前の会社で主に関わったのがモトクロッサーでした。
兄が国際B級までやってたのを見ていた事や、ナンバーなしの競技用である事など、とても良い経験でした。
ナンバーなしだから何でもあり的な4輪と違い、昔から続く明確なニーズと厳しいレギュレーションに合わせる為、開発チームには難しい目標値が与えられていました。
2輪のメーカーだからってみんながバイクに乗るワケではないのは想像が出来るでしょうが、作るのは世界一速いモトクロッサーです。
メーカー内のテストライダーですら使いこなせない、スーパーマシンです。
アメリカなどの現地の夢ある若くて才能が未知なライダーに買ってもらえる為には結果で示すしかありません。
実車には誰も乗れない開発チームが作り手です。
ケイヒンのFCRキャブレターはそんな中で開発されたりしました。
ワークスマシンは世界GPの500ccクラスで10年以上チャンピオンを獲得。
その市販モデルがレプリカではなく、アマチュアが勝てるモデルでなくてはなりません。
みんな普通のサラリーマンなのでグチを言いながらも現地のムチャクチャな要望に応えてました。
毎年です(笑
現地要望っていっても数値的なものは一切ありません。
それで図面を起こして試作品を作ってテストして、量産向けに手直しして生産にこじつけます。
もちろん耐久性も確認します。
実際昔ワークスチームのメカだったおじさんは、星野一義さんがまだモトクロスライダーだった時、2、3周くらいはついていけるくらいの乗り手でなければいけないって言ってました。
セットアップ前のベース車両を用意する開発チームと現地のメカが優秀でないと勝てない、やはり厳しい競技でした。
ALTでのタイムアタックは、私が開発チームとメカ、178さんがテストライダーとプロ選手、みたいな遊びでしたね。
レギュレーションは時間とお金のみ。
結果の見返りなんか何にもありません。
タイムだけです。
一人で四役出来て時間もお金もある人、いないと思います。
私も自分の身の程は分かっています。
だがしかし、私はこう考えました。
企画・開発は自分であり知識経験はうんちく程度だが、学習意欲は世界一(のつもり)。
メカは、もちろん自分ですが、おっちょこちょいでサボリ好き、いんちき好きの最低レベル。
テストドライバーは178さんと自分。上手い人と下手な人。上限と下限。
アタックドライバーも178さんと自分。同上。
これで運用することは、基本がしっかり出来ていないと壊れるクルマになったり、不安定なクルマになります。
エンジンなんかは売ってる部品を組むだけで結果が出るようにしなくてはならないです。
がんばって作っても、もし壊れてしまって次を作るときに、同じエンジンを私の根性では作れないのが分かっています。
なので最低レベル、測ることで不良品は使わないようにはしますが、それだけで組みました。
ヘッド、インマニは少し追加工しましたが、それも時間をなるべく掛けない、最小限の加工です。
それでも少し失敗してます(笑
制御も「詰める」作業は一切せずに、壊れないことだけに集中。
で、走行テストは、何もしない自分とイメージ優先で走る178さんとでログデータを比較。
そして新品のA050で走ったのは2回ですが、178さんは1回だけ。
私が運転してとにかく修正の要らないクルマにすることが課題でした。
少々大げさに動かしても広いスウィートスポット(ゾーン)を持たせて、タイムを出しやすく。
これは段階的にエンジンにお金を掛けて速くしていく場合には効果が大きいです。
あるところで完成させるのではなく、最終的に私が乗っても28秒を切れるクルマのイメージを少しずつ作り上げる感じです。
結果178さんのタイムより0.4秒遅いですが、私のほうがアクセルの全開率が高いデータが出ます。
残念ながらロードスターのようなFR車両では、私にとってALTではなんとかなっても他へ行くと一気にタイムが出ないということがはっきりしたところでロードスターへの気持ちがなくなってモチベーションが維持出来ませんでした。
さて、速いクルマに必要な要素は簡単です。
速いエンジン、軽い車重、良いタイヤ、空力。
この中で同じレベルの人たちと戦うことを基準にすると、タイヤと軽さは同等になってしまいます。
エンジンと空力。
課題はこの2項目です。
インプレッサの時の初期はこんな感じでまとめてました。
まだ色々分かっていない頃、2005年です。(もう9年か・・・)
http://www.geocities.jp/altsaisoku/mondai050304.html
