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ソラノムコウのブログ一覧

2019年12月01日 イイね!

12.テトテト散歩~哀愁釜石編

12.テトテト散歩~哀愁釜石編~前回からのあらすじ~

 蓬莱島へ行くと過去の記憶が蘇り有子さんとの思い出を胸にしまい込んだ私は新たな人生のスタートを切る決意をした。
 こうして釜石の旅は終わろうとしていた。

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 これからの未来を共に歩く人と新たな思い出を作っていく。

 過去に置いてきたものに時々振り返りながら前に進むのだ。
 有子さんの姿が少しずつ消えていき、テトと重なった。


テト『またいつかまた逢えるお。その時に恥ずかしい君のままではいたくないだろ?』
 テトは島から見える海を両手を広げ眺めていた。まるでこれから空を飛ぼうとする鳥のように。

「恥ずかしいままとは言ってくれるなぁ。まぁ、確かにそうかもしれないけど…もう会わなくていいよ。遠い過去の美しい思い出のままにしておくよ」
 テトは手を差し出した。


テト『ボクと一緒に行こう!この先へ!』
 私はその手を握り一緒に歩き出した。


 釜石駅前に戻ると太陽は山の方へと落ちていた。


テト『釜石はいい所じゃないか』

「そうだね。そうだ、少し寄り道していこうか」


 駅の隣にあるホテルの展望バルコニーへと登り町を見下ろした。


 今からずっと遠い昔にこの町にいたのだ。若い頃の私と有子さんが住んでいて、僅かな限られた時間の間に交流したのだ。


 今はすっかり町も変わり、人も変わり、新しくなっていく。古い時代の面影は少しずつ失われていくのかもしれない。

 それでも釜石は私の心の故郷なのだ。


テト『なんか夕方になると哀愁が漂ってくるな』
「そうだね…目を瞑ると思い出せるよ。あの頃の町並みを…」

 若い頃の悩みはまだ現在進行形だ。未来は見えないし、真っ暗闇だ。一生解決しないかもしれない。


 それでも抗って悩み葛藤して涙を流しながらも前に進むしかないのだ。

 ここまで来るのに多くの人と出会いすれ違ってきた。時には裏切り裏切られ笑い合いながら、涙も流しながらも歯を食いばった。
 でもここまで歩いて来たのだ。この時代へと。

 帰りの車の中でテトは眠り頭を揺らしている。

「思えば…遠くまで来たもんだ」
 
 背後には夕焼けに染まる釜石の街が徐々に遠くなり見えなくなっていった。


終わり





~あとがき~

 12週に渡り続いた私と重音テトの散歩旅はこれで終わりです。
 お付き合いいただき誠にありがとうございました!!

 編集作業は8月から始めてました。
 企画は今年の初めに思いつきまして釜石へ行った時に撮影をしておりました。

 物語の中の季節は夏の終わりなので、少しだけズレがあります。
 
 釜石は若い頃に住んでいた街でした。私にとっては第二の故郷のような場所です。
 語り尽くせない程いろいろなことがありました。多感な頃に経験した思い出は大人になると哀愁となって心に去来するものがありますね。

 もうあの頃には戻れないのに、どうしてあの頃は今を大切にしなかったのだろうと後悔する部分もありますね。

 この物語を編集している間にプライベートで多忙を極めてしまい、物語としてかなり拙い部分もあったと思います。

 長い時間をかけて加筆修正作業もするつもりです。

 一応テトテト散歩としての企画はこれで一旦終了して次の企画のために撮影を行いますね。

 しかし、MMDを使ってブログを書くなんて無謀なことをしてしまったものだと思いましたよ。
 労力の割に伸びない伸びないPV!ようやく二桁って感じです。

 まぁ、それでも自分が楽しいからいいか!って感じです。


 それではまたいつかテトさんに会える日が来ることを!
2019年11月24日 イイね!

