
本日はなかなか密度の高い一日でした。
万全の体調とは言えないスタートでしたが、午前中の事務作業を無事に片付け、午後は軽めの作業をいくつか。
そして16時からCX-8の調整作業の続きへ。
今回の主題はバックチャンバーの容積見直しと、アウターバッフルのミッドバスの張り出し量。
スピーカーを内側へ寄せるか、外へ出すのか。
単純な見た目の問題ではなく、低周波帯域で発生する定常波への対策が核心です。
定常波は条件が揃うと共振を生み、場合によっては笛鳴りのような現象を引き起こします。
この影響を避きるため、スピーカーの奥行き位置を慎重に決定しました。
ここまでで本日の加工系作業は一区切り。
バックチャンバーの容積は確定したため、現在塗布中の樹脂塗料が完全硬化後、内部の詰め物を施工すればバックチャンバーは完成となります。
ミッドバス側には「ベースアブソーバー」を使用予定。
ただしこの材料、事実上の流通終了状態で、手持ち在庫のみ。
当店の在庫はおおよそ8台分。
今回のCX-8施工を含めると残り7台分。
さらにデモカー用に2台分確保するため、実質的には約5台分となります。
使用量は車種により変動しますが、目安としては1台あたり3万〜5万円程度。
必要な方はご相談ください。
今回のCX-8ではバックチャンバーを短時間で方向性確定できたことが大きな収穫でした。
バックチャンバーが適切に決まると、ミッドのゲイン設定にも余裕が生まれます。
改めて感じますが、ミッド帯域はここが曖昧だと全体が決まりません。
容積は体感的にもかなり小さめ。
160ccも無い領域で、左右完全均等で合わせ込んでいます。
本日の耳コンディションは完璧ではないため、ここで一度試聴ログを取得し、明日再確認予定。
問題なければ最終吸音施工へ進みます。
サブウーハー側にも同素材を投入する可能性があり、その場合は材料を丸々2台分使用する見込みです。
さて、ここから試聴チェック。
まずはベートーヴェン「英雄」。
第一印象は非常に良好。
音が開く瞬間の反応が美しく、いわゆる「花火が開く感覚」が綺麗に出ています。
僅かに右ツイーターの主張を感じたため微調整。
すぐにバランス修正完了。
今回も「123調整」を使用。
この操作は音の骨格修正に非常に有効です。
再試聴。
狙い通り、馴染みのあるベートーヴェンの質感へ。
一部戻し操作を加えつつ最適点へ収束。
ここまでの評価。
直感的な音の良さ 3.3
低中高バランス 3.3
音像定位 3.3
続いてオスカー・ピーターソン。
ピアノの実在感が非常に優秀。
倍音の伸び、輪郭、質感ともに理想的。
評価。
直感的な音の良さ 3.3
低中高バランス 3.3
音像定位 3.3
次はロック系チェック。
立ち上がり、アタック感ともに上々。
この車でこのキレが出るのは少々予想外でした。
評価。
直感的な音の良さ 3.2
低中高バランス 3.2
音像定位 3.3
最後に本田美奈子さん「影法師」。
この楽曲は透明感が命。
クリアさが不足しても過剰でも破綻します。
今回の再生はそのバランス領域にかなり近い印象。
音像定位がしっかりしていることで、楽曲の表現力が素直に浮かび上がります。
試聴チェックの続き。
本田美奈子さんの楽曲を、改めて冒頭から確認します。
この方の歌は、とにかく透明感が生命線。
少しでも濁りが乗ると世界観が崩れてしまうため、再生側にも相当な精度が求められます。
今回のチェック曲はミュージカル「十二夜」よりララバイ。
私の中では「影法師」という印象が強く残っている一曲です。
静かに立ち上がる導入部。
息遣いの粒立ち、空気の揺れ、そのどれもが試金石になります。
ここまでの印象。
やはりクリア。
そして何より、驚くべき音像定位。
このCX-8、少々異質なレベルに到達しています。
特に印象的なのは低域の空間表現。
空気感が左右へ引っ張られず、場の気配として自然に漂っている。
定位が「点」で崩れず、「空間」として成立しているのが非常に大きいところです。
率直に言えば、かなり良い状態。
少し自慢も含めつつですが、これは調整の成果と言って差し支えないでしょう。
ただし細部を詰めます。
