ところでカーナビですが、レンタカーということもあって大きな画面こそあれ、ナビは用意されておらずApple Car Playで接続してナビを使っていました。しかも、Google Mapが使えたんです、Apple Mapじゃなく。もうホントこれで充分どころかこれがベスト。行きたいレストランだって店の名前を検索するだけだし、クルマに乗る前に検索しとけば繋いだだけで目的地が表示され、画面上の「出発」をタッチするだけ。何十万もするナビなんて要らないです、ホント・・・。ナビメーカーは商売に困るでしょうけど。
とにかく低速トルクの厚さが印象的でしたが、意外にも上も回ってレッドまで綺麗に回っていた印象です。ボアxストは85.0 x 88.0とこれもロングストロークだけど、これでもルノーF4Rに比べれば全然ショート。だから意外に上まで回る印象なんだと今なら思いますが、当時はとにかく速いという印象でした。その後私はBG5レガシィを買うわけですが、逆にEJ20のトルクの薄さと強烈な谷、ターボラグの大きさにショックを受けましたw。当時のEJ20は上が回ることは回るのですが、レガシィではあの排気量でA/Rの異なるターボを2つ組んでシーケンシャルツインにしていたんですが、今思えばショートストロークの基本特性は如何ともし難く、全く持ってピーキーな特性だったんです。そういうこともあって、4G63はいまだに凄いエンジンだったという印象が強いです。ただ、速いことは速いエンジンだったけど面白かったかと言われると・・・そうではなかったと思います。当時のロングストロークのターボだから弾けるように回るという感じでもないですし、音の印象が大きい気もしますけど。Gr.A仕様でもデルタやセリカと比べても一番冴えない音でしたし、そういう素性なんでしょう。その後CE9AランエボⅡにも結構乗りましたが、基本的な特性は当然同じ印象でした。
私はノーマルしか知りませんが、何しろ基本設計が70年代に遡るという鋳鉄ブロックだったので、RB26と同様にとにかく頑強でチューニングベースとして十分耐えうるポテンシャルを持っていたのも素晴らしいと思います。何しろ4G63のチューンドは400psどころか500psを超えるのすら珍しくないようですが、ボアもストロークもUPして2.4リッター化し、そこへ1.8kgf/cm2とかのブーストをかけるとか・・・。相当ブロックに余裕があるんでしょうね。(500psを超えるのは耐久性が犠牲になるようですが・・・。)ただその分重かった。ギャランは何しろ曲がらないクルマでしたが、4WD技術、シャシー設計がまだ未熟だったのもあるとは思いますが、ロングホイールベースのフロント先端に鋳鉄ブロックの重いエンジンを積んでいたのも曲がらなかった理由だと思います。エボ2で急に曲がるようになって、これはこれでかなり驚きましたが・・・
この分野ではカワサキが圧倒的な強者だったのですが、そこへ「量産市販車世界最速」という超シンプルな目標をコンセプトの一つに掲げて開発されたモデルでした。この世界最速というのは1999年にスズキGSX1300Rハヤブサがリリースされるまでの短期間でしたが、実は最速だけでなく上質さも狙ったのがCBR1100XXでした。このエンジンのスペックをクルマと比較しても当然意味がないのですが、164ps/9500rpm。ボアxストは79.0 x 58.0。レッドラインは10800rpmでした。最新のCBR1000RR-Rが1000ccで15000rpm近く回して217psも出すことを考えるとかなり大人しい感じがしますが、当時は最速でした。
このエンジンの特徴は、優等生とも言われるホンダらしい綺麗なトルクカーブ、直線的に伸びていきつつ最後に盛り上がるパワーカーブ、そして実は振動特性を最適化するためにバランスシャフトを組んでいる点です。基本コンセプトがサーキットを走るスーパースポーツではなく高速ツアラーであるため、速さだけでなく快適性にも配慮しているんですね。ライダーが振動を感じないようにするだけならスズキがハヤブサでやったようにハンドルやステップをラバーマウントしてしまうなどの方法もあるのですが、ホンダはそれによる操縦フィーリングの悪化を嫌い、ダイレクトマウントを前提にエンジン自体の振動を減らすようにしたんですね。(実際ハヤブサのハンドル・ラバーマウントはちょっと気持ち悪い)
83.0 x 92.0というロングストロークからC63では476ps 650Nmを出します。エンジン設計の一部はA45のM133を踏襲しておりボアxストも共通です。M133では8.6という低い圧縮比で1.8barという凄いブーストをかけていますが、M177では圧縮比を少し高めの10.5としてブーストは1.2barに抑えており、こういったこともあってA45のレッドライン6700rpmに対して排気量がより大きいこのV8の方が7200rpmと高回転型になっているのは興味深いところです。ちなみにC63ではシングルスクロールのツインターボですが、E63になるとツインスクロールのツインターボになります。基本となるクランクケースなどはかなり高強度な設計がされており、クランクケースはアルミ砂型鋳造でクローズド・デッキ。そこへさらにかなり念入りにビーム類が入れられおり、相当な強度耐性があることが分かります。ヘッドは放熱性を狙ってアルミ・ジルコニウム合金、ピストン、クランクシャフトとももちろん鍛造で、クランクシャフトはクロスプレーンです。YouTubeでアッセンブリーの光景を見ることが出来るのですが、組まれているパーツ一つ一つが何しろ高そうw。
