
通称、便所コオロギ。
正式には、カマドウマ。
実はカマドウマ類が生態系において、特異かつ重要な役割を担っています。
カマドウマ(竈馬)
バッタ目カマドウマ科 (Rhaphidophoridae) に属す昆虫の総称。
狭義にはその一種。
姿や体色、飛び跳ねるさまが馬を連想させ、古い日本家屋では竈の周辺などによく見られたことからこの名前が付いた。
生態系における役割
近年、カマドウマ類が生態系において、特異かつ重要な役割を担っている事例が幾つか見つかっている。
例えば渓流のサケ科魚類において、その餌に占めるカマドウマ類の割合がきわめて大きいことが示された例がある。
これはカマドウマ類に寄生するハリガネムシ類によって、秋期にカマドウマ類が自ら渓流に飛び込むので、それを魚類が食うためである。
これによって水生昆虫が相対的に食われなくなり、その結果藻類が減少し、水中の落葉の分解が促進されるとさる。
カマドウマ類の飛び込みを止めると、水生昆虫が食われることから藻類が増え、水中落葉の分解が減り、川の様相が変わってしまうと言われている。
※カマドウマ類に寄生するハリガネムシ類の生活史
ハリガネムシはミミズのように細長いが、ミミズとは異なり体に伸縮性がなく、のたうち回るような特徴的な動き方をする。
体は左右対称で、種類によっては体長数cmから1mに達し、直径は1 - 3mmと細長い。
水生生物であるが、生活史の一部を昆虫類に寄生して過ごす。
1、2か月かけて卵から孵化した幼生は川底でうごめき、濾過摂食者の水生昆虫が取り込む。
幼生は身体の先端に付いたノコギリで腸管の中を進み、腹の中で「シスト」の状態になる。
水生昆虫(カゲロウ・ユスリカなど)が羽化して陸に飛び、カマキリ・カマドウマなどの陸上生物に捕食されると寄生し、2 - 3か月の間に腹の中で成長する。
まれに何らかの要因でシストもしくは幼生のまま水辺近くの草の露に排出され、それを草ごと摂取したバッタやコオロギなどの草食性昆虫に偶発的に寄生することもある。また、寄生された昆虫は生殖機能を失う。
成虫になったハリガネムシは宿主の脳にある種のタンパク質を注入し、宿主を操作して水に飛び込ませる。
宿主が魚やカエルなどの捕食者に食べられた場合は共に死んでしまうが、その前に宿主の尻から脱出すると、池や沼、流れの緩やかな川などの水中で自由生活し、交尾・産卵を行う。
カワゲラをはじめとする水生昆虫類から幼生および成体が見つかることがある。
また、昆虫ではなくイワナなどの魚の内臓に寄生する場合もある。
※カマドウマ類に寄生するハリガネムシ類の生態系にて果たす役割
寄生虫であるハリガネムシが、河川に飛び込ませた宿主であるカマドウマやキリギリス類は、イワナやヤマメ、アマゴなど、渓流に住む河川性サケ科魚類の貴重なエネルギー源となっている。
渓流のサケ科の魚が年間に得る総エネルギー量の約6割を、秋の3か月程度に川に飛び込む寄生されたカマドウマで占めている。
カマドウマなど陸の虫が川の中に入ってくることで、川の水生昆虫はあまり食べられなくなり、水生昆虫類の餌である藻の現存量が減り、落ち葉の分解速度が促進される。
カマドウマを飛び込ませないようにすると、魚は水生昆虫を食べるようになり、その結果藻が増え、落ち葉の分解が遅れ、生態系が変わってしまう。
ハリガネムシのような寄生虫が森林と河川の生態系に影響をおよぼしている。
なお、このような経緯の中でハリガネムシも一緒に魚に食われる例もあるが、その数は少ないという。
これは宿主昆虫が水中に入ってすぐに脱出が行われることにより、またいったんは喰われた場合も口や鰓から脱出することも出来るので、宿主と共に喰われてしまう例は少ないらしい。その点でハリガネムシの受ける害は多くない。
さらに宿主昆虫を魚が食うことで水生昆虫が減少しないことは、ハリガネムシにとっては翌年に生まれた幼生が侵入する中間宿主が多数存在することを意味するので、むしろ利益となると思われる。
ハリガネムシが寄生する昆虫が川に落ちるのは、主にゴミムシに寄生する北海道では6-7月頃がピークで、本州では秋である。
また、ハリガネムシに操られたカマキリは水面の反射光に含まれる水平偏光に誘引されることで水に飛び込むことが判っているが、道路のアスファルトも同様の反射光を発生させる。
このため、秋に道路上で死ぬカマキリが多いのは、ハリガネムシに寄生された一部のカマキリが水面と間違えてアスファルトを目指すためと考えられている。
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Posted at
2025/05/19 20:15:52