誰もが乗りたがる
普通~経由~幸福駅行きの列車
「急がないと!」そんな声が耳を劈く
眼中ねえよ・・・
あんな列車、乗り遅れても構わないし
乗りて~とも思わない
俺に常識を求めんじゃね~よ
大丈夫、俺には、無敵に慣れるバイクがある
このバイクと、お前が一緒なら
どこまでも、どこまでも
走り続けられる・・・
狂い咲きムーンロード
嵐の走行会から、一週間後、満月の夜がやってきた
しかも、平日の水曜日・・・
Big Wednesday 確率100%で今夜だ
涼子は店に来てない、ときてる
私も、23時で退店し、家に帰えり
ゆっくりとシャワーを浴びて、ツナギに着替えた
オトンの刀は、シートが被ったままだった
いつもの儀式で、産業道路に出ると
FZ改が浜川崎の入り口で待っていた
軽く手を上げ、横羽線に仲良く乗った
芝浦までは、いつもよりゆっくりと走った
浜崎橋を直進し外回り
一周目も、かなりスローペース
二周目に入いり、FZ改が少しペースをあげると
ブオォー!
ニンジャと涼子のMR2が、フル加速で私達を抜いて行った瞬間!
FZ改が狂ったように後を追い加速
私もギヤを落とし加速すると、デブ巨摩CBにブチ抜かれた
(ふふふ、上等ですよ~)
ブオォー!
刀S3を加速させ、外堀の外側車線を走る
涼子が、殺人江戸橋コーナーをドリフトしながら、デブ巨摩を抑える
ブオォーブオォーブオォー
(上手いもんだ)
私も、フルブレーキングで江戸橋に突っ込む
ドリフトは、ラリーが生み出した危険回避の技で
高速ステージでは、立ち上がり重視の
このS3号には絶対に勝てない
と、教わったばかり
しかも、イン側の先には銀座〜八重洲トンネルの合流がある
(頼むぜ、涼子ちゃん!)
ヘルメットの中で、涼子がスピンしないように叫び
体重移動を終え、右手をリリース
アクセルはパーシャル
デブ巨摩とアウト側、池袋方面の車線にまで膨らみながら立ち上がりで、アクセル全開
刀S3のヨシムラ改のフロントが、チョンと浮く
ブオォーー!
二台で、涼子のラインをクロスオーバーして、MR2をブチ抜いた
FZ改のテールから、話されないようにトンネルも全開、
渋谷方面の谷町JCを過ぎ、東京タワーが迫る芝公園で
図太い、ターボ車の排気音にブチ抜かれた
ブオォー!プッシュ〜
鉄仮面〜キングだ!
いつもなら、沸騰して闇雲にアクセル全開だが、
走行会でのオトンの言葉を思い出し
冷静にFZ改と鉄仮面の走りを見ようとした瞬間
浜崎橋の分岐の緩い登りで、鉄仮面がなんなく、FZ改をパス
根性決めて、私とFZ改は下りの合流に突っ込む
ブオォーブオォー!
更に加速して、電通コーナーに突っ込む
キキキー!
鉄仮面は派手なスキール音だが何なく曲がって行く
外堀も全開
私の後ろは、デブ巨摩ではなく、涼子MR2
キングが遠のいて、加速する
なんて、綺麗な立ち上がり
関心というか、こっちも限界で走ってるのに、見惚れてしまう
キングの鉄仮面に引っ張れるように、私達四人は、ありえないスピードで走る
三週目、谷町の渋谷合流を過ぎ、東京タワーが見えて来るところで、
ブオォーー!
空冷の乾いたエンジン音に、一瞬でブチ抜かれた
デブ巨摩?と思ったが、1100の刀だった!
浜崎橋の分岐で一気に、ニンジャとFZ改を抜き、
電通コーナーでアウトから鉄仮面を抜いていく
更にありえないスピードに、皆が引っ張れる
マジかー!もう一周するのかよ!
