麗でスマートなものです。
<内装>
GT-Sではブルーステッチ入りの合皮貼りが奢られています。
ステアリングは合皮製で質感はBRGと同等、
BP5のMOMO本革には見た目、握り心地ともに劣ります。
全体的にプラスチッキーでBP5に比較するとBRGやレヴォーグは安っぽい印象になりました。流行りのカーボン調シートも貼ってありますが質感は改善の余地あり。
そんな中でもスバルらしく真面目にシートはしっかり作ってありホールド性もちゃんとしています。これなら長距離運転も大丈夫そう。
<エンジン、変速機>
2012年に誕生したスバル新開発の水平対向4気筒FA20DIT型。
86.0mm×86.0mmのボアストローク、スクエア型エンジンで
従前のEJ20型が92.0mm×75.0mmのショートストローク型だったので
比較すれば素性から予想される通り低速トルクに優れ、高回転の伸びでは劣ります。
エンジン音は直噴化されたことで、元々の水平対向らしい回転音に加えて
EJ20ではなかったザラついたレーシーな音が加わりました。低回転時の音は静かになっています。
ターボラグはFA20DITと言えど存在し、
FA20DIT+リニアトロニックの出だしのフィーリングは
EJ20X+5ATのBP5レガシィと同等程度のものです。
FA20DITについては
BRGに乗ったときは衝撃を受けましたが
しばらく経って冷静になって乗ったレヴォーグでは落ち着いて味わうことができました(笑)
パワーとトルクは上増しされていますが車重の増加で相殺したものと考えています。
低速時の静粛性はEJ20Xより明らかに向上しており、篭った低い音が少しだけ室内に侵入してきます。
エンジンの素性自体が改善されたこと、遮音材をしっかりと奢っていることが伺えます。
そのため通常域での走りは質感が向上し高級感が増しています。
試乗の際、妻も同行していたのですがBP5と比較して「静かになった」「エンジン音が小さく遠くから聞こえてくるように感じる」と言っておりました。
EJ20Xは2000回転付近でボロロンというボクサー特有の音が室内に侵入してきます。FA20DITではこの辺りかなり小音量でマイルドになっています。
CVTはATと比べると変速ショックがないのが大きな違いでギアチェンジの息継ぎがない分滑らかに加速します。
ただしCVTはどこまで行ってもCVTであり、”運転する楽しさ”はMTやATに劣っていると思います。
S#モードで疑似変速モードを設けたのはスバルもその辺を分かっての絞り出すような苦心策かと思います。
(S#モードでは回転数を上まで引っ張れますので高回転領域の音も楽しむことが出来ます。)
願わくばDCTの方向に進んで欲しかったですが・・・。
ドライビングプレジャーを考えるとDCTは理想の変速機です。
スバル自慢のハイトルクエンジンに対応させるのにDCTではコストオーバーで
車両価格が上がりすぎるため採用できなかったのではないかと思います。
<ハンドリング、サスペンション、駆動システム>
サスペンションの仕上がりは後期型のBRG-EやBP5-Eと比較すると少し粗があるように思います。
ビルシュタインダンパーの動き方はわざとかな?とは思うのですが少し角のある動き方をしているように感じました。
初めての方には「おっ、これがスバルのビル足か!」と思っていただけると思います。
スバル車の常でアプライドAとしてはこんなものでしょう。個人的にはもっと固い動きでも驚きませんでした。(BP/BLのSpec.BのアプライドAの足はこんなものでは済まなかったと思います。)
ハンドリングはスバル車らしくしっかりしておりBRGと似たフィーリングになっています。
しっかりとした接地感、路面に吸い付くようなコーナリング、確かな路面インフォメーションの伝達、VTD-AWDによる自然で心地よいターンインと後ろから押される感覚の加速は従来のレガシィツーリングワゴンシリーズと遜色ない仕上がりになっております。
AWDシステムはやはり後輪の駆動力が大きいVTD-AWDの方が気持ち良いコーナリングが出来ます。
特にワインディングのコーナー脱出加速時が快感です。この辺りはFFベースのオンデマンド4WDや前輪駆動力の方が大きいアクティブスプリット4WDでは得られない感覚です。
BRGとは同じですがBP5と比較すればタイヤ幅が215から225と
よりキャパシティの大きな設定になっているので重くなった車重をしっかり受け止められるものになっていると思います。
<装備>
BP5と比較して最も違うのはアイサイトVer.3が相当に身近になったことでしょう。
TCS、ESC、追従型クルーズコントロール、緊急時ブレーキアシスト、レーンキープなど先進の装備が選びやすくなっています。
BRGから比較してもアイサイトがカラーカメラ化されバージョンが進化しています。
車両自体の走行性能や剛性といった素性を高めることが安全に繋がるとしてきたスバルの開発の歴史にこれらの先進的な安全装備が加わることで”鬼に金棒”の状態を作り出しています。
