
令和になり、最初のブログ更新ですが、今回の話は前回と同様に前世紀の備忘録です。(笑)
ドラ・テク修行記 vol.2
1995年10月に初めてドライビングスクールに参加して、運転の楽しさと己の未熟さを知ったワタクシは、その後も何回かドライビングスクールに参加し続けていましたが、ドライビングスクールに参加しただけではなかなか上達せず、お金も掛かるため、練習用の車として中古の
カプチーノを買いました。
1997年1月に納車されたカプチーノでしたが、買って間もない頃は雨天に公園などの駐車場でドリフトの練習みたいなことを数回しましたが、周りの目が気になり、いい歳した社会人が公共の場でこんなことをしていてはいけないと反省し、結局カプチーノは練習用クルマというより日常の足車という感じになっていました。😅
そんな夏のある日、モータースポーツ関連の車雑誌を見ていたら、月刊カー・ビデオマガジン『Best MOTORing』で副編集長・キャスターを務められていた
大井貴之氏が株式会社2&4モータリング社を退社後に設立した「
D-Rights」という会社が開催したドライビングスクールの記事が載っていました。
スクールのタイトルは『
定常円千回特訓』で、会場は当時 茨城県の谷田部にあった日本自動車研究所(JARI)のスキッドパッドコース。
JARIのSkid Padは散水装置のある直径100mの円形コースの旋回試験路で、ここをクルクル回るだけの運転教習会です。
スキッドパッドでの定常円旋回は『
BMW Driver-Training』で経験があり、個人的にはそのなかで一番面白いと感じていたトレーニングでした。
定常円旋回と言えば、よく初心者向けドリフト練習会で、「停止状態でハンドルを内側に切ったまま、エンジンの回転数を上げ、一気にクラッチを繋げてリアをスライドさせる。」という練習方法をとるようですが、『BMW Driver-Training』ではそんなことはしませんでしたし、サイドブレーキやクラッチ蹴りを使うこともありません。
定常円旋回は、通常のコーナリングからアプローチと脱出を省いた純コーナリング状態の連続。コーナリング中のアクセルコントロールを修得するには絶好のシチュエーションなのです。
半径20mの円周路のライン上を限界スピードで走って、そこからステアリング操作やアクセル操作の仕方でクルマが如何に反応するのか?実験をしてタイヤやクルマの特性を学びます。
そして、それが危険回避の練習にもなります。
限界スピードでコーナリングしているところから、
アクセル開度一定のまま、ハンドルを素早く内側に大きく切ったらどうなると思います?。
サーキットでコーナリング中にアウト側から自分の車を追い越して行った車が、突然目の前でスピンしたので、ハンドルを素早くイン側に切って回避しようとするなんてこと起こりそうな事例ですよね?
そんなことをしたら、こっちもスピンする❗と思った方はタイヤの特性を理解していないと思います。
ハンドルは切れば切るほど曲がると思いがちですが、実際にはフロントタイヤの向きとクルマの進む方向にはズレがあり、(そのズレの角度を
スリップアングルと言います)
このスリップアングルがある程度以上大きくなると、コーナリングフォースが低下してしまうという特性をタイヤは持っています。つまり、曲がろうとしてステアリングを切れば切るほど曲がりにくくなるという現象が起きるのです。
実際にスキッドパッド上で実験をしてみると、スピンするどころか、半径20mのラインからドンドン外側に膨らんで離れていきます。
(アンダーステア)
そして今度は逆にそこからゆっくりハンドルを戻していく(外側に切っていく)と、切っている方向とは逆に、段々と半径20mのラインに近づいて行きます。
次に、限界スピードでコーナリングしているところから、
操舵角一定のまま、アクセルペダルをゆっくり踏み込んでいくと、半径20mのラインからドンドン外側に膨らんで離れていきます。
(アンダーステア)
(その前に、限界スピードでコーナリングしているところで、操舵角一定のままラインをキープして走ること自体が簡単なことではないと気付くかもしれませんが。)
そしてその次は、限界スピードでコーナリングしているところから、
操舵角一定のまま、(なるべく低いギヤで)アクセルペダルを一気に大きく踏み込んでいくと、内側に巻き込んでスピンします。
(オーバーステア)
自分の意思で、スピンを誘発できるようになったら、今度はスピンしないようにカウンターを当ててスピンの回避します。
カウンターを当ててスピンの回避ができるようになったら、カウンターを当てたままその状態を維持して旋回します。つまり、ドリフト走行です。
言うは易し、行うのは…。😅
と、ここまでは「
BMW Driver-Training」のレギュラーコースでも体験練習しますが、ブレーキングとか他の体験練習もあるため、実際のドリフト練習時間は数分しかありません。
『わがまま』主催の「
BMW Driver-Training」Special Order Made Courseではレギュラーコースよりは長く練習できましたが、参加費が高いし、出来ればもっと練習したい。
大井貴之氏主催の「
定常円千回特訓」ではスクールカーはなく、マイカーでの参加となりますが、走行時間は午前8時~12時までで、定員10名の少人数制らしく、参加費もBMW程高くない。😄
幸いワタクシにはカプチーノがあるし、JARIのSkid Padは撒水装置により水深約1㎝に保たれ、路面μが低いため、タイヤも減らないのでスペアタイヤを用意する必要もない。