━(;´༎ຶД༎ຶ`)━(;´༎ຶД༎ຶ`)━
必死に喰らいつくと、外堀の新富町を超えた辺りで
刀 鉄仮面 ニンジャの順で右車線に変更
911の時と同じ、湾岸コースだ
9号、深川線に入っても、刀と鉄仮面はスピードを落とさない
木場のヨーカドーの高速S字も、フルスロットル
勝負は湾岸最高速・・・
後ろから、更に聞いた事のないターボ音が
私達をブチ抜き、風圧の乱気流で揺られた
スカイラインGTR BNR32
マジかっ!
その後には、既に涼子が張り付いた
先頭の三台も鬼加速で、分岐の下りコーナー
続いて、GTR BNR32と涼子MR2のコーナーリングバトル
マジかあー!
私とFZ改とデブ巨摩も、全開で降りて、フル加速で湾岸に合流
ブオォーブオォー!
先頭の、刀と鉄仮面とニンジャが見え、13号地のトンネルに突っ込む
ゴールは横浜ベイブリッジ、大黒PAで決まりだ!
誰もが、確信して
「ザクとは違うんだよ、ザクとわぁー!」
アドレナリン全開で叫び
FZ改を先頭に私達三台は、ブルーインパルスのような、アクロバット飛行で、
有り得ないスピードで、邪魔な一般車やトラックをスリ抜けてかわし
涼子とGTR BNR32の前に出た
リミッターを解除して来たのか、涼子のスピードも今夜は落ちない
タンクに伏せて、右腕を捻る
空港中央のトンネルを抜けると前が空き、その瞬間!
ブンッ!ブオォー!
GTR BNR32が鬼のように加速して、私達をブチ抜き、一気に引き離した
「これじゃ、丹波に油だぜえぇ!」
タンクに伏せて懸命に、僅かなフロントスクリーンに追い縋る
FZ改やニンジャのカウルが羨ましい
先頭組には追いつけないが、
私と中島も、つばさ橋あたりで、涼子とデブ巨摩を徐々に引き離していた
もう、私と中島 FZ改には、誰がトップなのか、既に分からない
恐怖と期待に、自問自答しながら
タンクに伏せアクセルを捻る手を緩めない
涼子との差を広げとかないと、最後のコークスクリューで捲られる恐れもある
ギャラリーのいる目の前で
最後にドリフトで煽られたら、格好悪過ぎるー(T_T)
ブオォーブオォー!
TMRとヨシムラ菅が、もっと開けろと呪いの言葉のように、吠える
中島とドックファイトしながら、最後のコークスクリューを駆け降りると
いつもの場所には、ニンジャ服部しか居なかった
私と中島が、ニンジャの隣に止めメットを脱ぐと、
ブオォーブオォーブオォー
涼子がドリフトしながら、デブ巨摩を抑えて降りて来た
「上手いねーあのMR2」
聴き覚えのある声に、振り向くと
「スーさん!」
「マジかあー!」
涼子は、GTR BNR32を見つけ、その横に駐車して
デブ巨摩は、私達の隣に止めた
チン・チン・チン
デブ巨摩と私の、空冷エンジンから、金属が膨張する音が聞こえる
「あんな、可愛い女の子だったのね~」
4点を外し、降りて来た涼子を見て、スーさんが感心した
中島が気をきかして、コーヒーを皆に買ってきたので、一服しながら
「でっ、誰がトップだったのよ!」
コーヒー飲みながら、私が聞くと、全員がスーさんをガン見
「遅くれて来た人には、教えちゃ駄目だってぇ〜」
スーさんが、笑いながら言ったので、
「何だよ教えろよぉ!」
私は、スーさんの手首を掴んで参教すると
「痛いっ!痛いって!」
泣き叫ぶ、スーさん
「あっ!これじゃ、帰れないじゃん」
中島が叫び、皆んなが見ると、オイルがダラダラ流れ落ちていた
「最後に吹いたんだけど、俺の3番目は確定だった」
服部が、ニンジャの横に座り込み
流れるオイルを見つめながら、さみそうに呟いた
横浜ベイブリッジ 4AM
私は、ブラックの缶コーヒーを一気に飲み干した
次で終わりま~す🐷
Posted at 2023/09/26 22:38:11 |
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