
最近、北海道も暑い日が多くなって来ました、本州の気温ほどではないですが初夏どころか真夏のような気温になる日もありますね。
今回は暑い時期という事でエンジンの冷却系の話でも・・。
エンジンは熱エネルギーを動力に変換する機械ですが、実は熱エネルギーを有効に動力に変換出来ている割合は2割少々です、つまり残りの約8割のエネルギーは単に捨てているわけです、その殆どが排気と冷却による損失です、つまり熱を捨てているんですね、なので本当は冷却しなくても済むのならその方がいいのです、もちろん実際には冷却しないと焼き付いてしまうので熱エネルギーの大部分を無駄にせざるを得ませんがエンジンとはそういうものなのです^_^;
随分昔ですが冷却の不要なセラミックのエンジンというものも研究されていました、でも実用化にはなりませんでしたね。
さて前置きが長くなりましたが、冷却系・・水冷式であればエンジンを冷やして高温になった冷却水をラジエターで冷やして再びエンジンを冷却する・・特に難しいシステムではありませんがラジエターやサーモスタット、ウォーターポンプ等、その冷却システムを構成する様々な部品の中で今回はファンドライブの話でも・・。
画像は足車のマークⅡのファンドライブです、ファンクラッチ、ファンカップリング等、他にも呼び方はありますが今回はファンドライブの呼称で書いてみます。
最近の車は電動ファンなのでファンドライブを目にする機会も少なくなってきましたね、このファンドライブとは何をするものなのか・・簡単に言えば冷却ファンの回転数を調節するものです、エンジンの動力で回す冷却ファンは回転数が高くなるほど空気抵抗が増えるので細かい事を言えば僅かではありますが出力をロスしますしファンが回転する際のノイズも出ます。
ファンドライブはラジエターを通過した空気の温度を感知してファンの回転数を調節し、必要以上にファンを回さないようにする装置です。
作動原理を簡単に言いますと・・例えば少し重たい鍋があるとします、その鍋の中にたっぷりと水飴が入っていると仮定します。
その水飴を割り箸で回転させるように掻き回します、割り箸は鍋には触れず水飴だけを掻き回します、すると割り箸の回転が水飴を介して鍋を回転させます。
次に鍋の中の水飴の量を減らして同じ事をすると鍋の重さがあるので割り箸の回転を伝える水飴が減ったぶん、割り箸は空回りをして鍋の回転は少なくなります(実際にやってみたわけではありません、あくまで例えです^_^;)
これがファンドライブの作動原理です、鍋の重さは冷却ファンの空気抵抗、鍋はファンドライブ本体、水飴はファンドライブ内に封入されているシリコンオイル、割り箸の回転はエンジンからの動力となります。
これらを踏まえて言うと・・ファンドライブ内には作動室と貯蔵室というものがあり、シリコンオイルはファンドライブの回転の遠心力で貯蔵室に蓄えられていて、貯蔵室から作動室へのオイルの流入孔のフタが開くとシリコンオイルが作動室に入り、エンジンからの回転がシリコンオイルでファンドライブ本体に伝わりファンドライブが回転する事でファンドライブに装着されている冷却ファンも回転します、シリコンオイルは遠心力で貯蔵室に戻り、流入孔のフタが開いていれば再度作動室に入ってまた遠心力で貯蔵室に戻るという流れになります。
流入孔のフタが閉じればシリコンオイルは遠心力で作動室から貯蔵室に送られて作動室には入って来ないので作動室内のシリコンオイルの量が少なくなってファンがスリップします。
このように作動室内のシリコンオイルの量を調節する事でファンドライブ本体の回転数を調節しています。

画像はコスモのファンドライブ・・矢印の部分にバイメタルという金属板が付いています、このバイメタルとは熱膨張率の異なる金属を貼り合せたもので温度に応じて変形します。

ラジエターを通過した空気の温度によってバイメタルが変形し、それによって画像中央の小さなシャフトを軸方向に動かします、するとこのシャフトが貯蔵室の流入孔のフタを開閉させて作動室内のシリコンオイルの量を増減させる事でファンの回転数を調節する仕組みです。
ラジエターを通過した空気の温度が高い時は水温も高いわけですから貯蔵室から作動室への流入孔を開いて作動室内のシリコンオイルの量を多くしてファンの回転数のスリップ率を減らし、逆に水温が低い時はラジエターを通過した空気の温度も低いので貯蔵室の流入孔を塞ぐ事で作動室内のシリコンオイルの量を減らしてファンのスリップを多くして必要以上にファンが回転しないようにしています。
シリコンオイルが漏れるとファンのスリップが多くなるのでオーバーヒートの原因になりますが滲んでいる程度なら問題はありません、あとは温度が上がると内部のベアリングのクリアランスが広くなって若干のガタが出る事もありますがファン外周で5ミリ程度のガタであれば大丈夫です。
エンジンが冷えている時にファンを指で回してみて軽く2~3回転も回るようであればスリップしているので要交換です、抵抗が感じられれば大丈夫、ベアリングのゴリゴリ感やファンが指で動かなければベアリング不良でこれも要交換・・良否の判断の目安としてはこんな感でしょうか。
一見すると地味な部品ですが、なかなか機械的に高度な制御をしているんですね^_^;
Posted at 2013/06/18 00:14:35 | |
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