「平成」が「令和」と移っていく時期に、頸椎の切開手術を受け、ひたすら近くの区営スポーツジムで30分間のランニングマシンで足腰を鍛え、30分間のストレッチ体操で股関節の衰えを復活させることに専念していた「1936年生まれ」に、果たして対応出来る注文だったろうか。
3月3日にその第1回=『ドライブ・マイ・カー』とサーブ』が公開され、つづけて3月24日に『ボルボ122S・アマゾンとの幻の再会』、5月10 日に第3回の『人生の苦さと喜び、たそがれ色のシムカ』が
第1回の「サーブ」については、車雑誌関係の僚友・飯嶋洋治さんから感想をいただいた。
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今朝、白樺のエンブレムを読み直し、改めてあなたの記事を拝読いたしました。
白樺のエンブレム執筆のバックグラウンドが良くわかり興味深いものがありました。
五木さんから徳大寺さんへのメッセージや報告会のやりとりなど、雨の日には…をこれから読む人や、すでに読んでいる人にも奥行きを加える記事なのかなと思いました。
個人的には正あなたのサーブ900ターボのロングランのくだりを詳しく読んでみたいように思いました。
*試乗会で飯嶋氏と。
考えてみれば、あの小説が書かれた時代はバブルの初期で北欧のサーブやボルボは、BMWやアウディなどに比べると大分地味な感じがあったのを思い出しました。
五木さんは、そんな時代背景を敏感に察知して、あの小説を書いたのだということを再確認させられました。まさか当時はサーブが無くなるとかボルボが中国メーカー傘下になるとは想像できませんでした。
蛇足的な感じですが、五木さんはスポーツカー好きだけでなく、サーブ96やボルボアマゾン、シムカ1000など、けっこう大衆的というかカッコ良くない車への愛着も大きいようですね。私もあまりスマート過ぎるより、ちょっと不格好でもどこか惹かれることがあるクルマを好きになることが多いので、どこか共感できます。
さらに蛇足ですが、シムカ1000は、雨の日…のたそがれ色のシムカと、ユニコーンの旅に納められた、夜の世界と私の知る限りでは2度異なった設定で出てくるので、かなり思い入れがあったのでしょうか?
ユニコーン…ではプラハの春遠くなどを読むとウクライナ情勢なども重ね合わせてしまいます。
この辺も含めて、連載を興味深く拝読させていただきます。
ドライブ・マイ・カーはまだ未読、未視聴なのでこれを機に見てみたいと思います。 飯嶋洋治
この応援エールはジーンと心と体に、熱く滲みた。そのせいもあってか、各回の執筆に当たって、足取りも軽く、あちこち、取材に足を運んでいる。限られたスペースなので大胆にカットした話も多い。例えばアマゾン122Sのモデルとなった女優Kの話とか、シムカ1000の舞台となった「日本のカルチェラタン」駿河台界隈を、いま歩いてみてのレポートとか。
*ニコライ堂
*アテネフランセ
*シムカ1000
さらに付け加えれば、」第3回「たそがれ色のシムカ」の書き出しは、こんな話から始めてみたが、読み手にもっと軽い気持ちで入ってもらいたい、という想いから、あえてカットしたが、もったいないので、当欄で収録しておきたい。
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世界の名車シリーズの手はじめとして『メルセデスの伝説』を1985年に刊行し、一息ついた五木寛之は、次にとりくむ幻の超高級乗用車イスパノスイザ(スイス人技師を招いてスペイン・バルセロナで創業)のエンジン音を、二玄社から出ている名車シリーズのLPで聴きながら、その華麗なサウンドに浸っていた。登場人物も、フランコ将軍、ムッソリーニ、ヒトラー、スターリン、久生十蘭、横光利一、ピカソ、その他もろもろの実在の人物が頭の中に渦巻いて、そのからまりあった糸をときほぐすことに熱中していた。
当時、ベストーカーに5年間にわたって連載した『疾れ!逆ハンぐれん隊』を舞台に、折にふれ《I T S U K I’S V O I C E》というパーソナル・コラムを特設し、作者としての動静とか、その折々の車への想いを漏らしていた。
「その上に、《月刊カドカワ》という小説誌で、連作小説『雨の日には車をみがいて』というシリーズの連載がスタートした。第一話は〈たそがれ色のシムカ〉。
一九六〇年代のなかばに舞台を設定して主人公の車遍歴と恋の思い出を回想する物語である。ちょうどビートルズが武道館にやってきて、スパイダーズの《夕日が泣いている》が流行したエレキ・ブームの時代だ。
すでに二十年も昔のことだが、当時はまだいすゞの117クーペさえ市場には出ていなかったことをなつかしく思い出す」(1986年7月10日号所載)
残念ながら、いまだに《イスパノ・スイザの伝説》が書き上がった気配はない。しかし『雨の日……』の方は1988年夏に角川書店刊で単行本化され、さらに32年近くが経って、今度は幻冬舎からの改訂新装版が手元に届けられたわけだ。
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それらを紹介していくつもりで「新人ライター 渾身の第2球」と大袈裟なタイトルを用意した。次回からはその辺を、じっくり掘ってみたいという「予告」と受けとっていただければ、ありがたいのだが・・・。