
8月になりました。
相変わらず子供の習い事関係が忙しく、車ネタが何もありませんでしたが、久々にちょっとしたドライブに出かけてきました。
ただし今回はお出かけネタとはいえ、クルマの話題が殆ど何も無いうえに、ダムというか良くわからないネタばかりな上に、備忘録にとアレもコレもと書き綴ってしまった上に、纏め方が下手なことも加わり異様に長いブログとなってしまったので、そういう方面のネタに興味ない方は激しくスルー推奨ですw
行先は家族でGWにも行った黒部ダム。なぜまた黒部かっていう話なのですが、GWに行った後、暫くの間、我が家ではちょっとした俄か黒部ブームになり、木本正次著の黒部の太陽の原作本や吉村昭著の高熱隧道などの小説を読んだりもしていました。で、黒部ダムの事を色々調べているうちに、関西電力が主催する『
黒部ルート見学会』というものが催されている事を知るに至ります。この見学会、普段は非公開の黒部トンネル通行や作業用インクライン乗車、黒部川第四発電所の見学に欅平までの上部軌道乗車までがセットになった非常に好奇心をそそられるものです。
しかしながらこの見学会、1回の定員数が約30名×年間30日ちょっと。欅平出発と黒部ダム出発の2コースがあるのですが、それを両方合わせても年間通して2,000名程度しか参加できないもので、倍率もそこそこ高いようです。
因みに応募資格は小学校5年生以上、段差のある場所でも支障なく長時間歩行距が出来ることとの事で、今年6歳の次女と昨年末に大怪我をした嫁さんには無理。しかも開催日は原則平日のみと倍率以外の部分でも色々ハードルが高いです。ということであまり過大な期待はせずに、5年生の長女と私の二人だけの参加という条件で、年賀状の余りにサラっと必要事項を書いて応募してみました。
そして…我が家の俄か黒部ブームも過ぎ去り、応募したことも忘れかけていた6月中旬。黒部ルート見学公募委員会事務局という所からレターパックが届き、封を開けると黒部ダム出発ルートの見学会当選通知が入っていました(笑)
当たったのは嬉しいのですが、その日はちょうど休み前で仕事が忙しい時期なのに加えて、子供の習い事もある。でもせっかく当選したのだから行きたい…とスケジュールを調整しますが、どうしても見学会の前後の日の予定を明けることが出来ません。結局親子二人だけならなんとかなるだろうと、前日夜に仕事が終わってからの出発、車中泊での日帰りというハードスケジュールを決行する事となりました。
というわけで8月7日の夜。関東は台風13号が近づき不穏な天気。なんだかんだでバタバタしているうちに遅くなってしまい、21:30に出発。でも夜のうちに目的地に向けて出発するのって何だかワクワクしますよねw
娘もそんなノリではしゃいでいたのですが、習い事の練習後だったこともあって疲れていたのか出発後1時間もしないうちに熟睡。雨で視界も悪いのでのんびり圏央道経由で上信越道まで。佐久平より先では雨も上がり快適に走れました。日付が変わった0:30頃に長野インターで高速を降り、白馬長野有料道路から大町街道を経由。所々で休憩は取りながらも、1:30頃に無事に扇沢駅へ到着。市営の無料駐車場にクルマを停め、そのまま車中泊します。
翌日は6:00に起床。天気が心配でしたがラッキーなことに気持ち良い晴天。来た時には真っ暗で分かりませんでしたが、市営の無料駐車場はこの混み具合。平日とはいえ夏のハイシーズンなので登山客等お客さんは多いようです。
出発の準備をし、車内で朝食を済ませた後で7:00にマイカー回送業者にV36を預けます。扇沢から宇奈月まで出ると、その日の内に扇沢まで戻る事が出来ないので、扇沢から宇奈月まで車を回送してもらう必要がある為です。
車を預けた後は事前に予約した昼食用のお弁当を扇沢駅の食堂で受け取り7:30発の関電トロリーバスに乗って黒部ダムを目指します。今年度限りで引退が決まっているトロリーバス。GWで乗ったのが最初で最後になるとばかり思っていたのに、また乗ることが出来るとはw
3か月振りの黒部ダム。前回来た時にはまだ時期が早く観光放水がされていなかったのですが、今回は観光放水も見れました。ダムの下から巻き上げる風に、観光放水の水飛沫が巻き上げられてダムの上部で虹を作っています。調子に乗って近くで眺めていたらずぶ濡れになりましたw
