クルマとバイクに関するお気に入りの本を2冊ご紹介します(^^)
福野礼一郎氏の「極上中古車を作る方法」とロバート・M・パーシグの「禅とオートバイ修理技術」です。両著作とも高い評価を受けている作品ですのでご存知の方も多いでしょうが、一読の価値がありますのでご紹介させていただきます。「極上中古車を作る方法」は福野氏が購入したロールスロイスのレストアの模様を追ったルポルタージュです。その内容はロールスロイスを題材としたレストア作業を通じて自動車設計技術・生産技術をリバースエンジニアリングしていくような展開であり、いわゆるハウツー本とは一線を画した秀作だと思います。「禅とオートバイ修理技術」は電気ショック療法で記憶を失った元大学教授が心を閉ざしてしまった息子と共にオートバイの旅をし、その過程で喪失した記憶や人間関係を取り戻していくという物語です。小説の文法を用いた哲学書とも言うべき作品ですが、ロードムービーを観るような娯楽性も兼ね備えています。
「極上中古車を作る方法」について、福野氏は下記のように語っています。
こんなふうに言われてしまったら読まずにいられません(^^)
quote
モノづくりの素晴らしさやそれに関わった人々の偉大さを切々と語るのが今のマスコミの流行りである。モノを作ってたくさん売りたい製造業の思惑とも100%一致しているから取材協力も得やすいしスポンサーも付きやすい。かくいう私も4年をかけて国内自動車部品メーカー41社を歩き、その取材ルポを2冊の本にまとめたりした。
だが、モノを作るのと同じくらい、実はそれを運用し管理し維持し、整備・補修するのも重要なことである。また、作られたモノやその技術を後世に伝え残すのは我々の文明の義務である。ところがこちらはいっこうに流行らない。創造が人間の偉大な特性なら、破壊もまた人間の本性だからである。
自動車メーカーの博物館とやらに行ってみれば、並んでいるのはユーザーから寄贈されたポンコツか海外から買いあさってきたクラシックカーばかり。まともに維持され保管されてきた過去の自社製品など1台も無い。
モノは次から次へと作るけれど、作ったモノは大切にしない。昨今話題の欠陥車問題の本質の一端はこういうところにもある。
古い中古車を買ってきてガレージの中で1年かけてコツコツ自分の手で直す。本書の内容はそのルポルタージュである。そういうことをやったからといって直ったクルマが別に高く売れるわけではない。要するにオタク・マニア向けの趣味の本なのだが、モノ作りの本を書いたというなら、こういう本も書かなければいけないと思った。
それを残す努力をした人々がいるから東大寺は今も建っているのだ。それを残す努力をせず破壊の本能のままに放置したから偉大な無数の文明が永遠に失われてしまったのだ。出来上がったのはオタクっぽい本だが、私は全然そう思っていない。
unquote
(フジサンケイビジネスアイ 2004.6.26「著者が語る」より抜粋)
この本を購入する切っ掛けとなったのは15年位前に図書館での出会いでした。ユニークなタイトルが目を引いたという単純な動機だったのですが、読み始めるとすぐにハマってしまいました。貸出期間内に読了したものの1度読んだだけでは内容を咀嚼しきれず書店に注文。以来、何度も読んでいる私のお気に入りの1冊です。再読、三読に耐える書籍に出会える機会はそうそうあるものではないのでラッキーでした(^^)
ボクのささやかな読書歴の中でもベスト5に入る本であり、人生観にも大きな影響を与えました。
良書ではあるものの2800円と高価だし、書店に置いてあることも少ないので廃刊になってしまったのかと思いきやハヤカワ文庫から上下巻各780円で販売されているようです。ご興味のある方はぜひ
読んでみてください(^^)/
Posted at 2012/02/05 11:39:37 | |
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