
さて、アメリカ出張から日本に戻ってきまして、感銘を受けたリンカーンMKZについて書こうと思います。
日本には全く馴染みのないリンカーンは、GMのキャディラックに相当するフォードの上級ブランド。最近では大型SUVのナビゲーターやクロスオーバーのMKXが輸入されていましたが、セダンのラインナップは正規輸入されていませんでしたね。フォードも撤退してしまったので今後は並行輸入でしかお目にかかれないブランドです。
そんなわけで雑誌で試乗記を目にすることも全く無かったわけで、レンタカー屋で受け取った時もまずは正体不明。(笑)
見た感じ大きさは結構大きくEセグくらい。(スペックを見たらEセグの王道サイズでした) リンカーンっていう位だから高級車・・・のはず。
荷物を積み込んで乗り込み、フル電動のコントロールでシートとステアリングを調整・・・。基本的にはすぐにバッチリポジションが出るけれど、ヘッドレストの角度はイヤにキツく頭が前に傾けられる。つまりもっとバックレストを寝かすことを想定しているみたい。さらに寝かせて、どうやらこれが想定ポジション。
走り出そうとすると、シフトレバーがない・・・
そもそもエンジンスタートのボタンの在処も分かりにくかったけど、シフトはコラムにもフロアにもない・・・。
・・・あった! ・・・て何コレ・・・
MKZのシフターはボタン式。センターコンソールの左側に縦にボタンが並んでいる。ブラインドでの操作など全く考えられていないデザインに萎える。
iPhoneでGoogle mapを設定し、とりあえずスタート。
パーキング内を走り出すだけで、このクルマは自然なインターフェースを持っていることが分かる。ステアリング、スロットル・・・。ブレーキだけはちょっとサーボが効き過ぎる。
サンフランシスコ国際空港を出るとすぐに US101号線という高速に乗る。101はインターステートではないものの、構成的には典型的なアメリカの高速で、片側4-6車線。流れるスピードは速く、追い越し車線では80mph前後になります。路面は基本的には綺麗ですが、所々煽られるようなギャップもあり、サーフェースが少し粗い。だからどのクルマで走ってもロードノイズが結構大きくなる傾向です。
MKZがまず素晴らしかったのが乗り心地。これほど当たりが柔らかいクルマに近年乗ったことがありません。最初はエアサスかと思ったほどですが、停まって見てみれば金属コイルスプリング。しかしギャップというギャップを綺麗に丸め、いなし、まるで路面が綺麗になったかのようです。メルセデスEクラス、BMW 5シリーズなんかよりも数段当たりは柔らかく、イメージは一昔前の6気筒以上のクラウンに近いかも。非常にたっぷりとしたストローク感で、長くストロークしてもバンプラバーに当たる感じがしないです。ダンパーもとても緩く、大きめのバウンスは一度で止められず2回ほど揺すられるケースもあります。それでも快適至極。ドイツ車の価値観ではバウンスを1発で止めるのがヨシとされていますが、こういうのも全然アリですよね。
となると、アメ車の常としてはステアリングがユルユルで走らせにくかったりするのですが、これがまた正確。ギア比はスローなのですが、遊び自体は少なくゲインが低い。でもセンター感はある。路面の状況はサスが柔らかいので伝わりにくいですが、でもいわゆる微舵領域の反力が適切なので、とにかく真っ直ぐでも高速のロングコーナーでも進路をコントロールし易い。また、これほどサスペンションが当たりが柔らかくストロークをさせる脚でも、リアのバンプステアが少ないのです。だからストローク変化で蛇行することも少ない。この辺が単に緩いクラウン辺りと違うところだと思います。(最近のクラウンは知りませんが)
そんな足周りとステアリングの組合せですが、ワインディングに行っても綺麗に走らせられます。日曜日にナパとソノマのワイナリー巡りをしたのですが、ソノマのスプリングマウンテンなどは椿ライン並のタイトさ。(笑) しかも路面はメチャクチャに荒れています。
そんなところでも乗り心地の素晴らしさはそのままに、4.9m x 1.86m のクルマをコントロールし易いのですから素晴らしい。ステアリングが正確なので思った通りのラインに乗せられます。思ったより曲がるとか、曲がらないとか、一切ナシ。ロール自体はもちろん大きいので、クイックに切り返すと車体がついてきませんが、それでもかなり狭いスプリングマウンテンで地元のMINI COOPER Sを追いかけ回せたのですから、相当なものです。
シャシー周りで難点があるとすると、ダン!と角のある段差を超えた際に、リアが左右に並行移動するような挙動を見せるところでしょうか。乗り心地重視の大容量ブッシュに起因すると思われますが、もしかしたらそもそもの横剛性が足りないのかもしれません。でもコーナリング時に剛性が足りないとは感じないので剛性というよりはブッシュなんでしょうね。
エンジンは2Lのエコブーストでした。まぁレンタカーですし・・・。247ps/300Nm。トルクもあり、パワーもそこそこ。遮音が効いているので4000rpm以上回さなければ存在感がほとんどありません。スペック上はトルクはドイツ勢と変わりませんが、体感的には一回り上のトルク。でも黒子に徹するタイプです。回して楽しいわけでも無く・・・。
と、ここまでは良いことばかり書きましたが、2016年のEセグとして商品性は結構厳しいかも。それは何よりインテリア。各所が樹脂感まる出しでソフトパッドですら使われていなかったりして質感が低い。(これはレンタカーだからかも)そして最悪なのが操作系。ステアリング、ウインカー、ワイパー以外はブラインド操作が全く無理。(苦笑) 空調、オーディオもクラスター上のタッチコントロール、インフォテインメントも画面タッチ。インフォテインメントの操作ロジック・階層も全く分かりにくい。
そして個人的に致命的なのはシート。まずはアメ車と思えない程小さい。Cクラスよりも小さい。
そしてバックレスト形状が腰に合わず、何となく隙間が出来る感じ。
そんなリンカーンMKZと1週間付き合ってみて、インテリアのデザイン、質感はちょっと受け容れ難いのですが走らせたフィーリングは素晴らしいものでした。ドイツ車とは全く違う価値観なのでしょうね。超高速域を捨てられない、というかそこに価値感を置くドイツ車ではこのようなセッティングは出来ないのでしょう。でも超高速域での難点さえ飲み込めればこのMKZの走りは素晴らしい。
今のままではちょっとアレですが、ドイツ車のオルタナティブとしてこれなら将来愛車にする可能性も充分あります。今後もアメ車に乗る機会があれば乗っていきたいと思います。
※ 9/24 追記
MKZはMY2017で大きく改良されており、フロント周りのデザインが一新された他、インテリアは空調やオーディオの物理的なコントロールが採用されました…。やっぱりダメだったんだな、アレ。でもシフトボタンはそのままらしい。
ブログ一覧 |
クルマ | 日記
Posted at
2016/09/23 15:26:58