
たまには○×だけでなく、文系っぽくレベルの話とか。
私は、ある事象に対して、○×、正しいか間違っているかを判定してしまいます。
ですが、良い、良くない、悪くない、悪い、犯罪、と何段階かある考え方もあるようです。
私の線引きでは、良い以外は×となります。
機械というものは、故障したり機能しなかったりしたら存在価値が一気に素材レベルまで低下してしまいます。
そして、その故障や機能しなくなる確率は、上記の良くない部位の「足し算」でなく「掛け算」で悪化していきます。
私の仕事は、修理でもなく改良改善でもなく、「根本解決」です。
ある機械のスイッチが入らなくなって、機械が始動しない、ということがあったとします。
故障の原因を考えると、怪しいところが3箇所ありました。
・始動ボタンが壊れてして押してもONとならない?
・電気回路の配線の一部に油が掛かっていて、短絡(ショート)してしまってる?
・他に故障しているところがあり、そのせいで始動条件が揃わない?
修理の場合は、上から順番に対応していけばよいので、部品交換、清掃で完了。
元に戻るでしょうね。
ですが、いつかは分かりませんが、必ず再発します。
改良改善では、ボタンや配線に対して再発防止を行います。
このスイッチについてはこれで問題ないですが、同じようなところがあれば他で同類のトラブルが発生する可能性があります。
また、ボタンや配線がある以上、故障の確率はゼロにはならず、リスクはゼロになりません。
ここで、たくさんの機能やボタンがある機械であるほど、故障の危険(リスク)が高いことが分かると思います。
そしてその確率は掛け算です。(確率、統計は高校でしたので、覚えてない人は分からない?)
ざっくり言うと、100%でなく99.97%の信頼性の場所が100箇所以上あると、年に何回かはトラブルで生産が出来なくなるってことです。
100%はいくら掛け算をしても100%なので、100%の対策をしないと故障はなくなりません。
もちろんメンテナンスは必要で、磨耗などで定期交換する部品もあります。
このとき交換した部品の品質不良や交換するときに組み間違えたり、締め忘れたり、傷つけたり、ボルトを折っちゃったりする2次的な故障もありますので、交換は少ないほうが良いです。
((進化のイメージその1))
個々の信頼性を上げる。
・ボタンの寿命が長いもの(高価なもの)に変えます・・・made in japanの真骨頂ですね。
・配線の取り回しなどにルールを決めて、他の場所や他の機械を一斉点検し、悪いところがあれば改良します。
・最後には、無接点化(はるかに高寿命)、故障探索の時間短縮(異常表示、内容表示、事前警告など)
((進化のイメージその2))
そもそもの原因でなく、機能を考慮して全体を簡素化して要素そのものを削減したり、構造を見直して磨耗そのものをなくしたりして、故障をなくしていく考え方です。
おおよそですが、その1は現場レベル、ユーザーや整備士のやることで、その2はメーカーが考えることです。
また、2次的なメーカーの各部品の開発により無接点化などの進化や故障の表示機、配線の簡素化、新工法などが生まれます。
サーキットでのタイムアタックにおいてもタイムロスを故障ととらえると同じことが言えます。
まず考え方として、おおまかなスペック(パワー、車重、タイヤ、空力)でベストタイムが決まります。
重要なのはそのベストタイムは物理的に決まった値であり、それ以上速いタイムを得ることは不可能ということで、走る前から決まっているということです。
で、速い人というのはクルマの「遅くなる原因」をひとつひとつ対策していきます。
その中には事前に準備しておいてクルマへの操作に対する応答遅れに対応するというのがありますが、とても多いです。
そのため、応答が早いところと遅いところでタイミングが重なり、同時に2つ以上のことを行わなければタイムロスが挽回できません。
それらを正確にこなしていくことが、上のその1にあたり、必要な技術といえます。
その2にあたることとしては、無駄な操作を減らしていくこと、応答遅れを減らしていくこと、そしてそれらを弊害なく行うこととなります。
ちなみにレースでは乗り手が山ほど競ってきたことで優秀であることが前提ですから、その2の対策はほとんど不要です。
メーカーはスペックを向上させることだけ考えれば、勝てます。
壊さないことも現場にかなりの範囲で委ねます。
基本タイムロス対策は乗り手の仕事。優秀ならその分その対価を払います。
話を戻して、タイムアタックでのその2で分かりやすいのが新工法、電子制御化で、エンジンが主体ですが例えばキャブレターの応答遅れはインジェクション化で劇的に改善されています。