2.0GT-Sアイサイトの車両本体価格は356.4万円で決して安くはありませんが、その持っている実力は値段以上の物があると思います。
<総評>
BP型の軽い車重、EJ20の伸びのある回転は失ったものの
時代の要請に合せた燃費性能、排ガス性能をクリアしつつ2L直噴ターボをこれら性能を求めるのには不利な水平対向エンジンで実現した。
内装は時代の波により若干チープになったが各部で努力しつつ低速時の静粛性、CVTによる滑らかな加速で質感を向上した。
一方ドライバーズカーとしてはMT(DCT)のダイレクト感には当然追いついていない。
CVTはハードユースでは油温が上昇しエンジン回転数を制限してしまうという情報もあり。(某モーター誌)CVTは更なる改良が進められ、ハードユーザーの使用に耐えうるようになっていくと思われる。
スバルによるレヴォーグ2.0GT-Sの筑波サーキットのタイムは9秒台で実力はまだまだこんなものではないと思われ今後の熟成が期待される。
<ライバル>
国内だと
4WDではマツダ CX-5ディーゼルターボ4WD(328.3万円)
FRではトヨタ マークX 350S(370.3万円)
日産 スカイライン200GT-t(383.4万円)
FFではマツダ アテンザワゴンディーゼルターボFF(358.2万円)
が自分の選ぶ同価格帯のライバルです。
どれも乗ったことはないのでイメージで恐縮ですが・・・。
国外だと
アウディ S3スポーツバック、A4アバント2.0TFSIクワトロS-Line。
200万以上値段差がありますがレヴォーグはこの辺りを標的に開発されたそうです。車作りの方向性は見事に一致していて納得。車の完成度は当然アウディが高い。
レヴォーグ1.6GTならFFですがゴルフヴァリアント。こちらは値段も肉薄しており分が悪いかも・・・。これは私見(かなり無理難題)ですがレヴォーグは2Lモデルはしょうがないにせよ1.6モデルはあと100kg軽く作るべきでした。最小回転半径もあと0.1mで良いから縮められたら取り回しが向上して商品力が増しさらに1.6GT購入層に強く訴求していたと思います。既にバカ売れしてるから余計なお世話でしょうが(笑)
<主要諸元>
ボディタイプ ワゴン
ドア数 5ドア
乗員定員 5名
型式 DBA-VMG
全長×全幅×全高 4690×1780×1490mm
ホイールベース 2650mm
トレッド前/後 1530/1540mm
室内長×室内幅×室内高 2005×1490×1205mm
車両重量 1560kg
エンジン型式 FA20DIT
最高出力 300ps(221kW)/5600rpm
最大トルク 40.8kg・m(400N・m)/2000~4800rpm
種類 水平対向4気筒DOHC16バルブターボ
総排気量 1998cc
内径×行程 86.0mm×86.0mm
圧縮比 10.6
過給機 ターボ
燃料供給装置 筒内直接燃料噴射装置
燃料タンク容量 60リットル
使用燃料 無鉛プレミアムガソリン
JC08モード燃費 13.2km/リットル
足回り系
ステアリング形式 パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前) ストラット式独立懸架
サスペンション形式(後) ダブルウィッシュボーン式独立懸架
ブレーキ形式(前) ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後) ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前) 225/45R18
タイヤサイズ(後) 225/45R18
最小回転半径 5.5m
駆動方式 フルタイム4WD
トランスミッション CVT(無段変速車)
変速比 CVT 3.105~0.482
変速比 第1速 3.105
第2速 1.983
第3速 1.454
第4速 1.057
第5速 0.779
第6速 0.542
後退 2.077
最終減速比 4.111
装備・オプション
エクステリア
フロントフォグランプ 標準
リアフォグランプ 標準
リア/ルーフスポイラ― 標準
リアワイパー 標準
セーフティ
運転席エアバッグ 標準
助手席エアバッグ 標準
サイドエアバッグ 標準
ABS(アンチロックブレーキ) 標準
前席シートベルトプリテンショナー 標準
前席シートベルトフォースリミッター 標準
後席3点式シートベルト 標準
サイドインパクトバー 標準
ブレーキアシスト 標準
衝突安全ボディー 採用
EBD(電子制動力配分装置) 標準
盗難防止システム 標準
その他安全装備 VDC(ビークルダイナミクスコントロール)
エアコン フルオート
パワーウィンドウ 標準
集中ドアロック 標準
ステアリングテレスコピック機構 標準
ステアリングチルト機構 標準
クルーズコントロール 標準
本革巻きステアリング 標準
運転席パワーシート 標準
アルミホイール 18インチ標準
分割可倒式リアシート 分割式
UVカットガラス 標準
プライバシーガラス 標準