2015年07月26日
前回まではフロントのブッシュの話を書きました。
今回はリアについてです。
リアはハンドリングでは追従がメインになり、ブッシュの役割はそんなに重要でなくて、街乗りメインであればフィーリングで決めても問題にならないでしょう。
アンダー、オーバー、アライメントなどが正しい値でなくても問題ないですしね。
本題の前にちょっとだけアライメントの影響の話もしておきます。
フロントをトーインにするとクイックに感じます。
これはトーインによってスリップアングルが直進時でも発生しており、タイヤが曲がる前から曲がる体制に入っているということです。
リアにおいても同様です。
キャンバーも同じようにタイヤが倒れている方向へ曲がろうとする力が生まれます。
(詳しい理屈は忘れました)
キャンバーの場合は、接地面が片側へ偏ることによって路面からの入力軸もずれるため、直進性やブレーキング時の安定に影響します。
前回のブッシュの話ですね。
で、リアのブッシュの影響について。
主にサーキットでの限界特性として、クルマが旋回するには重心を中心としたヨーの動きに対しフロントがインに行くのに対しリアはアウトへ行かねばなりません。
が、当然行き過ぎればスピンします。
重いクルマほどヨーの立上げに大きな力が必要で、行き過ぎの頻度も上がります。
フロントはステアリング操作でどうでもなりますが、リアは成り行きですから、止めようと思っても止められず、フロントの逆へステアリング操作(逆ハンドル、カウンター)で止めたりします。
リアに要求される特性は、
・早いヨーの動き始め(進入での曲げ始め)に対しスリップアングルが適正でかつ、大きなヨーで安定になること
・減速、加速の影響でのヨーの変化に対し正しい追従になること
・一般直進性、ブレーキング時の安定性
・加速時におけるタイヤのグリップも確保出来ること
もうだいたいリアのブッシュの役割が見えたのではないでしょうか?
コーナーの進入での向き変えでリアが踏ん張りすぎるとヨーの立ち上がりを抑制してしまい、速い向き変えが難しくなります。
リアトーインが強い場合とかがそうで、曲がり始めでリアのスリップアングルが上手くつかないことがあり引っ掛かってしまいます。
ブッシュがたわんでトーがアウトになるわけですが、バランスが悪いと低速コーナーで曲がらず、高速コーナーで曲がりすぎる、とかになりますね。
ブレーキングはリアのトーをトーアウトにする力にもなりますので、「ブレーキ残し」でこのことへの対処にもなります。
ブレーキングがないと上手く曲がれないクルマはそういう理屈です。
逆にリアが踏ん張らない場合は速いヨーに対して行き過ぎてしまい、スピンしやすくなります。
これらのことはブッシュを肯定しており、ガチガチにすることへの注意点と考えられます。
そして、ブッシュが条件を満たしていない場合、リアトーで悩むことになります。
トーやキャンバー剛性によるヨーの動きとバネの前後バランスでのアンダーオーバーとは別の理屈なので、当然バネだけではこれらのヨー制御には対応不可能ということになります。
タイムを求めないならば、タイヤや乗り方をブッシュに合わせて走ることが「気持ち良い」ことになります。
前述したようにアライメントにより踏ん張り具合の調整が可能ですので、リアのトー、キャンバー調整は有効です。
ですがサーキットでタイムを求め、バネレートが高くなって、使うタイヤのグリップも上がっていき、ヨーの動きが速くなってくるとバランスが取れなくなることが多いです。
全体の動きが遅いうちはピロ化が不要だと考えてよいと思います。
