
コスモのオートマチックミッションには画像の矢印のバキュームダイヤフラムという部品が付いています、今回はこのバキュームダイヤフラムについて書いてみます。
オートマチックミッション(以下ATと書きます)はDレンジで発進して車速が上がれば自動でシフトアップするというものですが変速のタイミングはスロットル開度と車速で決まります。
例えばDレンジで発進してアクセルをあまり踏まずに加速する時と、同じくDレンジで発進してアクセルを大きく踏み込んで加速した時を比べると、アクセルを大きく踏み込んで加速しているほうがシフトアップするタイミングが遅いですよね、このようにアクセル開度(スロットル開度)は変速において重要な要素となります。

これは車速とスロットル開度の関係です、スロットル開度が大きくなると変速する車速が高くなる事が分かりますね。
減速すると、やはり自動でシフトダウンするわけですがシフトダウンはシフトアップ時より低い速度でシフトダウンするようになっています、これはシフトアップ時とシフトダウン時で変速時の車速が同じだと、その車速近辺で変速が頻繁に行なわれてしまうのを防ぐためです。
このATの特性を踏まえて本題に入ります、ちょっと複雑な内容になりますが・・^^;

バキュームダイヤフラムの断面図です、バキュームダイヤフラムはインテークマニホールドと繋がっていてインテークマニホールド内の圧力が作用するようになっています、そして本体の中のスプリングの力がロッドを介してバキュームスロットルバルブを押しています。
バキュームスロットルバルブにはライン圧という油圧が送られています、ライン圧というのはAT内のオイルポンプで作り出され、ATの作動の基本になる油圧です、ライン圧はAT内部の様々な機構に送られています。
インテークマニホールドの圧力が変化するとバキュームダイヤフラムのロッドがバキュームスロットルバルブを押す力も変化します、するとバキュームスロットルバルブが動いてバキュームスロットルバルブに入るライン圧の油路を開いたり閉じたりする事でバキュームスロットルバルブ内に流入したライン圧は圧力が調整されてスロットル圧としてバキュームスロットルバルブから出力されます。
出来るだけ簡潔に書きたいので細かい作動に関しては触れませんがアクセル開度が少なくてインテークマニホールド内の負圧が強い時はスロットル圧は弱くなり、アクセル開度が大きくてインテークマニホールド内の負圧が弱くなるとスロットル圧は高くなります、つまり、アクセル開度大→スロットル圧大、アクセル開度小→スロットル圧小、という具合にスロットル圧が調整されます。
では次に変速の仕組みについて・・下の図は変速のためのシフトバルブについて作動原理を簡単に表したものです、シフトバルブの動く方向を右、左と書いていますが実際は見る方向によって違いますよね、ただ今回は説明の都合上このような表現をしています。

Dレンジで発進して1→2→3速と、自動で変速していく行程を見てみます、これは1速時の状態です。
画像の中にシフトバルブという2つのバルブがあります、これは1→2速の変速用(図中の下のバルブ)と2→3速の変速用(図中の上のバルブ)で、バルブが移動して油路が開かれるとその油路に油圧が作用して変速する仕組みです。
赤色はライン圧、緑色はスロットル圧、青色はガバナ圧といって、ミッションの出力軸に付けられたガバナバルブという部品に送られたライン圧がガバナバルブからガバナ圧として出力されシフトバルブに作用します、ガバナ圧は車速と共に変化し、車速が上がるとガバナ圧も上昇します。
橙色は各シフトバルブを右方向に押し付けるスプリング力です。
1速時はこのように各シフトバルブは右方向に押し付けられていて1→2速の変速油路と2→3速の変速油路は閉じられています。

そして車速が上がってくると1→2速シフトバルブの右側に掛かっているガバナ圧が上昇してきます、一方でシフトバルブの左側にはライン圧とスプリング力がガバナ圧に対抗しています、更に車速が上がってガバナ圧が上昇するとシフトバルブは徐々に左側に押され、やがてシフトバルブ左側に作用していたライン圧の油路を塞ぎます、するとガバナ圧に対抗するのはスプリング力だけとなりシフトバルブは一気に左側に押されます、するとシフトバルブの移動で2速ギヤへの油路が開かれ、ライン圧が2速ギヤ変速機構に作用する事で2速にシフトアップします。
この時アクセル開度が大きかったら・・アクセル開度が大きいと先述のようにバキュームダイヤフラムによりスロットル圧が高くなります。
スロットル圧はライン圧を調整するプレッシャーレギュレーターに作用しています、高いスロットル圧はプレッシャーレギュレーターのライン圧の減圧作用を制限します、なのでスロットル圧が高くなるとライン圧も高くなるようになっています、したがってアクセル開度が大きい時はスロットル圧が高くなるのでライン圧も高くなり、ガバナ圧に対抗する力が大きくなるため、アクセルの開度が少ない時よりも高い車速になってガバナ圧が上がらないとシフトアップしないので結果として変速タイミングが遅くなるわけですね。

そして更に車速が上昇すると、それに伴ってガバナ圧も上昇し2→3速シフトバルブの右側に掛かるガバナ圧が上昇してきます、シフトバルブ左側にはライン圧、スロットル圧、シフトバルブのスプリング力が、ガバナ圧に対抗しています。
車速が上がってガバナ圧が上昇してくるとシフトバルブは徐々に左側に押され、やがてシフトバルブ左側に作用しているライン圧の油路を閉じるとガバナ圧の方が強くなってシフトバルブは一気に左に押されます、1→2速シフトバルブの変速の時と同じ理屈ですね。
そうするとシフトバルブの移動で3速ギヤへの油路が開かれてライン圧が3速ギヤ変速機構に作用する事で3速にシフトアップします。
この時にアクセル開度が大きいとライン圧、スロットル圧共に高いので車速が上がってガバナ圧が相当高くならないとシフトアップしないので、やはり変速タイミングが遅くなるわけですね。
1→2速、2→3速の各シフトバルブに作用するライン圧は実際は図のようなシフトバルブの左側面に作用するわけではなくシフトバルブのリング状の部分に作用しますがライン圧の作用する方向を説明する都合上で図では分かり易いようにシフトバルブの左側面に作用するように書かれています、なお2→3速シフトバルブにはスロットル圧の調整機構がありますが、なるべく簡潔に書きたいので今回は細かい事には触れません。
減速した時のシフトダウンに関してですがシフトダウンの場合は各シフトバルブは右に動かなければなりません。
各シフトバルブはシフトアップした際にライン圧がシフトバルブ左側に作用しなくなっているのでシフトダウン時はシフトバルブ左側の圧力が弱いため、弱いガバナ圧(つまり低い速度)でなければシフトバルブは右に動きませんからシフトアップ時の車速より低い車速にならないとシフトダウンしません、例えば2→3速に変速した速度より3→2速にシフトダウンする速度のほうが低いという事ですね、これによってシフトアップ時とシフトダウン時の変速点に差が出来るので先述のように変速点の近辺で変速が頻繁に行なわれるのを防止しているわけですね。
機械式ATはスロットル開度を検出するためにスロットルと連動したキックダウンケーブルが付いてるタイプとコスモのATのようにアクセルの踏み具合でインテークマニホールドの負圧が変化する事を利用したバキューム制御がありますが、バキューム制御はキックダウンケーブルがないのでアクセルが重くならないメリットがありますね。
なるべく簡潔に書こうと思ったんですがATとなると構造が複雑な事と私の文才の乏しさも手伝ってなかなか上手く書けないですね・・^^;
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2016/04/24 03:41:29