覚えておこう!ジャッキの正しい使い方

2021年12月22日

スタッドレスタイヤ交換 ジャック パンタグラフジャッキ

季節の変わり目はスタッドレスタイヤへの履き替えなどを含めてジャッキでクルマを持ち上げる機会も増えてきます。今回はジャッキの正しい使い方と、注意点、使い勝手をよくするポイントなどを合わせてお知らせします。

この記事のPOINT
ジャッキアップは、平坦で、固く、滑りにくい路面で!
タイヤ交換をする際はジャッキアップをする前にホイールナットを少し緩めておこう!

ジャッキの種類とリジッドラック

 最近はクルマにジャッキが搭載されることも減ってきましたが、一般的にクルマに搭載されるジャッキはパンタグラフジャッキと呼ばれます。ジャッキの伸び縮みする部分が、電車のパンタグラフのような菱形をしていることからこう呼ばれます。

車載のパンタグラフジャッキはネジ式となっていることがほとんどです。ネジ式のパンタグラフジャッキは、ハンドルをグルグルとたくさん回すことでジャッキアップをおこないます。

この作業はそれなりに時間を要するので、グルグル回すのではなく油圧を使ってパンタグラフを上下させるタイプのものもあります。油圧を使ったジャッキとしては、フロアジャッキ(ガレージジャッキとも呼ばれる)が有名です。

フロアジャッキは爪切りのような動きでクルマを持ち上げるタイプのジャッキです。パンタジャッキがタイヤ1輪を持ち上げることを基本としているのに対し、ガレージジャッキは前輪2輪や後輪2輪を持ち上げることができます。  

 

リジッドラックというのはジャッキアップした後にクルマを載せるための台で、“ウマ”と呼ばれることもあります。ジャッキは外れる危険性がありますが、リジッドラックはまず外れることがなく、4カ所をウマに載せることでクルマの下に潜っての作業も可能になります。  

そのほかにもレースなどで使用するワンタッチジャッキや、重量車にも対応できるダルマジャッキなどさまざまなジャッキが存在しますが、あまり一般的ではないのでここでは省略します。

ジャッキアップは作業する場所が大切

スタッドレスタイヤ交換 ジャック パンタグラフジャッキ ウマ

ジャッキアップを行う前にその場所はジャッキアップに適した場所であるか? が大切な項目となります。ジャッキアップを行うためには、平坦で、固く、滑りにくい路面であることが必要です。 

とくに平坦さは大切で、坂の途中やスロープでジャッキアップを行うのは非常に危険です。斜めになっている場所でジャッキアップすると、クルマが不安定になりジャッキが外れてしまうことがあります。

平坦であったとしても、砂利道なども避けたいものです。路面が砂利であったり、柔らかい場合や滑りやすい場合は、固い板を敷くことである程度の安全性を確保できます。

面積は広ければ広いほどいいのですが、車載のパンタジャッキの場合は30cm平方、フロアジャッキならば30cm×60cm~150cmくらいは欲しい(ジャッキのサイズによって異なる)ところです。

ジャッキの正しく便利な使い方

パンタグラフジャッキを使うときは、サイドブレーキを引いて、ATのポジションはP、MTの場合は1速かRに入れておきます。さらに後輪をジャッキアップするなら前輪の前側、前輪をジャッキアップするなら後輪の後ろ側に輪止めを置きます。

後輪駆動車はパーキングブレーキも後輪、ギヤのロックも後輪なので前輪はフリー状態になっています。このため後輪を持ち上げる際に輪止めを怠ると、クルマが動いてジャッキが外れるという事故が起きがちです。

パンタグラフジャッキはジャッキアップポイントと呼ばれるサイドシル下にある決められた位置で使用します。ジャッキアップポイントはクルマをジャッキで持ち上げても大丈夫なように計算されて決められている場所で、ほかの場所でジャッキアップを行うとパネルが曲がったり、凹んだりすることもあるので注意が必要です。

ネジ式のパンタグラフジャッキを使うときは、利き手(ハンドルを回す方の手)にグリップのいい手袋、支える手に軍手などの滑りやすい手袋をはめるとスムーズに作業できます。支えるほうの手にグリップのいい手袋をはめてしまうと、ハンドルが引っ掛かって作業がはかどりません。油圧式のパンタグラフジャッキは細かく何度も押し下げるのではなく、1回1回のストロークをしっかり長く取って作業するのがいいでしょう。

フロアジャッキはジャッキアップポイントとは異なる場所に掛けてクルマを持ち上げることができます。こうすると前2輪、後2輪などを持ち上げられます。もちろんジャッキアップポイントでの使用も可能です。多くはサスペンションメンバーやデフケースなどですが、よくわからないときはディーラーのサービスマンに聞くなどしましょう。デフケース以外のアルミパーツにジャッキを掛けることはまずありません。

車種によってはフロアジャッキが使いにくいもののあります。フロアジャッキには車輪がついていて、ジャッキでクルマを持ち上げるとジャッキが動きます。同様にクルマ側も動きます。このためフロアジャッキを使うときはパーキングブレーキは掛けず、ギヤはニュートラルにします。

フロアジャッキはできれば2名で作業するのが理想です。ひとりがジャッキアップし、上がりきったところでひとりがすかさず輪止めを入れて、パーキングブレーキを引き、ギヤを入れます。もしひとりで作業しなくてはならないときは、タイヤの動き(移動距離)を予測して輪止めを配置しておいてジャッキアップ。その後に輪止めを当て直して、パーキングブレーキを引き、ギヤを入れるという作業になります。作業内容によってはリジッドラックをサイドシル下のジャッキアップポイントに置いて、ジャッキを下げて安定させます。

パンタグラフジャッキでもフロアジャッキでも油圧を使っているジャッキを下げる際は、油圧を抜くという作業になります。多くの場合、リリースバルブを緩めて油圧を抜きます。緩める際は反時計回りにレバーを回しますが、これを片手で行うと急に緩んでしまい、クルマがガタンと急に下がります。これを防止するには両手を使ってリリースバルブを緩めることです。両手でジワッと回すことで、リリースバルブはゆっくりと緩まります。

タイヤ交換をする際はジャッキアップをする前にホイールナットを少し緩めておきます。ジャッキアップをした状態では、(後輪駆動の前輪などは)ホイールがフリーになっていることもありますし、たとえフリーになっていなくても大きな力でホイールナットを緩めたりすると、ジャッキが外れる恐れもあります。

タイヤを装着する際も同様で、ジャッキアップをしている状態では仮止め、増し締めをするのはジャッキをおろしてからとなります。夏タイヤから冬タイヤへの交換作業の際などは、取り付ける前のタイヤや交換後のタイヤを車体の下にねかして入れておき、万が一ジャッキが外れたときもサスペンションやブレーキなどが地面に当たらないようにしておくことも大切です。

諸星陽一
  • 諸星陽一
  • 日本自動車ジャーナリスト協会(外部リンク)
  • 自動車ジャーナリストとして専門誌やライフ誌での執筆活動をはじめ、安全運転のインストラクターも務める。1992年~99年まで富士スピードウェイにてRX-7のレースに参戦。セルフメンテナンス記事も得意分野。福祉車両の数少ない専門家の一人でもある。

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