ヨーを大きくするにはフロントを中心にハイグリップなタイヤにし、バネを硬くします。
発生させるヨーを正確にするためにはタイヤの位置決めを正確にする必要があるため、ブッシュは邪魔。
正確なヨーコントロールがドライバーの役割ですが、本来はステア操作がメインで、次にアクセルを使います。
ヨーの動きが遅いと、いくらバネのバランスがオーバーステアであっても小さいターンでは物理上速いコーナリングが出来ません。
リアを早めにスライドさせて速いヨーを実現する必要があります。
テクニックでなんとかなる場合が多いとも言えます。
なんともならない場所でみんなが悩んでいる、とも言えます。
クルマのバランスが正しくなくても、ドライバーの補正によってなんとかなると言われているのがヨーです。
ドリフトでよく使うフェイントなんかが良い例ですが、グリップでもS字の振りっ返しなどで速いヨーは経験できると思います。
偶然にしても確率の低いギャンブル的なアクションだとしても達成さえすればタイムにつながります。
しつこくアタックして出したタイムはこういうことだと私は考えていて、クルマの楽しみと正しさが別、という考え方です。
物理的に起こりうることは100%の確率にすることが正しい技術だと思います。
普通、Sタイヤなど速いタイヤに合わせて全体のバランスを取り直すことはしませんので、仕上がった状態を体感することは非常に稀です。
ラジアルのほうがあいまいで補正に対する誤差も吸収してくれることから、基本はあいまいなフィーリングのまま走りこみでタイムを削るのがタイムアタックになっています。
もちろん否定してるのではなく、私が考えた事実だと思ってください。
事実を検証する、まぐれを100%に出来ることを証明する遊びをしているのが私です。
ポルシェのスポーツモデルやR35GT-Rなど、ラジアルではありますが、かなり良い仕上げになっているクルマも市販されているので助手席でもサーキットで試乗する機会があれば経験するのも良いと思います。
速いクルマというのは、タイヤ、エンジン、車重、空力で決まりますが、ヨー制御まで速いクルマをメーカーは作る必要があります。
姿勢制御技術の確立により、ヨーレートの計測精度が向上したので、当たり前のことです。
これらのクルマはサーキット領域でも普通のコーナリングをしてしまい、ドライバーに必要なのは慣れだけになっています。
普通のコーナリングとは、ライントレースでの最大横Gとヨーイングに必要なヨーが十分に発生させてコーナリングすることです。
もちろんドライビングテクニックで何とかするのがモータースポーツなので、タイムに影響しないといえるヨー制御は無駄な技術、余計なおせっかいかもしれません。
「良く出来た」クルマで走ると、とても気持ちの良いものです。
それがクラシックカーだろうと最新のスポーツカーであろうと同じです。
が、ヨー制御が正しいから気持ち良いのではなく、ドライバーの意志とクルマの応答のリズムがあってさえいれば気持ち良くて、ヨーが完璧に制御されていると乗らされている感覚なので、否定されるみたいです。
最近のクルマがつまらないのは、このヨー制御が完成してしまっていて、ドライバーの補正が要らなさ過ぎるのが原因と思います。
ヨー制御こそがドライバーの役割であり、クルマに演出されるのは気に入らない、そんな感じです。
しかもサーキットへ持ち込むとクルマのヨー限界がたいしたことがない上に電スロ、ABS、姿勢制御などが働いて、タイヤの本当の限界を超えさせてくれないです。
技術者はクルマ好きではないですから、この矛盾はなかなか解決しないでしょうね。
完成すると本当に面白くないのでしょうか?