エンジンの応答遅れは致命的でかつメンテ不足でのエンジンブローのリスクも高い上、ターボでは成立させるのが困難なことから速い人からも支持を得ています。
その2を扱う側の立場としては、この現場から支持を得るということが重要で、いくら優秀なアイテムを用意しても現場が否定すると採用が難しくなります。
現在アシストスプリング採用や機械式LSDのイニシャルトルクの低下などが少しずつ支持を得られるようになっていますが、これはタイヤの進化により認められるようになっただけで、タイムはタイヤに依存されており速く走れるようになる部類ではなくロスが減らせる部類なのでその2の対策です。
(タイヤがゴムと構造の変更で内輪が少ない荷重でもグリップして引っかかるようになったのが要因)
その2の対策を完了させておくと、スペックのレベルアップ=ベストタイムアップへ移行しやすくなります。
要するに不良品率10%以上、故障しまくりの機械の生産性向上で、動作時間2%短縮しても年間の生産性は1%も上がらないってことです。
なぜかというと現場の目標達成意識が低くなるからで、150台作れる設備でも不良や故障で100台しか出荷出来なければ、目標(ノルマ)は100台になって平均で102台作ることは出来ません。
それが心情ってものです。
相手は機械のようで実は操作する人の心情で結果は前後してしまいます。
105台の能力の設備で現状値100台を時間短縮で102台にするほうが圧倒的に簡単なのです。
なのでまず不良と故障を減らし、目標がイメージ出来てからスペックアップなんです。
ALTのコースレコードは27秒5くらいですが、ここにどれくらいの見えないロスが含まれているのか。
それが知りたかったんですよね。
おおよそ350ps、1050kg、空力70%(←私の独自指標)のFRで出せてますから、もうちょっとありそうなんです。
乗り手のロス対策の正確性がズバ抜けてますので全くない可能性もありますけど、計算上はもうちょっとあると思うのです。
その2の出来栄えを評価するのに、速い人が簡単にクリア出来る領域では良い仕事と呼べません。
速い人でもスペックにリスクを感じる領域で、アイテムの機能を実証していく必要があります。
そうでないとロスを明確にとらえて、ピンポイントで弊害なく対策したとは言えないのです。
最後のロードスターでやろうとしてたスケジュールとしては、2011年4月に28秒6でしたが、その1年以内に27秒台にして、2014年中に27秒中盤、というイメージでした。
この時間軸が重要で、アタックの度に仕様を大幅にUPして、事前に宣言したとおりのタイムを毎回正確に刻んでいくことが大切でした。
決めた時間内でのエンジン最終仕様はターボなしで250psでしたが、これの見通しがハズレそうになってきたとこでモチベーションが落ち、資金の問題も出て、頓挫してしまいました。
再開は、やろうとしたことの時間的な表現が出来ないのでやることはないかもしれません。
ダラダラとやり続けてて、レコードを出した乗り手の時間軸を追い越すイメージが無くなった今、その価値が半減してる感じです。
タイヤも進化してますし、いくらでも結果の説明を覆す理由もあり、それだと27秒フラットを目指す必要もあります。
その2の立場の人間である以上、現場に支持してもらわないと意味がなく、乗りこなしテクニックなしでクルマの仕様のみで結果を出す必要がありました。
まあ、自分が納得できればやるもやらないも勝手なことですので、さすがにもう体力的に無理だなと考えてます。
9500rpm対応のエンジン完成、ファイナル変更、軽量化(~2011年4月11日)
304度カムでテスト走行1回(同4月18日)なかおのみ走行29秒245。
264度にカム変更してタイヤ新品、178さん半年振りで一発アタック5周のみ(同4月22日)
で28秒588。(なかおは29秒095)
普通これだとあと0.2秒以上の伸び代を想像しますよね。
でも、あってもあと0.1秒くらいです。本当です。これが限界です。二人とも納得してます。
なので2回目のアタックはしませんでした。
ちなみに事前宣言の0.1秒落ちです。
その2の立場の人であるならば、これがどういうことか分かってもらえると思いますが・・・
28秒6ってのは平凡なタイムで、やるやらないは別で、ここまでは誰でも出来ることですから、普通には説得力がないのです。
今の私の現場は会社であって、現場のレベルがもっともっと低いので、楽しみながら仕事してます。
先も長そうです。
会社の現場だと1秒で年1千万単位の効果が出たりしますから、みんな喜びますよ(笑