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2025年01月26日

[ショート7]屋敷墓

[ショート7]屋敷墓
一部個人名について、すでに故人となられた方のお名前はそのまま記載したことを予めお断りしておきます。また、施設名についても当時の名称と現在の名称を併記しています。

1999(平成11)年12月、私は1軒目の家屋敷を仙台市青葉区西部の某町内に求め、住まうことになった。

近所に幼稚園があり、ミニ開発の住宅地が隣接していた。
土地を持っていたのは、道路向かいで一帯の土地を持っていたKさんという農家で、とても良い人だった。
その家が一帯の土地を切り売りしてきたうちの一つを私が購入し、母の弟が勤めていたハウスメーカー(〇〇マン~)の建物を建てて暮らし始め、程なく私の両親が水戸市酒門町の家土地を処分して同居することになった。
当時、仙台市青葉区五橋にあった仙台市立病院(現、東北学院大学五橋キャンパス)の泌尿器科に名医がおり、それを頼っての同居であった。

当時、私も家内も仕事においては駆け出しで、手取り月30万円程度、計60万円程度の収入だった。
母からは30万円ほどを生活費として出すよう言われ、残りの30万円のうち12万円をローンの返済、残りの18万円で水道光熱費、通信費、活動費などを捻出していたので、余裕はほとんどなかった(年金はどこいったの?)。

私は永らくいすゞビックホーンLSショート3.1ディーゼル5速+LSD(UBS69DW)(過去最高のクルマだった!)に乗っていたが、「2ドアだから子供が生まれたら不便だろう」ということで、三菱デリカスターワゴン2.5D5速サンルーフ付き(Q-P25W)に乗り換えたところだった(ちなみに家内はスズキカプチーノ(E-EA21R)5速だった)。

2002(平成14)年8月のある日、18時頃「お印が来た」と家内。
母と家内をデリカに乗せて、仙台逓信病院(現、イムス明理会仙台病院)へ向かった。父は前立腺ガンと膀胱ガンを併発し、入退院を繰り返していたため、留守番することになった。

20時ころ、仙台逓信病院に着き、エレベーターで2Fに上がり、ナースセンターに声をかけると、「主治医の先生はいまから来る。もう少し産気づくまで待合室で待ってほしい。」とのこと。

22時半頃、陣痛がいよいよひどくなってきて家内が分娩室に。
私は血を見ると気分が悪くなる性質なので立ち合いを希望しないと事前に伝えていたのだが...助産師が知り合いで、呼ばれて分娩室に入ることに。

「キャビネットのパッケージをそこの長椅子の上に出すのをお願いできますか?」

と言われ、パッケージに手を伸ばした時、分娩台の上で唸る家内が視界に入ってしまった。
産道からいま出てこようとする1号の頭部が見え、私の視界は暗くなった。

「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」

肩をゆすられ、頬を叩かれて我に帰った。
その後待合室にフラフラと行き、椅子に腰掛けた時、主治医の先生が白衣姿で分娩室に入るのが見えた。
程なくして「元気な男の子です。おめでとうございます。」と助産師さんが伝えに来てくれ、母が何か質問をしていたようだが、いろいろ分かって「帰るか」となったのが1時頃。
なんだかんだで帰宅したのは2時頃だった。

玄関の鍵を開けると、父が部屋の襖を開け、ものすごい剣幕で捲し立ててきた。

「なんなんだこの家は?40〜50人のお化けが家中ドタドタと歩き回って、やれ"子どもが生まれる"だの"お湯沸かせ"だの言いながら、階段は上り下りするしうるせーし、一体どうなってるんだ!」

と言って再び襖を閉めてしまった。
あっけに取られてしまったが、「まあ悪いお化けでもないみたいだし、いいか」ぐらいにしか考えてなかった。

それから、父の容体は一進一退をたどり、入退院を繰り返した。
水戸赤十字病院で受けたコバルト60の照射量計算に誤りがあり、患部が爛れていたのも予後の悪さに影響を与えていた。

母はあまり積極的に父を見舞ったとは言えず、私が当時の上司にお願いして退勤時刻と同時に上がらせてもらい、仙台市立病院に行くと、母の車があり、タバコの煙が窓から出ているのがわかった。おそらく日が落ちるまでそうして時間をつぶすのだろうな、と。

私が病室に行くと丁度夕食が配膳される時間で、父が食べ終わって歯磨きをし、口内炎の薬(本当は口内炎ではなく転移した舌がん)を塗ってやってから帰宅する、という日々が続いた。

2004(平成16)年1月末には2号が生まれたが、父は孫を抱くことができなかった。
1歳半違いの1号が2号を乗せたベビーカーをベッド脇まで寄せ、2号の頭を撫でるのが精一杯だったようだ。

一進一退はその後も続いた。
GW頃には危篤状態になったが持ち直し、7月の土用の丑の日には、買って行った鰻重弁当をぺろりと平らげたりしたが、明らかに身体は衰弱の一途を辿り、2004(平成16)年7月29日(土)昼過ぎ、いよいよ意識レベルも下がってきた、という段階になった。

16時頃、麻酔科の医師の勧めで、当時海外に工場を建設するため一家転住していた兄に国際電話をかけ、帰国してほしいと言うと、「それはwantなのかmustなのか」という返答。麻酔科の医師からは「mustだ。間に合わないかも知れない」との話。

16時半頃、国鉄の同期で、在宅の僧侶で、次兄の葬儀の際にお経をあげてくれた、宮城野区五輪に住む石堂さん(翌年に他界)が見舞いに来てくれた。
石堂さんが呼びかける(「あと少しだ。がんばれ」だった)と、「あー石堂さんかー」と応じた。これが最後の言葉になった。
7月30日(日)12:46死去。

兄一家は間に合わなかったが、機上で逝ったことが分かったという。

それから数週間。葬儀も四十九日までの法要も終わった頃、母が家の周りの掃除をしていると、家のすぐ裏にある踏切を渡って歩いてくる人と言葉を交わすようになり、仲良くなったという。

しばらくしてその人の言うには、

•よくこの土地を買った
•ここにはK家の屋敷墓があった
•昔だからね、生で(火葬せずに)埋めてたよ
•昭和20年台からこの踏切を行き来しているから間違いない
•そのことは土地を買う時に聞いてないの?

私はこの話で母から随分説教をされた。

「地盤調査」という名目で非破壊検査(つまりソナー)により家の敷地を検査してもらうと、地中1mくらいまで柔らかいところがほぼ等間隔で、全部で27ヶ所あった。これは──間違いなく墓だろう。
1号が生まれる際に父が言っていたことと符合するような話が、実際にあったのである。

父の百箇日が終わった頃、私は別のハウスメーカーで現在の場所に家を建てることを決め、系列の不動産会社で家を売却した。

売却した家は、すぐに企業の買い手がつき、そこがさらに売るという形でとある夫婦と出戻り子連れの娘さんが住むことになったらしいが、引っ越しの際に奥さんが玄関ドアに手を挟み、指を一本欠損したのだ、という話を聞いた。
屋敷墓の人たちは(私に取って)悪い人たちではなかったのだな、とその話を聞いた時に思ってしまった。

やがて、2号が中学校に進み、吹奏楽部に所属すると、部活の先輩がその家に住んでいるとかで、その後、県立の中堅進学校に進んだようだ。世の中は狭い。
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Posted at 2025/01/26 15:08:44

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