車間距離は前走車と「2秒」空けましょう!といったように、近年では車間時間の考え方が提案されています。
でも経験的に2秒は短すぎるように感じます。そこで、個人の主観をなるべく排し、2秒の車間時間が短すぎると言える根拠を実際の交通の例を挙げて示してみようと思います。
長いので結論だけ先に述べると、
「大型トラックの後ろを走る時は3秒は空けたほうがいい。2秒だと信号無視の恐れあり」
となります。
さて、以下その理屈を長々と。
2秒の根拠は追突事故を避けるのに必要な車間距離にあります。
例えば40km/hで走行すると、車間時間2秒は車間距離にして約22mです。
一方40km/hでの一般的な停止距離(空走距離+制動距離)は22mです。
すなわち、車間時間にして2秒空けていれば前方で何かあっても止まれる、という考えです。
では実際の交通において、2秒の車間で果たして十分と言えるのか?例を挙げて否定していきます。

図1:全高3.8m(大型車の上限値)のトラックと、その後続の乗用車を表した模式図。
乗用車のドライバーの目線の高さは1.5mを仮定します。
トラックの前方には信号機があり、地上からの高さを5.6mに仮定します(信号機は5m以上の高さが一般的だそうですが、典型的な高さは調べてもわかりませんでした)。
図1の位置関係だとトラックの荷台のために乗用車からは信号機が見えず、大変危険です。

図2:信号機が乗用車の視界に入った瞬間の位置関係。
40km/hで走行中に車間時間にして2秒空けた場合、乗用車から信号機までの距離は約40mとなります。
停止距離は22mなので、赤信号が見えてもフルブレーキングすれば、一見間に合うように思えます。
しかし実際には信号機の手前に横断歩道があり、更に手前に停止線がある場合が考えられます。

図3:よくある交差点の模式図。
信号機から停止線までの距離は交差点の大きさに依るため一概には言えません。ここでは40mを仮定します。
40mがどの規模の交差点かというと、下の写真のような交差点に相当します。おそらく日本全国どこにでもこの程度の交差点は多く存在するはずです。

先の例でいうと、「信号機から停止線までの距離(40m)」+「停止距離(22m)」は62mなので、40km/hで走行中に赤信号に気づいて停止線で止まるためには信号機の62m手前でブレーキングに入らないと間に合いません(しかもこのときはフルブレーキングが必要です)。
ところが図2で示したように、車間時間2秒では信号機が視界に入るのは信号機の40m手前、つまりこの例では停止線の位置に来て初めて赤信号に気づくことになります。乗用車が信号無視にあたることは間違いありません。
また横断歩道を渡り始める歩行者がいてもおかしくありません。大変危険なシチュエーションです。
では、大型トラックの後ろを走る際に必要な最低限の車間時間はというと、上記の例の場合40km/hでは3.1秒、60km/hでは2.8秒となります。
乾燥路でフルブレーキングすることが前提のため、実際は車間時間で最低でも4~5秒は空けておきたいところです。
今回挙げた例は極端な交通状況ではなく、日常的に遭遇しうる状況です。
車間時間2秒は、前走車との追突には至らないかもしれませんが、日常的に信号無視をしてしまうような走り方です。前方のトラックは黄色信号で通過できたとしても、後続の乗用車は完全アウトです。
「2秒」という数字だけが取り上げられ、その数字の妥当性についての議論が十分ではないのではないか、と危うさを感じています。
もちろん正確には「2秒以上空けましょう」なので5秒でも10秒でもよいのですが、如何せん2秒のインパクトが強いため、何も考えずに「2秒で十分」と考えるドライバーが増えていくことを懸念しています。
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Posted at
2024/07/10 21:07:06