11.テトテト散歩~哀愁釜石編

11.テトテト散歩~哀愁釜石編~前回からのあらすじ~

 蓬莱島へ訪れて居酒屋の女将『有子さん』のことを完全に思い出した私。
 しかしそれは過去との決別を意味していた。

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テト『思い出せないくらい…』

「ん?」


テト『実に君はバカだな。ボクが君を忘れるわけないだろう?思い出せないくらい遠い未来に行ってしまったとしても…ボクは君を忘れないお。君がボクを忘れたとしても…ボクは忘れないお。それでいいじゃないか!』

「テトさん…」


 テトは満面の笑みを浮かべた。

テト『だってボクらは友達じゃないか。これからも…ずっと』


 そして、蓬莱島へと歩いていく。嬉しいことも辛いことも忘れずに胸に抱いて前に進むのだ。
 過去に置いてきた思い出は人生の宝物。

 あの時代だけ好きになることを許された人がいたんだ。


「有子さん…ありがとう」

テト『ところでその有子さんはどこに居るんだ?』
 テトは階段を登っていく。その後ろをついていくがスカートの中が丸見えだった。


  なんていうか…とにかく絶景だった。

「さぁね?たぶんすごく幸せに過ごしているんじゃないかな。いや、そうだと思う。あの日、私は嫉妬してしまって声を荒げたが今は本当に幸せを願えるよ。今でもあの笑顔が思い出せる。寂しさと同居した笑顔をね」


 有子さんも何らかの苦悩を抱えていたのかもしれない。たぶんあの日、その話をしたかったんじゃないかな?
 もう二度と聞くことも会うこともないが…。

 有子さんとの思い出は綺麗なまま私の胸の中に大切にしまってある。


テト『憑き物が落ちたような顔してるぞ。ここに来て良かったな!』


「ああ、とても綺麗な所だね。あの日とはまた違う景色に見える。懐かしさと新鮮さが綯い交ぜになった感じ」


テト『なんだそれ?よくわからないお!帰ったら歌を作るお!』
 テトは張り切って拳を空に振り上げた。その拳の先にある空は高く秋の雲が広がっていた。

「嬉しいこともあるだろさ♪悲しいこともあるだろさ♪だけど僕らはくじけない♪泣くのはいやだ♪笑っちゃお♪進めーっ♪」

テト『おおーっ♪』

 人は誰しも語り尽くせない思い出がある。それは普段は忘れているようで、実は大切に胸の奥に仕舞っているのだ。

 失わないように、綺麗なまま、いつまでも輝く宝物として…。


 そうだよね?


次回、最終回!
Posted at 2019/11/24 14:20:55 | コメント(0) | トラックバック(0) | テトテト散歩~哀愁釜石編 | その他
2019年11月17日 イイね!

10.テトテト散歩~哀愁釜石編

10.テトテト散歩~哀愁釜石編 有子さんとの間には岸壁に何度も打ち付ける波の音だけが聞こえていた。

 有子さんはまたあの寂しそうな笑顔を浮かべた。

 私は何も言えずに立ち尽くし拳を握りしめ震わせていた。
 そして思わず発してしまった自分の言葉に深く後悔したのだ。

 あまりにも稚拙だった。
 ただ感情を抑えることが出来なかった。

「あの…すいませんでした…」


有子『なにも謝る必要は無いわ。君はなんとなく昔の私に似ていたから。不思議ね、お互いに何にも知らないのに…。人生はこれからよ。いろいろあるわ。嬉しいことも。悲しいこともある。それでも前に進み続けなきゃいけないの』
 ふと高くなり始めた秋の空を見上げる。波音の合間に蝉の声が聞こえる。



