こちらも半月前のことだが、昨年逝去されたヌーベルバーグの巨匠ジャン=リュック・ゴダールの名作『軽蔑』4Kデジタルリマスター版を観てきた。
頑なに自身のスタイルを貫き、最後も自ら安楽死を選択するとはある意味巨匠らしいともいえるが、齢90を越していたとはいえ、まだまだ巨匠の新作を期待していたファンには辛い選択であった。
二十歳前後で初めてゴダール作品に触れ、それからはゴダールやトリュフォー、ヴィム・ヴェンダースの作品を貪るように観ていたんだが、夫婦間の微妙な機微やすれ違いを描いた『軽蔑』は当時独身であった自分には正直あまり響かず、30年以上の年月を経てようやく本作の良さを理解することが出来た訳だ。
しかし4Kのデジタルリマスター技術は凄いね。昔見た時よりも画質がかなり鮮明で(初見時はプリントの状態も良くなかったし)、ここまで色彩豊かな作品だったとは。主演のブリジット・バルドーのお尻なんて毛穴が見えるんじゃないかってくらいキレイ。
特に赤の使い方が特徴的で、ソファや椅子やセーターにガウンの赤。そして何と言っても劇用車であるアルファ2600スパイダーの流麗な赤いボディ。
で、この2600スパイダーは映画の序盤に官能的な直6サウンドを奏でて登場するんだが、ラストの象徴的なシーンでも重要な役回りを演じてる。
2年後に公開された『気狂いピエロ』の冒頭はアルファの高性能振りを語り合うシーンから始まるから、なんかこの繋がりも面白い。崖の場面とかピエロを彷彿とさせるシーンもあったし、ジョルジュ・ドルリューの音楽も良かった。
表題は映画の最後にバルドー演じるカミーユがジェレミーに向けて発したセリフなんだが(正確には少し違うかもしれんが)、昔のDVD版では確か「車に乗って、成り行き任せで決めましょう」的な翻訳だったので、意訳なんだろうけどこちらのセリフの方が断然味があるよな。
公開60周年の今回のポスターヴィジュアルも良いよね。
因みに↓は1963年本国公開時のポスター。作品のイメージと全然ちゃうがな^^;
Posted at 2023/12/05 21:29:05 | |
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