
誰かが消し忘れた夏のスイッチを押したように猛烈な暑さをもたらした夏が過ぎて一気に秋が深まってきた。
私はというと相変わらず労働に励み、その季節の移ろいなどまるで無頓着に過ごし、2週間も3週間も休み無しで働き人生の残り時間を無駄に浪費していた。
「なんか寒くなったな…そして今日は久々の日曜日の休みか…さて」
そう、今日は待ちに待った日曜日の休みだ。大変散らかった部屋の片付けもそこそこに身支度を済ませると車に乗り込む。
鼻歌交じりに向かった先は宮城県の先っぽ『牡鹿半島』だった。

牡鹿半島は走り屋達の間でも話題に上がるほどタイトなドライブコースとなっている。
特に絶景が拝めるコバルトラインは人気だ。
気を付けなければいけないのは野生の鹿がとびだしてくる事故だ。それさえ気を付ければ楽しいドライブとなる。
石巻渡波から牡鹿半島へと進入する。
さあ、ワクワクのドライブ開始だ!
するとだ。後ろに気配を感じる。
テト『よお!』
「どわっ!?テトさん!?」
後部座席にちゃっかりと座っていたのは重音テトだ。
テト『君がいそいそと何か準備していたからこっそりと車に乗って待っていたお』
「ぬぬ…ということは私の一人カラオケを聞かれていたのか?」
テト『家からずっとな…もう少し音程をなんとかできないのかお?もっと教育が必要だお!』
「参ったな…またテトさんと一緒か…」
テト『ん?何か不満か?』
「いや、別に…んで今回は牡鹿半島なんだけど…特に大きなイベントは無いと思うけど?」
テト『だからこそボクの出番なんじゃないか。君が一人で旅行記事を書けるとは思えないお!』
「それは確かに…お!早速最初の目的地に着いたよ!」

目の前に現れたのはスタンド・バイ・ミーで見たようなツリーハウスだ。
テト『おお!』
「ツリーハウスだね。誰もが憧れた秘密基地ってやつさ。
スタンド・バイ・ミーって映画が好きでこういうのを作るのが夢なんだよね。これはカフェはまぐり堂のメンバーが浜の復興を願って制作したらしいんだ」
テト『へぇ、そのはまぐり堂とやらは?』

「この階段を降りた先だろうか…まぁ、車で行けるとは思うんだけど時間的にのんびりしてる余裕はないからね」
テト『天気も良くないしな…』
本当は秋晴れの日に撮影に望みたかったが奴隷労働者の私は天気が良いと皮肉にも仕事なのだ。
今日のようにどんよりした日しか休めない…。
無論GoToキャンペーンなんて無縁坂だ。

テト『中に入れるのかお?』
「おん!入れるよ。まぁ、入ったとしてもあのサイズじゃね…とりあえず上がってみようか?」
梯子を登ろうとすると手すりがグラグラする。
しかも木が腐食し始めているではないか!?
これはちょっと危険だな…きちんと防腐剤を塗るなりして管理してほしいものだが…。
しかしここまで上がってきて思ったのだが先にテトを行かせるべきだった。理由は察してほしい…。
まぁ、いいや。

途中の踊り場。なかなかオシャレな雰囲気だな。こういうのは結構好きだ。夜に明かりを灯したらさぞいい雰囲気だろう。

小さな入口から中を除くと小さな椅子が三つ並んでいた。まさに子供用のサイズだ。空間も決して広くはない。

テト『大人三人だとキツそうだお』
入口からテトが覗き込む。テトの小さな体でも身を屈めないと入って来れない。
「うん、まさにミニマムな雰囲気だね。鬼太郎でも昼寝してそうだ」

テト『ボクとミクとネルならちょうどいいお!』
「そうだね、君らそんなに大きくないし…私だともう床とか抜けそうだし…」
確かに床が少し軋んでいる。中で動くのは結構怖いものだ。
あくまで子供用だな。いつの間にこんなにでかくなったんだ自分…。

テト『結構高いお!』

「侮れない高さだな…」
腐食して崩れたら大怪我する高さだ。子供の頃なら大したことないと思うかもしれない。
大人になるにつれて高いところが苦手になってくるのだ。もっと歳を取るともっと高いところに行くのにな。

テト『写真撮っておくお!あとでネルに見せるお!』
こうして始まった牡鹿半島の短い旅。まさかのテトの乱入。果たしてどうなる事やら。

Posted at 2020/09/28 12:38:34 | |
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テトテト散歩 | 日記