有子『夏も終わりね…』


有子さんは空を見上げて呟いた。


 こうして私の恋も終わったのだ。あれから釜石での仕事を終えて釜石を離れた。
 その思い出を胸に秘めて、もう1つの故郷として胸の中にしまい込んだのだ。

 この遠い記憶と共に…。


テト『どうしたんだ?行かないのか?』

 テトは私の顔を覗き込み神妙な表情をしている。

「私は忘れていたんだ。ここに一緒に来た大切な人のことを…全て忘れていたんだ。そして、ここに来てようやく思い出したんだよ…」


 今からずーっと遠い昔にここに来てたんだ。
 有子さんと離れて私がしたことは有子さんのことを完全に忘れることだった。

テト『君はその人を大切に想っていたんだな』

「…そうかな?私は完全にその人のことを忘れていたんだよ?」

テト『大切なことから忘れていくんだよ、きっと…』

 テトは少しはにかんだ笑顔を見せた。そして数歩前を歩き振り向く


テト『でもこうして戻ってきたじゃないか。忘れていただけで失ったわけじゃないんだよ』

 体が震えた。私はこうして大切な記憶を忘れてきたのだ。たぶんもっと他にたくさんあると思う。

「テトさん…私は薄情なのかな?ずっと想い続けるのが辛くて…重荷になるのが嫌で…忘れて楽になろうとしていたんだ…たぶんだけど…テトさんと離れてしまったらきっとテトさんのことも…私は忘れてしまうのかもしれない」
 そう、自分はそういう奴なんだよ。どうしようもなくダメな奴なんだ。


 抱え込むのが嫌で、大切なものを失うのが怖くて怯えていたんだ。

 突然無くなるのが怖くて…ならば自ら手放して忘れてしまおうと思っていたんだ。

 たぶんこれまでもこうして生きてきたしこれからもそうなのかもしれない。


 私はこの釜石に青春を忘れてきたのだ。

 夏も終わりに近付いた海や空を見て、涙が頬を伝った。

2019年11月10日 イイね!

9.テトテト散歩~哀愁釜石編

9.テトテト散歩~哀愁釜石編~前回からのあらすじ~

遂に蓬莱島へ到着した。
その直後に全ての記憶を取り戻し女将の名前を思い出したのであった。

--------------------


 前をテトが歩いている。あの歌を囁きながら。
 あの日も同じように有子さんが前を歩いていた。


有子『嬉しいこともあるだろさ♪悲しいこともあるだろさ♪だけど僕らはくじけない♪泣くのはいやだ笑っちゃお♪』
 か細い声で囁くように歌っていた。

「あの…その歌は?」


有子『ひょっこりひょうたん島の歌よ。あの島の風景は美しいでしょう。落ち込んだ時によくここに来るのよ』
 有子さんは振り向き微笑みを浮かべた。その表情は少し寂しさを思わせた。


有子『私ね、バツイチなんだ。子供もいるのよ。でもね、会えないの…親権を旦那に取られたから』
 有子さんに感じていた寂しさの正体はそれだった。店で客と会話し笑っている有子さんの裏の顔だった。

「あの…どうしてその話を僕に?」

有子『あなたは一人で釜石に来てるのでしょう?家族と離ればなれ…私とは違うだろうけど、なんとなく同じような雰囲気を感じたのよ。きちんと家族と会話してる?』

「いや…」
 はっきり言えば家族とは不仲でまともな会話を何年もしていなかった。

有子『あなたはまだ若いのに随分疲れた顔をしているわ。そういうお客さんも結構来るからすぐにわかったの』
 全て見抜かれていたような気がした。

 繰り返される労働の日々に辟易していたのだ。仕事が終われば部屋に戻り一人で過ごす。
 そして、朝がやってきて同じことを繰り返すのだ。
 何よりも人と深く関わることを避けてきたのだ。
 そういう生活をこれからも繰り返して生きていく事に退屈さと失望感に打ちひしがれていたのだ。

「有子さん…あの!」
 有子さんは一瞬驚いたような顔をすると再び寂しげな笑顔を見せた。私の言葉を待っているようだったが、出てくるはずの言葉が喉元でつかえ出てこなかった。

 ただ気持ちを伝えるだけでいいんだ。

 これからも繰り返される惰性の日々でも有子さんが居てくれたら…そんな想いが溢れてきたがその気持ちをどんな言葉に託したら良いのだろう?
 頭の中、胸の中、腹の中…ありとあらゆる場所から言葉を探すが見つからない。
 どうしたら有子さんの心に響く言葉をかけられるのか。
 あと少し…頭の中で漠然と浮かんでいた言葉が徐々に形になっていく。

