
「ベストカー」で全力ダッシュをしていた時代、作家の五木寛之さんを中心に、徳大寺有恒、黒沢元治、舘内端といった面々と、ぼくがマネジャー役で『風の仲間』を結成、鈴鹿サーキットでシビックレースや、シティブルドックレースを楽しんだ後、マカオGPに遠征するなど、相当に暴れまくったものだ。
それから25年がたって、再び「風の仲間」の夢が実りそうだ。ずいぶん前から本格的に紹介したくてウズウズしていたけれど、その主な展開舞台となるWebマガジン『Car Eyes』からようやくOKが出たので、この際、夢の正体を洗いざらいに披露したい。
*髭面の五木さんは珍しい(鈴鹿8時間耐久レース観戦)Photo by さいとう さだちか
それはちょうど1年前にスタートしていた。五木寛之さんと、例の東京プリンスホテルでお目にかかっていた。『小説 親鸞 激動篇』の新聞連載執筆中だから、なかなか時間が割けないのを承知で、昔の誼(よしみ)で無理をきいてもらった。
1Fのティルーム「ピカケ」。出迎えてくれたウェイトレスに「五木さんと待ち合わせです」と告げると、「うかがっています。どうぞこちらへ」と左奥の席へ導かれた。編集者の現役時代、何度この席で談笑したことだろう。懐かしさを噛みしめていると、背後で五木さんの明るい声。
「しばらくでしたね」
例の背筋をピンと張った姿勢はいくつになっても失われていない。ミルクティとサンドイッチを注文。これも変わっていない。しばらく、お互いの近況を確かめ合ったところで切り出した。「もう一度『風の仲間』を復活させましょうよ。その活動の基盤として、ベストカーで連載し、単行本にもなった『疾れ! 逆ハン……』を私の手で、電子書籍として生き返らせてほしい」と。
*第1部と第2部は、只今、課金なし。ぼくの「リトルマガジン」は必読なり。
すでに絶版となってから久しいから、気になっていた、と五木さん。作品の電子書籍化については『親鸞』で、作家の中でも先鞭をつけた立場にあるから、ぼくなんかより、電子Bookに関する知識も進んでいる。アップルストアの仕切りに平伏している出版界の現状も、とっくにご存じだった。
「いいですよ。クルマに関する私のものを使用すること、それに異存なし。存分にゲリラ活動をしてください」
力強いレスポンスだった。かつて展開した「フィーリング試乗」の連載や、「メルセデスの伝説」を、徳大寺さんや成江淳さんと目白・椿山荘で徹底的に、その内幕を語りまくった座談会なども、ぜひ今の時代で読み返してみたいね、とも。
条件も付いた。ご自分の作品すべてを、いつでも、どこでも読んで貰えるシステムを考えているから、その一環を担ってほしい、と。ついては、電子書籍にするための作業とか、運営に経費もかかるだろうから『疾れ……』に関しては、すべてを無料で読んで貰えるのは無理にしても、少なくとも、全15部のうち、第1部と第2部は無料にしてほしい、と。
こうして船出した『風の仲間』の新しいプロジェクト。「トクさん」こと、徳大寺さんは『間違いだらけのクルマ選び』(草思社刊)を全巻、電子ブック化するほか、近作『指さして言う TOYOTAへ』(有峰書店新社刊)もリストに加えてくれた。
「ガンさん」こと、黒沢元治さんは10年前に出版し、その後も版を重ねている『ドライビング・メカニズム』(勁草書房刊)を、WEBマガジンでなら動画表現もできるから、それ用に化粧直しをしよう。その上で、それをテキストブックとした実技指導の「アカデミー」を開講しようではないか、と。
「タテさん」こと、舘内端さんは只今、EV車の巨匠で、絶好調男。近々発刊予定のEVに関する単行本はもとより、EV車に取り組む原点となった『2001年クルマ社会は崩壊する』(三推社刊)『すべての自動車人へ』(双葉社刊)の電子書籍化を引っ提げて、かけつけてくれた。
これで「カーガイ」(クルマ野郎)のための「宝石箱」つくりの素地は用意できた。あとは内容の練り上げと、プラットホームとなる『CAR EYES』のレベルアップであった。取り組み当初、アップルのiPad、iPhoneで読めるようにするのは当然で、ドコモやAUのモバイルでアンドロイドアプリからも入れるようにして、9月の段階には、ひとまずパブリック・オープンするところまで漕ぎつけたのである。
さて、『疾れ! 逆ハン……』に関するぼくの新しい取り組みは、1話ごとの各パートに登場するクルマたちを素材として、その当時のエピソードを記録しておこう、というのだった。たとえば、第1話『深夜特送車 No.1』を読みおわったところで「コーヒー・ブレーク」がわりに、ぼくのエッセイや、徳さんのアルピナB7のインプレションやらで、立体的な情報強化を提供するという試み。骨は折れるが、楽しい作業だった。
*マカオGPに遠征した時の「風の仲間」。右端で首筋だけが映っているのがタテさん(1986年)
ところが、である。オープンしてみると、いろいろと予想もしなかった齟齬がでる。こうなればもう一度基本から構築し直すしかない。それならばいっそ、PCでも見ることのできる「専用ブックリーダー」を用意しようではないか。その間にタイトルも増やし、専用本棚の充実を図ろうではないか。『疾れ!』でいえば、第6部「海外編・香港マカオ大爆走」まで仕上げることができたのである。
PCは「Mozila FireFox」のプラウザで閲覧できる専用リーダーを開発することでOKとなった。細部の検証もクリアーし、フロントページも大改修して「CAR EYES」は、3月1日オープンと相成った。講釈は次に譲るとして、まずは新しくなった「CAR EYES」
https://car-eyes.info/eccube/
から、『疾れ! 逆ハン……』の痛快アクションロマンを楽しんでいただいたのち、必ず付録してある「五木作品に登場するクルマたち」の章を開いてほしい。そして、ぼくら「風の仲間」の夢の正体に触れてほしい。
そのあとで、それぞれの声を、ぜひ、ぜひ聴かせていただきたい。お待ちしています。
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「疾れ!逆ハンぐれん隊」へようこそ | 日記
Posted at
2012/03/01 14:24:13