前回はまだ営業していなかった遊覧船のガルベ(見学会で送られていた書類の中に半額券が入ってたw)で黒部湖上を周遊することも出来たので、前回来た時とは違う表情の夏の黒部ダムを色々と満喫することが出来ました。
そんな感じに、前回見れなかった場所を中心に2時間ちょっとダムを散策し、10:30前にいよいよ本日のメインイベントの見学会の集合場所へと向かいます。黒部ダム出発コースの集合場所は関電トロリーバス黒部ダム駅の駅長室前。ここで点呼と金属探知機も用いたセキュリティーチェックを受けた後で、保安帽を着用して黒部トンネル(トロリーバスの関電トンネルとは別)へと向かい、用意された中型バスへと乗り込みます。こちらのバスはトロリーバスとは違って通常のディーゼルバスで、1回の定員が30名なのは、このバスの定員とこの先に控えるインクライン及び竪坑エレベータの乗車可能人数の制約によるもののようです。
バスでの距離は10.3km。黒部トンネルを進んだバスは途中の横坑の一つで停車。ここで一度バスを降車して坑内を歩きます。横坑とはトンネルを掘り進む時にでた残土を外に出すために作られた外に通じるトンネルのことです。このタル沢と呼ばれる横坑は、険しいことで有名な登山道である『下の廊下』の近くのようで、ここからは剣岳を眺めることが出来ます。なんでもこの角度から剣岳(裏剣岳というそうです)を見ることが出来るのは、日電歩道で来る下の廊下と黒部ルートで来るこのタル沢横坑からだけ、しかもガスる事も多く、このように綺麗に見れる確率は3割程度と言われているので、運がよかったです。
タル沢を出発した後は更に作廊谷という場所でインクラインという乗り物に乗り換えます。インクラインというのは一種のケーブルカーなのですが、人員用のケーブルカーと何が違うかというと、主に荷物の運搬用となるのがインクラインで、乗車用の箱は取り外し可能。その場合、写真の天井クレーンで荷物を吊って乗せることが出来るようです。
乗客用と貨物用では管轄する省庁も異なっていて、ケーブルカーが国交省なのに対してインクラインは厚労省なんだそうです。傾斜角は34°。ちなみに北海道の大倉山のスキージャンプ台が35°なんだそうで、そういえば8年前で社員旅行で見た大倉山はこんなだったかなんて思いながら見ていましたが、地下空間ゆえの圧迫感ゆえか、インクラインの方が迫力があるように見えましたw
インクラインで下ること815m。インクライン下部のすぐ先は、今回の見学会のメインである黒部川第四発電所です。
発電所はダムの至近にある訳ではなく、高低差を利用するため高圧水路で10km以上離れた地下にあります。
中央に設置されているのが発電機。広く取られた室内空間に比べると発電機が小さく見えますが、メンテナンスの際には天井クレーンで上に引き出して整備をするそうでこれだけの空間が必要とされているようです。
外されて展示されていたペルトン式水車。模型などではなく予備品としの扱いだそうで、実際に他の水車のメンテナンスが必要になった時には入れ替えて使うそうです。直径3.3m、重さ12tあるそうなのですが、コレ一体成形の鋳物なんだそうです。水車自体の大きさも凄いですが、この水車を作る為の鋳型はさらに巨大で壮観なことでしょうw
実際に使われている水車だけあって水圧でパケットの表面はボコボコに凹み、また土砂で削られているのかザラザラもしています。なので定期的に肉を盛ったりするメンテナンスが必要になるそうです。
発電所内部を見学したあとは、PRルームという会議室のような場所にて昼食。扇沢駅で購入した弁当を食べます。食事後は隣の応接室を見学。なんでも2002年に中島みゆきさんが黒部ルートで紅白歌合戦で地上の星を歌った時にはこの部屋を控室にされていたそうで、以後関電職員はこの部屋を『みゆき部屋』と呼んでいるそうですw
この紅白の時のエピソードも結構あるようで、音響を考慮した結果歌う場所は欅平に近い上部軌道の側が適していたのだけど、大晦日で欅平側は冬季閉鎖されて機材搬入が出来ない為、大町側からトラックとインクライン使って機材を運んだとか、地下で電波が届かない為に黒部トンネルから関電トンネルまで延々10数キロの距離を通信ケーブルを通して扇沢駅前から衛星中継したとか相当な苦労があったらしいです。
昼食後はトロッコの上部軌道に乗って欅平上部へと向かいます。途中、仙人谷駅にて一度下車。この駅は上部軌道で唯一地上に出た橋上の駅となっていて、夏季は壁板を外して外が見えるようになっていますが、冬季は壁板を設置してトンネル状にすることで雪害を防ぐ仕組みとなっていると説明を受けました。