有子『私ね、再婚するんだ。お店も頃合いを見て閉めるかもしれない…だから』
 突如として出てきた有子さんの話に口元まで出てきそうだった言葉が一瞬で壊れ形を失った。
 それはドロドロとしたものに変わり喉に嫌らしく絡みついてきた。

「そ、そんな話をするために僕をここに連れて来たんですか!?」
 思わず声を荒らげた。期待していたことと大きく乖離した展開に精神が対応出来なかった。

 これは嫉妬だ。

 醜くて愚かな黒い気持ちだ。油を飲み干したような気持ち悪さが喉を通り過ぎて胸を締めつけた。
2019年11月03日 イイね!

8.テトテト散歩~哀愁釜石編

8.テトテト散歩~哀愁釜石編~前回からのあらすじ~

蓬莱島へ向かう途中に過去の思い出に浸る私。
その記憶の中で蘇った居酒屋の女将との関係。
その全容を思い出すために島へ近付いていた。

--------------------

『おい』

 テトの声に我に返る。
 ほんの僅かな間だったが遠い過去の記憶が鮮明に蘇っていたのだ。


 ただ、女将の顔だけは思い出せなかった。

「昔のことを思い出していたよ」

テト『頼むからきちんと前を見て運転してほしいな。頼むぞ本当に!』

 市街地を抜け出し山間部へ差し掛かる。確かにここは通った覚えがある。

「この道はいつか来た道だね」
 私がそう呟くとテトは私の顔を覗き込む。

テト『この旅は君のルーツを辿る旅だ。君が今まで生きてきて忘れてきたものを取り戻すんだお』

「忘れてきたもの?」

テト『ああ、人って大切なことから忘れていくんだお。それはとても残念なようだけど便利なものなんだ』

「どういうことだい?」

テト『大切にしていればいるほど記憶の奥底にしまってしまうんだ。その代わりふとした事でいつでも引き出しから出せるんだ。無くさないように。それは時に重荷にならないようにでもあるんだ』

 そうだ。
 大切な想いであれば忘却の彼方へと追いやられるのだ。
 どんな大切なものでもずっと抱え込んでいたら重荷になってしまう。新しいことを受け入れなくなってしまう。
 そうしたら人は前に進めなくなるのだ。

テト『君が完全に記憶から失われたと思っていたものはきっとそこに行けば必ずあるお!』

 蓬莱島へ近付けば近付くほど記憶が徐々に鮮明になっていく。もう少しだ!


テト『あった!あれだお!?』
 テトが指差した先に蓬莱島が見えた。その姿を見た時…落ちそうで落ちなかった雫が落ちて鏡のように張り詰めた静かな水面を叩くような音が聞こえた気がした。
 それと同時に波紋のように記憶の波が広がり胸の中一杯に広がった。

 港に車を駐車場し、蓬莱島へと続く岸壁に降り立った。

テト『今から遠い昔にここに来たんだろ?誰かと…』


「ああ…来たよ」
 私は笑っていたかもしれない、それとも泣いていたかもしれない。とにかく今の自分がどんな顔をしているかわからないぐらいに心が打ち震えた。


テト『行こう!あの島へ!』
 テトが意気揚々と歩き出す。このシチュエーションはあの頃と同じだった。


テト『左右で波が違うんだな!面白いな!』
 そう、この景色に感動したんだよ。そして、あの人はこう言ったんだ。


『諦めちゃダメよ。もっと自分から行動していろんな所に行かなきゃ』


「女将さん…いや…」
 何度も胸の中の壁を叩いていた。それが不意に扉が開いて飛び出した。
 その言葉はとても愛おしいと思った。その言葉を呟いただけで幸せな気持ちになれたんだ。

「そうだね…有子さん」
 それは女将の名前だった。

プロフィール

「@aero-century コンビニはPB商品になってしまったし、イオンなどに行けばまだあるかも?ただどのパンも高くなって手を出しづらくなった感はありますねぇ…😅」
何シテル?   02/16 14:37
人生一期一会。
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