2020年2月6日に南極半島にあるアルゼンチンのエスペランサ観測基地で、
過去最高気温となる18.3度が観測 され、更に2月9日には南米に近い南極半島北端沖のシーモア島にある、アルゼンチンの研究拠点で
観測史上最高となる20.75度の気温を観測 したとのこと。
この異常気象は、南半球だけではなく、北半球にある冬の日本でも感じられましたね。
ワタクシはドラテク修行のために、1996年に長野県にある女神湖で初めて氷上走行体験して以来、毎年 氷上でドラテク修行するのが冬季の恒例行事となっていましたが、今シーズンは暖冬のため、女神湖では氷の厚さが足らず、早々に全日程での開催中止となってしまいました。😢
ワタクシが氷上走行を始めてからシーズンを通して女神湖を一回も走れなかったのは、2000年・2001年・2005年・2016年と今年で5回目となりました。
女神湖以外を入れてもイベント中止により全く走れなかったのは、2000年と2005年の2回で、今年は運よく、何とか八千穂レイクを1回走れましたので、今現在、氷上走行回数は延べ56回となり、年平均走行回数は2.24回となりました。
ワタクシが氷上走行にハマり、モータースポーツに全く興味のない運転免許を持つ人々にも氷上走行をお勧めする理由は、
◼ 低リスクでタイヤのグリップ限界を体験できる。
氷上走行というと、スライドのコントロールに意識が行きがちですが、氷上走行を経験するメリットは、ステアリングやアクセル,ブレーキなど、クルマを動かすための操作を“繊細”に行うための練習になります。
一般道を普通に走っている限りではアクセル,ブレーキやステアリングをラフな操作をしても、タイヤのグリップが勝っているので、アクセルペダルを踏めば加速し、ブレーキペダルを踏めば減速、ハンドルを回せば曲がるのが当たり前になっていると思います。
現代の車はタイヤを含め、性能が高いので、サーキットなどでタイムアタックしていない限り、タイヤ性能を意識することは少ないと思いますが、氷上ではとにかく路面μが低いので、時速20㎞/h以下のスピードでも“曲がらない”,“止まらない”,“加速しない”といった体験ができ、例え 高性能な高級車で、ABSやVSCなどの予防安全のための電子制御デバイスが装備されたとしても、タイヤのグリップ限界を超えたところでは無力であることを実感できます。それを身をもって経験することで安全運転意識に繋がります。ここで練習を重ねることで、サーキット走行などでの危険回避能力も高まります。
冬季閉鎖した雪道の山岳路を走る走行会もあるようですが、これだと、スピードも出るためロールバーやフルハーネス式シートベルト等の安全装備がないと危険ですが、平たんでブラインドコーナーもない氷上では、もっと安全な速度で限界速度を体験できます。
◼ 車への負担が少ない。
市販車は一般走行で起こりうるある程度の負荷を想定して耐久性能を確保してますが、必要以上の性能はコスト高や燃費に関わるため、全開走行を繰り返していると、故障したり、寿命を縮めます。特にエンジンや駆動系,ボディー剛性低下などに大きく関わります。 氷上ではグリップ限界が低いため負荷が小さく、また気温も低いので、エンジンやブレーキ,ミッション,デフに対する熱的にも負担が小さくて、オイルクーラーのないノーマル車両でもクーリング走行することなく走り回れます。
◼ 経済的に練習できる。
サーキットでドリフト練習しようとすると、高出力のエンジンでないとパワースライドを維持出来ないので、その車両やタイヤなどの消耗品も高価になりがちですが、氷上であれば軽トラや三菱アイのような非力な実用車でも簡単にパワースライド出来ます。
氷上では一日中ホイールスピンさせるような運転をしたとしてもタイヤが磨耗しない。低いエンジン回転でも十分スライドするので燃費もそれ程悪くならないし、オイルの劣化も少なくて済みます。 氷上走行するだけのためにスタッドレスタイヤを買わなければならないと思うと、どこが経済的なんだ!と叱られそうですが、同じことをサーキットやジムカーナ場で練習した場合と比べると、タイヤ・オイル・ブレーキなどの消耗と車の痛み具合は遥かに小さくて済むので結果的に経済的と言えるんではないでしょうか?