帯域バランスにわずかな違和感。
右側のエネルギー感が一部で薄い。
慎重に探ると、問題の中心はおそらく1kHz〜2kHz付近。
この領域はミッドの質感や声の厚みに直結するため、雑には触れません。
確認と修正を繰り返します。
試行錯誤。
ほんの少しの変化でも音の線の太さやスピード感が変わってしまう。
この調整は毎回、神経を使います。
一度上げたポイントを左右で連動させながら微修正。
過不足を丁寧に整理。
再試聴。
左右の空気感が明確に整ってきました。
この「空気感の均衡」を取る工程が最も難しい。
測定では見えにくく、最終的には聴感がすべてになります。
さらに確認。
2kHzを僅かに抑えた方が自然。
1kHzを触りすぎると音の線が遅くなる。
ここはスピード感と厚みのせめぎ合い。
最終確認として、あえて調整を止めてリラックス試聴。
結果。
これまでで最良のセパレーション。
音場の安定度も非常に高い。
頭を動かしても定位が揺れない。
いつも私が試聴中に首を動かしているのは、この安定度を確認するためです。
このレベルで安定していれば、安心して良いと言えます。
正直な感想。
かなり良い。
途中で試聴を止めたくなるほど、音楽としての説得力が強い。
そして何より…
本田美奈子さんの歌そのものが素晴らしい。
音の評価を越えて、純粋に引き込まれます。
最終評価。
直感的な音の良さ 3.4
低中高バランス 3.3〜3.4
音像定位 3.4
今回の感動は、システムよりも楽曲側に軍配。
やはり名演は強いですね。
試聴チェックの続き。
次はカジノクラット&キューバパーカッションズ「Air」。
G線上のアリアのジャズアレンジです。
この楽曲の要はウッドベース。
全体の空気を支配しているのは低域の膨らみであり、その中でピアノが呼吸している構造。
ここが正しく表現できないと、一瞬で違和感が出ます。
ベースは膨らみすぎてもダメ。
痩せてもダメ。
確認は非常に短時間。
正直、この手のチェックは数秒で方向性が見えます。
評価。
直感的な音の良さ 3.3
低中高バランス 3.3
音像定位 3.3
感覚的には3.4寄りですが、ここはあえて抑制。
甘くしすぎると基準が曖昧になるためです。
続いて「Walk」。
イントロの瞬間から空気が変わるタイプの楽曲。
個人的にもかなり好きな一曲です。
立ち上がり。
音像の密度感が非常に良好。
ボーカルの実在感も自然。
低域が入り始めると、サブウーファーの制御力がはっきり現れます。
この車のサブウーファーは単なる低音補強ではなく、空間制御として機能している印象。
演奏が展開するにつれ、音場の安定度と分離感が一気に高まる。
ここは思わず聴き込んでしまう領域。
率直な感想。
かなり良い。
昨日試聴した別システムよりも、明確に説得力がある。
これはなかなか珍しい感覚です。
評価。
直感的な音の良さ 3.4
低中高バランス 3.4
音像定位 3.4
ここまで揃うと、さすがに気持ちが高ぶります。
最後は青山テルマさん「あなたに会えてよかった」。
この楽曲は感情表現のニュアンス確認に最適。
柔らかさや優しさというより、誠実さ。
音の芯に素直さが乗るかどうかが重要になります。
再生開始。
冒頭の距離感は非常に良好。
アコースティックギターとボーカルの関係性も自然。
楽器が重なり始める中盤まで確認。
十分に音楽として成立しています。
評価。
直感的な音の良さ 3.4
低中高バランス 3.3
音像定位 3.4
全体として非常に安定。
本日はここまで。
明日、朝の耳コンディションで最終確認を行い、問題なければドア内張り作業へ。
引き渡し準備に入ります。
本日の進行状況は想定以上。
限られた時間の中でここまで仕上がったのはかなり大きい。
このCX-8、完全に別物へ変化しました。
コンペティションの場でも、相当なインパクトを残すはずです。
個人的にも、この車は一つの基準点。
ここへ到達する車はそう簡単には出てこないでしょう。
当初抱えていた課題は、ほぼ解消できた感触。
あとは最終段階でどこまで追い込めるか。
最後に写真を撮影して本日終了。
お疲れさまでした。