ここの仙人谷駅からは黒部第三発電所へ通じる仙人谷ダムを目の前に臨むことが出来ます。上で上げた小説、高熱隧道はこのダム建設及びダムに至るまでの隧道掘削にまつわる話です。もう80年近く前に完成したというこのダムもまた、日電歩道で歩いて来るか、上部軌道に乗ってくるかしないと見ることの出来ない景色の一つです。ダムの下部から反対側に見える下流側は凄い形をした岩肌の並んでいる異様な光景が見えます。
再び上部軌道に乗り、高熱隧道を通って欅平上部に向かいます。小説ではこの隧道掘削にまつわる異様な情景が事細やかに描写されています。掘削当時は160℃超の岩盤温度だったようですが、ダムの水路が放熱器の役割をして現在は40℃まで温度が下がるようになったそうです。それでも、その場所を通ると今でもムワっとする熱気と硫黄臭が漂っています。この区間では硫黄分が架線を痛めてしまう為、電車を使うことが出来ず、ディーゼル機関車は排気ガスと高温下での燃料への引火の危険性から使用することが出来ずに、バッテリーカーを使っているそうです。
欅平上部の竪坑近くにも展望台があり、こちらからは後立山連峰を眺めることが出来るらしいのですが、生憎このころからガスが出てきてしまい、あまり良く見ることは出来ませんでした。。ただ高熱隧道でも出てきた志合谷の泡雪崩で空を飛んだ宿舎が激突したといわれている奥鐘山の岩肌を見ることが出来ました。
ここまで来ると黒部ルートツアーも、もう終盤。竪坑エレベータに乗って一気に200mを下り、欅平下部へ。ここで工事用トロッコ電車へと乗り換えますが、5分程度で欅平駅に到着。こちらで解散の流れとなりました。
10:30から始まったこのツアー。14:00までの3時間半、18kmの移動でしたが、内容的には盛り沢山で親子共々好奇心を満たす事の出来る素晴らしいツアーでした。鉄道や乗り物が好きな下の娘を連れて行ったら喜びそうです。富山県側ではこの黒部ルートを重要な観光資源にしたいと考えているらしく、このツアー自体の商品化も含めて、関電側と富山県側とで色々な議論が交わされているようで、下の娘が対象年齢になる5年後まで同じような形でこのツアーが続いているかは分かりませんが、もしその頃も実施されているならばその時は是非また応募したいと思いました。
欅平で解散した後は、ツアーで手配をして頂いたトロッコ列車に乗って宇奈月へ。車窓からの黒部川流域の景色を楽しんでいましたが、娘は疲れも出たのか、うつらうつらと舟を漕いでおりましたw
宇奈月駅に到着したのは16:00ちょっと前。汗もかいた事だしと、駅前の立ち寄り温泉に寄って一汗流したのは良いのですが、流石に疲れも出てきて帰る気が一気に失せてしまいました。とはいえ次の日は仕事なので、今日中に帰らなくてはなりません。駅前でクルマの鍵を受け取り、駅のすぐ前の駐車場に回送されたV36に乗って帰路につきます。
因みに扇沢から宇奈月までの回送距離は130km程。多分下道での移動だったと思うのですが、燃費計の数値が扇沢出発前より良くなっていました。ドライバーさんはエコランの上手な方だったのではないかとお見受け致しましたw
宇奈月から山を下り、黒部ICから高速に乗ろうかと考えていたのですが、先に見える日本海を目にしたら、何だか海岸線を流したくなってしまい国道8号へ向かいます。丁度糸魚川近辺で日が落ちそうだったので駐車場に車を止めて日本海に沈む夕日を眺めていました。夏の日本海の海、そして夕焼けという光景。コレ、本当に大好きなんです。
そんなこんなで夕方の海岸沿いのドライブをしているうちに、下道で上越市まで行ってしまい、市内で夕食を食べたあと、21:00頃、上越ICより北陸道に乗り家路につきます。帰路では疲れも出たのか眠気を覚えることもあったので、所々で休憩&仮眠をとりましたが、1:00頃無事帰宅。
走行距離850km。うち回送距離が130kmですから実質720km程の弾丸旅行。満タン法燃費11.8km/ℓは今までの最高記録です。忙しく疲れもしましたが親子共々とても楽しい旅でした。
上の小学校5年。そろそろ難しい年齢に突入しそうなお年頃。父娘での二人旅なんてこれが最初で最後かもしれないな…なんて娘の寝顔見ながら、ちょっとセンチな気分になった今回の黒部ルート見学会でした♪