これは参加するしかない!と、早速問い合わせして、9月28日の練習会に参加申し込みしました。
練習会前日、大井さんとスタッフ一同が宿泊するホテルに宿泊して、初対面のご挨拶。
大井さんはビデオで見る通りの感じの人でした。😄
翌朝は午前6時30分までにJARI正面ゲートに集合。
8時から走行開始で、一台ずつ出走して個別指導。
「定常円千回特訓」ではBMWのドラ・トレのようにアンダーステアやオーバーステアの体験から段階的に始めるようなことはなく、参加者のレベルに合わせて指導していく感じでした。定常円旋回の未経験者であれば、BMWのドラ・トレの方が理解し易い指導方法だとは思いましたが、ワタクシのような経験者にとっては、こちらの方がありがたいです。
少人数制とは言え、基本的に一台ずつの出走なので、自分が走らないときは待機して見学です。
また、スタッフの中にはベスモの仕事もしているレースメカニックの「ハイ・レーシング」Y社長さんもいるので、待機中にクルマのメカニズム的な質問や簡単なセッティング変更をしてもらうこともできます。
大井さんの運転を見ていて興味深かったのは、ドリフト旋回中のアクセルコントロールの仕方がBMWのドラ・トレのチーフ・インストラクターの菰田さんと違うことでした。ステアリングの修正も心なしか大井さんの方が少ないような気がしました。
8月に参加した
『わがまま』主催のドラ・トレでは、ここの半径20mの定常円をスクールカーのBMW Z3で何とか連続して一周以上ドリフト出来るようになったのですが、今回カプチーノでは苦戦。
アクセル操作だけで、オーバーステアにもちこんでカウンターを当て、ドリフト状態にすることまではできても、そこからのアクセルコントロールが下手で一周以上維持することが出来ませんでした。😥
後日、大井さんが当日一眼レフカメラ(35㎜フィルム)で撮った下の4枚の写真と「
ドライビング診断書」が送られてきて感動しました。
でも、20回位「D-Rights」のスクールに参加しましたが、そんな事は初めだけだった。(笑)
Photo By 大井貴之先生
翌年、5月と8月にも「
定常円千回特訓」に参加し、6月・9月・11月には「
定常円千回リピーター特訓」に参加しました。
リピーター特訓には、シルビアで参加されていた年配のIさんや、ポルシェ911(993型)で参加されていたDr.Hさん、名古屋からコルベットで参加されていたAさんなどもいて、何回も参加していると顔なじみも増えました。
また、このスクールにはゲームソフト「グランツーリスモ」の生みの親であるポリフォニー・デジタルCEOの山内一典氏もランエボ Ⅴ WRCレプリカ仕様で参加されていました。山内一典氏とは定常円千回特訓では一度ご一緒しただけでしたが、その後、茨木中央サーキットや筑波サーキット,茂木で開催された「D-Rights」のスクールでもご一緒する機会がありました。今では大井師匠より遥かに世界的にも有名な人になってしまいましたね。
Dr.Hさんとは、20年以上経った現在もお付き合いがあり、
今年の八千穂レイクでもご一緒しました。
余談ですが、RRのポルシェ911はトラクションやブレーキ性能には優れているけれども、コーナリングは遅いと思っていたのですが、993型カレラはBMW M3(E36型)より定常円旋回での限界スピードが高くて驚きました。
また、車種によってドリフトし易いクルマと難しいクルマがあるようで、前期型NSX タイプR(NA1型)はアンダーが強くて大井さんでも苦戦していました。
日本自動車研究所(JARI)は1998年の「
BMW Driver-Training」でも走りましたが、つくばエクスプレスの開通に伴い、谷田部から城里テストセンターに移転するため、1998年末でここでの「D-Rights」や「BMW Driver-Training」のスクールは終了してしました。😢
また、1997年までの女神湖ウィンタードライビングレッスン(MeWDL)では、貸し切り開催以外自車の持ち込みは出来ず、BMWやAudi,日産から貸し出されたスクールカーで受講する安全運転講習会形式のイベントでしたが、1998年からはマイカーでの走行会も開催されるようになり、この年の2月にカプチーノで参加しました。カプチーノによる氷上走行はとても面白かったです。
そして11月にはカプチーノでは2度目となる鈴鹿サーキット走行会にも参加しました。
しかし、これで思ったのは、軽自動車でサーキットを走るのは、周りに迷惑をかけるし、安全上好ましくないと思いました。
そしてこの頃からエンジンルームからオイルが焼ける匂いがし出して、点検すると、ターボチャージャーの付け根のシール辺りからオイル漏れしているようでした。
(K6A型エンジンを搭載する後期型カプチーノは1996年の途中からターボチャージャーASSYの部品番号が変わっているので、対策品になったのかも?)
カプチーノ自体は気に入っていましたが、修理して乗り続けるよりは、もっと速くて安全な車に乗り換えた方が良いのではないかと考えるようになりました。
そんな時、来年 ホンダから気になるクルマが発売されるとの噂が。
- 関連ブログ:
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ドラ・テク修行記 序章
ドラ・テク修行記 序章 その2
ドラ・テク修行記 vol.1
ドラ・テク修行記 vol.1 その2
『初代ドラ・テク修業車』
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