
コスモAPのAPとはアンチポリューション、つまり低公害
を意味するサブネームなのですが、この事からも分かる
ように当時は排ガス規制の真っ最中で国産車にとって
暗黒の時代と言われていました。
当時、世界一厳しいと言われた日本の排ガス規制に対応するため各自動車メーカーは大変
な苦労を強いられた事は良く知られています。
当時の技術水準では各メーカーは排ガス規制に適合させるだけで精一杯でエンジンのフィ
ーリングの悪化や出力低下は否めない状況でした。
その中で厳しい排ガス規制の影響を殆ど受けずに当時としては圧倒的なパフォーマンスを
誇ったのがロータリーエンジンでした。
なぜロータリーエンジンは排ガス規制の影響を殆ど受けなかったのか?
自動車の排気ガスは大半が無害な成分です。しかし一部有害な成分が含まれていてガソリ
ンエンジンの場合、CO(一酸化炭素)HC(炭化水素)NOx(窒素酸化物)という3つの有
害成分が含まれています。
COは混合気が燃焼する際に酸素が不足していると発生します。燃焼室に吸入された混合
気にはどうしても濃い部分と薄い部分があるので酸素不足で燃焼した箇所でCOが発生し
ます。これはレシプロエンジンもロータリーエンジンも同じです。
HCは簡単に言えば混合気の燃え残りです。点火によって燃え広がった火炎が温度の低い
燃焼室壁面に形成される消炎層によって火炎が消えてしまうため混合気の燃え残りがHC
となって排出されます。レシプロエンジンと比較するとロータリーエンジンは燃焼室が
細長く回転遅れ側の燃焼室部分の混合気が完全燃焼しない事と燃焼室の表面積が広く消炎
層によって燃え残りが多くなるためHCの排出量は多くなる特性があります。
NOxは混合気中の窒素が高温で酸素と結合して生成されるもので燃焼温度が高い時に多
く発生するので混合気が完全燃焼する理論空燃比付近が最も排出量が多くなります。
ロータリーエンジンは前述のように燃焼室の形状が細長くて表面積が広く燃焼室が移動し
ながら燃焼が行われるため燃焼時の熱がこもらず熱拡散が速やかで燃焼温度が低いため
レシプロエンジンに比べてNOxの排出量が少ないという特性があります。
COとHCを低減するには理論空燃比付近が最も排出量が減りますがNOxの排出量は最大に
なります。ここが排ガス対策の難しいところです。
COとHCは酸化反応で浄化出来ますがNOxは酸化物なので還元作用をしなければ浄化出来
ないので現在のような三元触媒が実用化されていなかった当時、レシプロエンジンは酸化
触媒でCOとHCを浄化しNOx対策にはEGR(エキゾースト・ガス・リサーキュレーション)
という装置を取り付けて対応していました。
このEGRは不活性ガスである排ガスの一部を吸気系に戻して燃焼させるものですが要はわ
ざと燃焼状態を悪くして燃焼温度を下げてNOxを低減させるわけですから排気抵抗の大
きい触媒との組み合わせもあり出力低下は免れない状況でした。
ではロータリーエンジンの排ガス対策は?
ロータリーエンジンはHCの排出量が多い特性を利用してサーマルリアクターというチャ
ンバーの中で排ガスを酸化反応(燃焼)させる事によりCOとHCを低減しNOxは最初から
排出量が少ないためEGRも不要で51年排ガス規制をクリアする事が出来たのです。
触媒もEGRも不要だったロータリーエンジンはレシプロエンジンのような大幅な出力低下
がなく排ガス規制にあえいでいた当時の国産車の中でトップクラスの性能を誇りました。
コスモAPは当時大変売れましたが、それは排ガス規制車を感じさせない動力性能も販売
に大きく貢献したようです(^^)
Posted at 2007/06/23 23:36:53 | |
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