で、2年後
3年目に向けてのまとめを書いています。
http://www.geocities.jp/altsaisoku/mondai070220.html
実際には2007年5月くらいに伊勢湾岸でエンジンブローして2.1Lを製作し、それも9月にイージーミスで1回壊してピストン入れ換えて復活して12月にギックリ腰になって(関係ない)、2月にALTの帰りに事故って終了でした。
エンジンは本当に苦労しました。
とにかく今まで得た情報が間違いや誤差が多くて。
ただこの経験とさらなる知見によりロードスターの遅いBPエンジンでも「出来る」と確信出来たのです。
そしてGT-RとBPエンジンでの経験が水平対向エンジンの優秀性にたどり着きました。
トルクの出るターボならまだしもNAエンジンではショートストロークとコンロッドの連かん比が重要なんです。
高回転を使わないモトクロッサーもそうなんです。
制御は難しくないと思います(速さだけなら、です。街乗り用は難しいです。)
空力は、エンジンパワーのエネルギーをダウンフォースに変換させるものですから、エンジンが余っていないと効果が出ません。
600馬力も要らなくても100馬力分の空力にすればよいのです。
パワーはいくらあっても余分はありません。
重要なのは40km/hでも200km/hでも加速することです。
パワーには「質」があります。
これはタイムを刻むことを真剣に取り組まないと得られないことです。
なぜ最近まで速さのためのパワーを金で買うことが当たり前ではなく、良くないほうのあるあるネタなんでしょうね。
「質」が誰にでも分かる(伝わる)からですね。
ロードスターのBPエンジンはホンダVTECのように「オーバーレブ特性」を期待したエンジンです。
264-256カムですが、9000rpmで加速する特性。
このフィール、嫌いな人が多いです。
圧縮比も高くないし、シリンダーは中古、クランクも中古。
寸法、強度検討のみで製作すると「イイ!」感じがなく、ただなんとなく「速い?」みたいな。
こういう感じで足回りでもタイムを出すだけの仕事をこなすことで結果だけを得ます。
「下限」ですね。
アライメントの測定もしてません。
左右差はフィールに違いがあっても性能に差がないことを知っているからです。
一度車高を決めたときに178さんにトーだけ測ってもらって、その後は車高を変えませんでしたので、ガレージ始めて道具が揃ってアタック終了後に確認しただけです。
ハイキャスターはアタックが終わってからデータを集めて感覚とリンクさせてからここで具体的にまとめました。
(178さんが数値でない指標でまとめてましたので、数値のみ後付に近いです)
狙った性能を、設定した下限品で出すことで、私は満足です。
そういう作り手です。
角さんもそうなんですが、性能が低いのが分かってて「上限」を狙うことが多いです。
そういう差があることも分かるんですが、その作業が自分らしくないと思っちゃうんでしょうね。
でも18kgのクランクはそれなりです。
いくら磨いても10kgのクランクに勝てない機能があるんです。
30秒と29.9秒と29.8秒の差。
30秒と28秒の差。
人によって感じ方が違いますよね。
前者は同じ人が感じたい差で、後者は違う人に感じさせたい差とでも言いますか。
商売、失敗して当然です(笑
機能と質は違います。
「質」にも色んな評価軸があります。
これらは企画・設計者の考え方ですね。
上限の話はプロの世界。
下限の話はアマチュアの「ネタ」の世界で、結果はついてこない。
下限で結果を出すことに意義は・・・・・ないですか、やっぱり。
早く結果を出すことも、時間軸のものさしの「上限」と思ってたら、長く少しずつ楽しみたい人が多くて実は「下限」だったというオチまでつきましたから。
長々とすいません。
私、街乗りはインスパイアで満足しています。
そういう人なので、そういう質の話はあまり出来ないみたいです。
ここでは少数派と分かってて、共感も得られないのも分かってて、情報としてのみのつもりで書いています。
(そうはいっても褒められたりするとうれしいです(笑) いつもイイネね!を付けて頂き、励みになってますよ)
実際に会うと文章よりめんどくさいヤツですので、え~と和尚さん、これからもよろしくです。
また飲みに行きましょう(笑
※インプのタイム、勘違いで28秒1としてましたが28秒3の間違いでした、すいません。