ラジアルタイヤはグリップがあるだけで良いタイヤではないです。
横Gは出ますが、ヨーはそれほど大きくなりません。
純正タイヤでバランスを取るということは、グリップもヨーもそれなり。
ハイグリップラジアルにしてもヨーがイマイチなため、タイムを出すのが難しい。
で、ちぐはぐなクルマのヨーコントロールはほとんどドライバーの仕事。
違和感のまとめとしては、そこそこ速い実績のクルマで私のいう「ヨーが速いクルマ」はほとんどなく、人が上手いだけなので、ほとんどのクルマに違和感を感じます。
横Gだけ大きくてヨーが出ない、曲がらないクルマしかありません。
あるきっかけで大きなヨーが出ますが、乗りこなすには相当な練習と才能が必要です。
クルマのヨーコントロールは、
フロントタイヤのサイズアップで改善します。
ブッシュを硬くするかピロ化で改善します。
結果、面白くないクルマ、速いだけ、とか言われます。
う~ん。。。
ヨーコントロールは人がやるもの、であれば、クルマのセッティングってもっとわかりやすいはずです。
しかし、ヨーを作るのはクルマ側の範囲も大きいのです。
私のやり方は少しだけ人よりクルマ側の範囲を広げているだけで、大きな差ではないと思います。
それは遠征でホームでないサーキットを走って実感しています。
例えば広島のタカタサーキットへ行けば、乗りこなすには相当な時間が必要です。
年1回の走行で何とかなる話ではありません。
私の作ったクルマでも確実に人がヨーコントロールをします。
ホームコースであればそれを私自身も実践できる可能性が高く、結果が残せます。
近道とか安く済むとかって話でもありません。
「あるべき姿はなんなのか」
それだけです。
以下に事実を参考に書きます。
本当に結果が速いクルマはヨーの速さに徹しているクルマが多いです。
しかし、実現するためにリアのグリップを不安定にして、リアをブレイクさせてヨーを得ているクルマが多いです。
そのため私には扱えないクルマばかりです。
以前のジムカーナ用はコレが主流で、車高調、LSDだけで達成させています。
4WDはセンターデフの差動制限でリアをブレイクさせてヨーを生みます。
FRは2WAYの機械式、イニシャルは数キロ以上で。
FFはタイヤサイズで対応する場合が多いですが、リアをガチガチにしたり、明確なトーアウトによるテールスライドも使います。
たいていの速い人のクルマは、ステアを入れるだけでは曲がりません。
アクセルオフが起点になることが多いです。
ちょっとオーバースピードで進入し、緩やかにクリップに向かい、一気に向きを変える(ヨーを作る)、向きが変わったら即座にヨーを止めて立ち上がる。
これが基本です。
向き変えは少ないほうが速いので、アクセルオンで外輪に駆動力を集中させてクルマ重心を外から押し、ヨーを作り、駆動力でも曲がりながら立ち上がります。
(狭い意味でトルクベクタリング)
これら一連の動作をステアリング、アクセル、ブレーキの操作のみで行い、荷重コントロールとヨーコントロールをします。
ドリフトの場合は、リアの駆動力でクルマ重心をまっすぐ押す形でヨーを発生させない広い意味のトルクベクタリングです。
ヨーがステア操作のみで発生させられる場合、進入からクリップまでにやることが単純で簡単になるので、似たような結果が得られることになります。
(私が実践してきたこと)
ちなみに空力でもヨーレートが上がります。車重が変わらずグリップが上がるので当たり前です。
が、ヨーをリアのブレイクによって発生させていると、ブレイクしにくくなるマイナス要素となって、リアが引っ掛かるため難しいです。
フロントのヨーを大きくするやり方だと、ダウンフォースはプラス方向にしかならないので、有効です。
空力が嫌われるのは、こういうことです。
リアのセッティングをキッチリやると速いヨーに追従します。
より速いヨーのためにフロントのキャスターを寝かします。
キャスターを寝かすとスライドコントロール性が悪化します。
が、リアがしっかり追従していればスライドさせる必要がないのでそれは重要でない機能です。
リアが追従しつつ大きいヨーを発生させヨーを止めるには、リアにも操舵を付ける4輪操舵が有効です。
現行911で採用されましたね。
ヨーを大きくするのはフロントと逆に操舵すれば良いです。
(フロントがインへ、リアはアウトへ)
ヨーを止めるのはフロントをカウンターステア(逆ハンドル)となるので、リアはインに操舵すればヨーが止まります。
現在の姿勢制御の緊急時のヨーコントロールはブレーキのみで制御していますが、操舵も行うようになるのは遠くない将来です。

Posted at 2015/07/26 22:51:55 | |
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