◼ 路面コンディションによるグリップの違い。
一口に氷上と言っても、気温や積雪の有無,スパイクタイヤやタイヤチェーンによる引っ搔き傷の有無などによる路面コンディションの違いによって、グリップは大きく違い、また、走れば走るほど状況が変わることが多々あります。その変化はサーキット走行でのタイヤの摩耗や内圧変化による違いを大きく超えていて、それが氷上走行の難しさの一つでもあります。一日練習して、かなり上達したと思ったが、翌日走ったら全く駄目だったなんて経験するのはこのためです。
◼ 駆動方式や重量配分の違い。
普段天気の良い日に、一般道を走っていて駆動方式や左右前後の重量配分の違いを感じることを意識することは少ないと思いますが、氷上走行で一番実感するのが、駆動方式の違いによるトラクション性能や安定性の違いです。4輪駆動車のトラクションと安定性は後輪駆動車とは異次元。(ただ、ワタクシにとって4輪駆動の安定性は楽しさと同意語ではありませんが。) また、2輪駆動でも、重量配分の違いによってトラクションや限界を超えてからのコントロール性の違いは、助手席や後部座席に人が乗るだけでも感じられます。 4輪駆動車はトラクション性能と直線やコーナーでも安定性に優れていますが、ブレーキ性能は2駆と変わらないので、スピードコントロールは2駆以上に気を付けないと痛い目にあいます。
氷上走行では、雑で急な操作をすると、限界速度が下がったり、アンダーステアやスピンを引き起こしやすくなります。
操作するタイミングは“早く”、操作するスピードは“ゆっくり”と、スムーズな運転が上達する秘訣です。
(“言うは易く行うは難し”ですが)😅
走行場所
では、何所で氷上走行できるのか?と申しますと、北海道では苫小牧市にある「
白鳥湖 」,稚内市声問にある「
大沼 」,大雪山国立公園内 河東郡上士幌町にある「
糠平湖 」や、自動車関連メーカーのテストコースなどで出来るようですが、本州内となると限られてしまい、規模も小さく開催期間も短くなります。
現在、本州で自動車で氷上走行できる所と言えば、ワタクシの知る限りでは、長野県の蓼科高原にある「
女神湖 」と八千穂高原の「
八千穂レイク 」だけです。
車重1~2㌧近くもある車を水上で安全に走らせるには、それなりの広さと30㎝以上の氷厚が必要となります。
実は本州で一番初めに氷上走行会を開催したのは、群馬県中央部に位置する赤城山山頂の「
小沼 ( この ) 」と言われていて、1965年頃から2001年まで開催されてました。
(ワタクシも2001年に一度だけ走ったことがありますが、その広さは女神湖と八千穂レイクの中間位だったと思います。)
新井敏弘選手から聞いた話では、昔は同じ群馬県の「榛名湖」でも走れたらしいです。
では何故、東北地方や日本海沿岸の豪雪地帯では開催出来ないのか?と疑問に思われる方もいらっしゃると思いますが、積雪は氷にとっては大敵で、氷の上に雪が積もると、保温してしまい、氷の成長を妨げるだけでなく、雪の重みで氷が割れたり、水が噴き出したりしてしまいます。
また、そんな広い湖は私有地ではなく、国定公園内であったりして国や地方の管理下になります。よって、そこで事故や騒音問題でも起こりそうな事をするとなると、許可を得るのも難しく、開催にこぎつけるまでに住民や役所の理解と相当な努力も必要となるからです。
【 女神湖 】
現在の女神湖氷上イベント「
女神湖氷上ドライブ 」は、ホテル コロシアム・イン・蓼科などを運営する
メルコリゾートサービス(株) が管理・運営していますが、ワタクシが初めて氷上走行をした1996年当時は、「
女神湖ウィンタードライビングレッスン (MeWDL ミュードル) 」と言う名称で、第三セクターである蓼科地域計画(株)と(株)ハーズ と言う会社が管理・運営しており、貸し切り開催を除いて自車の持ち込みは出来ず、BMWやAudi,日産から貸し出されたスクールカーで受講する安全運転講習会形式のイベントでした。
(参加費は休日開催の一日コースで12,400円。この金額でプロの先生から学ぶことができ、BMWやAudiで氷上走行出来るのですから、魅力的なイベントでした。)
1998年からはマイカーでの走行会も開催されるようになりましたが、もともと、安全運転講習のためのコース作りであったため、スラロームやブレーキイングを学ぶための直線レーン,定常円旋回をするためのエリア,8ノ字旋回やオーバル走行するためのエリア,ハンドリング路といったコースレイアウトで、そのなごりが現在の「女神湖氷上ドライブ」のコースレイアウトに受け継がれています。
