〜PREMIUM版パート9付録企画からの「贈り物」〜
ちょうど1ヶ月前に『ベストカー』で、1ページをまるまる使って紹介してもらった「五木寛之先生の痛快カーアクションロマン『疾れ!逆ハンぐれん隊』の電子書籍PREMIUM版」に、また新しいパートを補充することができた。
本編の小説セクション『Part.9 バンドー先生の逆襲』は、ジロー、ミハル、竜さんの逆ハンぐれん隊をスポンサーとして支えてきた、漫画家・バンドー先生が廃業宣言することからはじまる。そして真紅のフェラーリ・テスタロッサの助手席に竜さんを押しこむと、自らがハンドルを操って高速道路を目指す。それまで時速5キロ以上のドライビングをしたことのない先生が200キロオーバーの世界へ!
*新しく登場したPREMIUM版 PART.9 [バンドー先生の逆襲」はこちら
そしてはじまる4人の、修学旅行さながらの冒険の旅。新しく仕立てたスーパー4輪駆動車のゲレンデ・ヴァーゲンで西へ向かった。舞台は奈良・大和路。美しくも妖しい二上山に秘められた一千年の謎とは……。逆ハンぐれん隊がタイム・スリップして見たものとは!
五木さん独特のエンターテインメントの味は、今もなお生き生きとわたしたちを魅了してくれるが、今回はとくに「PREMIUM」として用意した4つの「挿入部」にも、特色を持たせたつもりである。
まずは連載スタートから第5部まで、国内を舞台にしてさまざまな事件や出来事に遭遇しながら、クルマとともに青春をたくましく生きていく『逆ハンぐれん隊』を、次の6〜7部で海外に飛ばした後で、しばしの休息を与えていた。そして次の連載再開までの幕間(まくあい)で、作家・五木寛之の「クルマを描く心構え」を率直に吐露している珍しい「独白」。それをたっぷり聴ける仕掛けとした。それが4部構成となっている「PREMIUM」版の①部と②部で、
① 連載ひと休み…幕間からの本音
クルマを書く心構えについて
② キミをきっと小説好きにして見せる!
「メルセデスの伝説」からの招待状
そのあとは、かねてから取り扱いを狙っていた「スープラ&フェアレディZ ハワイ特別試乗記」を投入できた。今年初頭に、こんなふうに触れていた、この部分である。
――ヨーロッパから帰国して一息ついたところで、また五木さんを熱く誘惑したものだ。五木さん、ハワイでなら、ジャパニーズ・スーパースポーツとして登場したばかりのTOYOTAスープラを味見できますが、いかがですか、ハワイへいきましょうよ、と。
「いいね、ついでに北米仕様のフェアレディZXターボも用意してください」
「あ、よくご存じなンだ。それもいいですね。やってみましょう」
決めた! 2002年に「排ガス規制」への対応ができないため、累計28万5280台の実績を残して生産を終えた、あのスープラへの挽歌を、ぜひ本編に添えるとしよう。そして、その次の回でオアフ島を縦断した『ZXターボ』の試乗記も……。
それが今回、やっと実現した。こんなタイトルで!
③ 疾れ! 汝の名はジャパニーズ・スープラ
――五木寛之フィーリング試乗 in ハワイ 第1回
④『ダッツン・ジー』に死ぬほど憧れてみたいか?
――五木寛之フィーリング試乗 in ハワイ 第2回
ぜひぜひ、また一つ、新しく輝く星を加えた
「ぽらりす eBooks〜クルマ仲間名作ガレージ」へお立ち寄りいただきたい。
この作業を終えたところで、妙に心が浮き立っているのに気づいた。『スープラ』という名の悲運のクルマ。その走っている姿にあってみたくなっていた。‘80年代終盤から、’90年代序盤にかけて「ジャパニーズ・スポーツカー」の代表としてTOYOTAスープラは、生き生きと先頭を走っていたではないか。
そのあと、NSX、GT-Rが追従して賑やかな時代へと爆走していくわけだが、それはまた、ベストモータリングの創刊された時期でもあった。
さて、どの号でその頃のスープラに逢うことができるのか。生憎とこの数年「断捨離」を迫られていることもあって、ベスモのVHS入りのパッケージは整理してしまった。行き先は「ベスモ同窓会」のプレゼント景品だったから許されるとして、一目で「どの号に何が掲載されているか」を知る手がかりは、すっかり消滅していたのである。
幸い、自分が制作・企画に関わった号だけは、VHSからDVDに変換して、コンパクトな形で保存してあった。
記憶をまさぐった。たしか創刊1周年記念号の前後に「漆黒のボディカラー」で谷田部の高速バンクを悪魔のように走り抜けたあいつが潜んでいるはずだ。
*そのころ北米ではセリカXX2800GTの名で販売されていたスープラ。
まず、1989年新年号をピックアップして、PC内蔵の再生機にセットする……。
目次ページが軽快なメロディーに乗って紹介されていく。
お、まずガンさんだ。NEWレジェンドV6Tiエクスクルーシブの「TEST&MOTORING」。続いて「海外取材from ITALY ピレリの“聖域”を初公開!! by 徳大寺有恒」か。ピッと記憶を刺激するものがあった。申し訳ないが、エビスサーキットと磐梯吾妻ラインでのガンさんTESTコーナーは早送りして、先を急いだ。
*ドライバーは大井貴之君。ベストカーから移籍してきての海外初取材。初々しかった。
この時期のベスモはCM満載。日本交通公社の30秒ものが終わったところでアルプスの山肌を縫って駆け下りて来る赤のアルファロメオ164 V6に、チェロの弦の低音が響きながらシンクロする。スイスとイタリアの国境、セント・ベルナルドを超えたところで牛の群れに行く手を阻まれるシーン。今もなお、鮮烈に記憶していた。
行き先はミラノ郊外にあるピレリタイヤの『ヴィッツォーラTEST TRACK』で、案内役を徳さんにお願いしていた。
全てが自然を生かしたテスト環境で、走行路には風に吹かれて、落ち葉が舞っているし、路面もごく一般路に近い、鈍い光沢をもっている。
徳さんもお気に入りの「聖域」であった。3度目の訪問だという。
「ここは考えられるすべての道路のパターンが収められている。一般の人が一般路を走るような状態でテストできなければ、生きたタイヤは開発できないから、という思想を貫いているからね」
その先進の思想とテクノロジーに共感させられた取材だったが、そこでデビューしたてのスープラが、すでにここのテスト車両に採用されていたのを知り、スープラの立ち位置を直感したものだった。
テストシーンはP700-Zでウェット限界を走る姿を捉えていた。
BMW-M5にはじまって、300E—AMG、フェラーリ328GTS、ランチアテーマieターボ、サーブ9000ターボ、ポルシェ911ターボ、フォードシエラコスワースがつぎつぎと顔見世をし、最後に白のスープラ3.0 GTターボがウエットハンドリングコースを、ひらりひらりとこなす晴れ姿で締めくくっていた。
こうなると、もっとないのか、と捜索の手を広げたくなるではないか。で、発見! 3号を遡った1988年の10月号こそ、わたしの脳裏に焼きついていた「黒のスープラ」の躍動している号だった。
表紙パッケージもそれ! 題して『激走対決 トヨタvs.日産』。
スープラはその特集の中で特別扱いで『独占試乗 国産最強270ps 最高速253.5km/hをマーク‼︎ スープラ3.0 GT-turbo A全開フルテスト』と、ある。
これは改めて「ベストモータリング公式チャンネル」にお願いして、You-Tubeで鑑賞できるといいのになあ。
(この項、次回更新まで)