BMW S65B40(E90 BMW M3)
まずはBMWのMですね。Mシリーズとしては最後のNAとなってしまったV8です。
このエンジンは流石Mという気合の入ったエンジンで、エンジンの造りはほとんどチューンドエンジン。因みにM5のV10、S85と一部設計を共有していました。ボアxストは92.0 x 75.2というショートストロークで排気量は4リッター。出力は420psを8300rpmという高回転で絞り出します。(レッドラインは8400rpm)クランクはクロスプレーンですが、ファイアリングオーダーを振動の少ない通常の1-5-4-8-6-3-7-2ではなく、パワーを狙って1-5-4-8-7-2-6-3としています。またスロットルは独立で4連スロットルx2。エキマニもノーマルとは思えないシビれるほど凝った造りの等長で、吸気ポートは鋳肌のままではなくポリッシュされています。(ミラーフィニッシュではないけど)
このエンジンは実に良かった。こういう気合の入った造りのエンジンなのでとにかくパワーだ高回転だ、ということかと思いきや、なんとびっくりむしろコントロール性と踏める特性重視。もちろんリッター100PSを超えるエンジンだから高回転型なんだけど、ホンダTypeRのように二次曲線的に盛り上がるカムに乗るフィールではなく、もっとフラット。だからパワーがあるのに踏みやすい。そして独立スロットルらしい素晴らしいレスポンスだから、コントロールも絶妙にやりやすい。音はV8から想像するドロドロとした音ではなく、むしろクリーンな軽めの音で高回転ではクアーーン!!と叫ぶような本当に抜群に良い音。そして、低中回転域ではファロロロロロロー・・・というとても軽くて心地良いハミング、回り方をするんです。こういうエンジンなので試乗レベルだとちょっと本質が分かりにくい。ジャーナリストですら踏むだけ、パワーだけで判断しようとする。まぁMなんでそりゃしょうがないとも言えるけど、清水K夫氏のM3試乗時の有名な「ダメだこりゃ〜、340iだこれじゃ〜」なんていう発言は典型例でして。でも本質は、シャシーやハンドリングをとことん楽しませるためのエンジンなんです。そしてそこには音を含めて味わいまである。これが名機じゃなくて何なんだ!M3にターボなんてナンセンスだ!と元オーナーは思うわけですが、M3の歴史上ではV8の方が異端児なんですよね。しかもE90/92系にしか載らなかったので、デリバリーされた絶対数が少ない。だからあまり名機として浸透していないんですが、2008年から2012年まで5年連続でInternational Engine of the Yearにも選ばれてます。そういえばこのキャラクター、ボクスターのMA122とかなり似ていると思います・・・。
Renault F4R(Renault Lutecia RS2.0)
次はルノーの直列4気筒2リッターNA。F4R自体はかなり長い間ルノーの主力エンジンで、クリオ/ルーテシアやメガーヌ、ラグーナといった主力車種はもちろん、エスパスやシーニックにも積まれていました。ここで挙げるのはそういう普及仕様ではなく、ルーテシアRSに積まれていたF4R730と呼ばれる仕様です。
このエンジンは、所謂ルノー・スポール製・・・というよりは、当時ルノーのF1エンジンを手掛けていたMecachrome社がチューニングしたエンジンなんです。元が実用車の一般エンジンなので、ボアxストは 82.7 x 93.0という典型的なロングストローク。これが例えばラグーナに積まれている仕様だと135ps程度なのですが、これに可変バルタイシステムを追加し、吸気ポートは手作業でポリッシュ、エキマニは4-2-1化などを行うことでF4R730では172ps/6250rpmまでチューンされていました。素性からいっても高回転型じゃないんですが、これが速かった。何しろルーテシア2 RS2.0の車重はたったの1050kgで、おまけにサイズがロードスターよりさらに小さかった。(LxWxH = 3770x1670x1410) 今のAセグ程度のサイズと重さにチューンした2リッターだからトルクが過剰なんですね。だからどこから踏んでもトルクが太く、そしてロングストロークでピストンスピードもかなり速いのに結構気持ち良く高回転も回るという・・・。そんなクルマだったのでワインディングではメチャクチャ楽しかった。エンジンもハンドリングも最高でした。凄くテールハッピーな日本車じゃあり得ないセッティングでした。