ですから、サーキット・ジムカーナや雪上ラリーのような走行会と言うより、ペーパードライバーからモータスポーツ経験者までが運転の基礎を学びなおし、一般道路からサーキット走行まで安全運転に活かすための練習会と言った敷居の低いイベントです。
施設内には喫茶や食事,お土産売り場がある「
女神湖センター 」があるので、走り疲れたら、そこで休憩も出来ます。また、周辺にはホテルやペンション,スキー場もあるので、スキーのついでに雪道で事故を起こさないために、これに参加すると言った楽しみ方も出来ます。
ワタクシも氷上走行を始めた当初は朝出発して、午後から半日スキーをして、女神湖前のペンションやホテルでコース料理を楽しんで宿泊。翌日氷上で安全運転講習を受けるといった感じで冬を満喫していました。
(※ 追記 2020年11月末日にメルコリゾートサービス(株)はホテル コロシアム・イン・蓼科と女神湖センターの運営撤退。現在は(株)RESTAURANT ANDOが引き継いで運営しています。)
GPSロガー解析による女神湖氷上走行軌跡
◇ ドローン映像 2017年 女神湖ハンドリング路 右回り編
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◇ 車載映像 2019年 女神湖スラローム路編
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【 八千穂レイク 】
女神湖から直線では東南の方向15㎞に満たない距離にありながら、中部・関西方面から行くとすると、冬期はメルヘン街道『麦草峠』閉鎖のため大回りしないと行けないので遠くて時間の掛かるのが八千穂レイクです。
(関東方面からだと不便ではないと思いますが。)
女神湖の周囲が約1.5㎞に対し、八千穂レイクは0.82㎞で面積も小さいです。
女神湖には休憩や食事もできる施設「女神湖センター」があり、また、歩いて行ける範囲にペンションやホテル,ガソリンスタンドなどもあるのに対し、八千穂レイク氷上走行会会場には何もなく、仮設トイレがあるだけで、飲料水の自販機さえないです。
湖上面積が小さいため、女神湖のように定常円旋回やスラロームをするための専用エリアもなく、サーキットのような周回コースが一つ設けられているだけです。
コース全長は1㎞以上ありますが、走行台数が多かったり、スタックするクルマが多いと、“芋洗いのプール”状態となり、ストレスが溜まるだけで楽しめないことも多いです。
と、ネガティブなことを色々上げましたが、では何故ワタクシが2012年にここを初走行してから毎年欠かさず、ここに来ているかと言えば、全日本カート選手権出場経験がある八千穂レイク氷上管理人さんが造るコースレイアウトがテクニカルで面白いからです。
よくもまぁ、こんな狭いところにドライバー泣かせのいやらしいコーナーばかりのコースを造るな~!と感心します。しかも、毎年コースレイアウトが違う。
(2016年のコースレイアウト はワタクシ的には低速コーナーばかりでイマイチと思いましたが。)
有名なプロのレーシングドライバーがお忍び?でコソ練に来る理由が分かります。(笑)
八千穂レイクのが女神湖より有利な点はもう一つあります。
女神湖から直線距離にして 15㎞も離れておらず、且つ標高も35m程低い八千穂レイクですが、面積が小さいのと直ぐ南と東側が山に囲まれている地形のためなのか、女神湖より全面凍結しやすいようで、今シーズンのように女神湖が開催中止になっても八千穂では開催出来たりする場合が多々あります。
2018年の八千穂レイク氷上コース
◇ 車載映像 2018年 八千穂レイク右回り周回編
VIDEO
走行車両
氷上走行するには4輪駆動車でなければ出来ないことはありません。フロントヘビーなFR車が苦手とする上り坂がないので、ドリフトが目的でなければ、どんな駆動方式の車でも大丈夫です。ただし、重量制限や騒音制限などの規制を設けているケースもあるので注意が必要です。
トラクション性能は、駆動方式や前後重量配分,LSDの有無,タイヤ性能などによって変わりますが、
4輪駆動 > RR > FF ≧ MR > FRといった感じでしょうか?
路面μが低いので、幾らパワーがあっても伝えきれないので、車重が軽くて駆動輪側の重量が重い車の方が速いような気がします。
しかしながら、サーキット走行でも同じことが言えますが、車の限界性能を引き出す上ではどんな駆動方式でも“難しさ”に大した違いはないと思います。
コース脇に積雪がある場合、最低地上高が低いと、突っ込んでバンパーやリップスポイラーを破損させたり、スタックし易いです。また、キャンバーがつきすぎていても接地面積が減るためグリップ性能が落ちます。
氷上走行する上で車両の次に重要なのはタイヤです。
雪上走行であれば、オールシーズンタイヤでも走れないことはないとは思いますが、ツルツル路面の氷上ではスタッドレスタイヤやスパイクタイヤが必要です。
(女神湖や八千穂レイクでは原則的にスパイクタイヤ使用禁止としている)
ウインタータイヤでもある程度走れますが、ツルツルの氷上路面でのグリップはスタッドレスタイヤには敵いません。
(シャーベット状の路面でもウインタータイヤは劣っているような気がします。)
ちなみに、マイナス40℃位の低温となると、冷凍庫の氷のようにくっついて、サマータイヤでも走れるらしい?です。
凍った路面でタイヤが滑りやすいのは、滑る原因は氷そのものではなくて、
クルマで氷上を走行すると、その圧力や摩擦によって表面の氷が溶け、ミクロの水膜が発生し、この水膜によってタイヤは路面に密着しにくくなり、トレッドゴムの摩擦力を十分に発揮できないことが滑りやすい理由と言われてます。
ですから、吸水系のゴムを使った製品の方が氷上性能が高いし、経年による氷上性能劣化も少ないような気がします。
降雪地帯に住んでいなくて、氷上走行だけのためにスタッドレスタイヤを買おうとすると、安物のタイヤで済ませたい気になるとは思いますが、ケチったために事故を起こしたり、特にFR車はスタックしやすいなどのデメリットもあるのでよく考えて買いましょう。
スタッドレスタイヤを履いたレンタカーを借りると言う方法もあります。これなら駆動方式も選べるし、試しに氷上走行体験して面白いと思ったら、スタッドレスタイヤを買って自分の車で走るなんてこともできます。
あると良い装備
◼ サングラス😎
フロントガラスの写り込みを抑えられる偏光レンズ🕶を使用した物の方が運転には適しています。
◼ 運転がしやすく、氷上でも滑り難い靴👟
ツルツル路面の氷上は歩くのも困難なため、滑り難いソールを使ったシューズがあると良いです。スノートレッキングシューズは雪上では良くても氷上では意外に滑りやすく、足首の動きを制限され運転もしにくい物が多いので注意。ちなみにワタクシが使用しているシューズはこれ です。もっと安くてお手軽な物がいいと言うなら、シューズのソールに被せて使うスタッドレスソール もお勧めです。
◼ タイヤチェーン⛓
氷上走行会には必要ないですが、行き帰りの道中に大雪❄⛄❄になり、スタッドレスタイヤでも走れなくなるようなことが稀にあるので、それに備えて持っていると安心です。トラクション性能に劣るFR車はトランクに入れておけば錘にもなってトラクションUP?。
◼ 除雪のためのプラスチック製スコップ
スタックした時に自力で脱出するにはスコップがあると有効です。プラスチック製だと軽いし、車を傷つけにくいから。
走行後の注意
冬の高速道路や雪道には融雪剤がまかれていることがおおいので、帰ったら直ぐに高圧洗浄機で下廻りや足回りもしっかり洗い落すことをお勧めします。
屋内スケート場と違い、氷上走行は自然相手のモータースポーツです。
よって、今シーズンのように突然中止になることも珍しくはありません。
20年前、S2000を買って初めての冬、氷上走行するだけのために中古のホイールと新品のスタッドレスタイヤを買いましたが、楽しみにしていた女神湖でのイベントが中止となり😥、後日に代替え地として赤城山小沼で開催することとなり、片道450㎞掛けて行きました。道中天気も良く、赤城山付近に来た位から小雪が舞い始めました。
イベント当日の朝、目が覚めると宿舎駐車場に停めていた車が、一夜にして何所にあるのかも分からない程大雪が積もっていて宿舎から一歩も出られなくなってしまいました。当然イベントも中止となりました。😥それだけならまだマシなんですが、宿舎従業員が除雪中にワタクシの新車のS2000を除雪機でリアフェンダー前に板金塗装が必要な程の傷つけてしまい😱😤、半日宿舎に缶詰めとなった後、泣きながら帰ったなんてこともありました。😭😭😭
それにもめげず、20年経った今も続けているのは、運転することの“難しさ”と“楽しさ”があるからです。
自分はサーキット走行もしているし、運転にも自信があると思っている方、一度 後輪駆動の車で氷上走行を体験してみては如何でしょうか?
多分 殆んどの方は、今までタイヤや車の性能に頼り過ぎていたことを実感するのではないでしょうか?。