
VWの0W-20相当の規格はVW508.00と509.00です。
508がガソリンで509がディーゼル。
併記されていて1種類のオイルで提供されます。
MB229.71は5W-20ないし0W-20の低粘度規格です。
こちらもガソリンとディーゼル共用です。
似たような制限があるので一緒に書いています。
一番のトピックスはNoack(250℃60分後の蒸発量)が11%未満とVHVI(Gr.III鉱物油)ではそのまま達成するのが難しいところです。
低粘度になるほど蒸発量は増えるので5W-30時代にはVHVIでも達成出来ていた11%未満が俄然厳しくなります。
(VW504/507もNoackは11%未満です)
なので某ブログのように
「VW508/509のすごい点はベースオイルがフルPAOという点です。(最近はGTL製もあるようですが)」
なんて変なコメントが出てきます。
VW508/509はNoackが厳しいので、恐らく自社基準だとPAOベースにしないと成立しないからこんなことを書いてしまったのでしょう。
VW純正は最初からGTL(天然ガスから作る合成油)ですし、MOTULやリキモリはVHVIで認証通ってます。
PAOじゃないと規格に通らない訳じゃない。各社ノウハウがある。
分子量の大きいmPAO添加でNaock抑制出来そうですけど?どうです?
もちろんPAOベースで作ってくれたら最高ですけど、実際ほぼ無い。
VW508/509やMB229.71はACEA C5ないしC6オイルに代替出来ると良く聞きますが、実際にはNoackやその他の性能に差があります。
ACEA C5/C6のNoackは13%未満です。
ディーゼル車ではオイルの蒸発量の差がそのまま煤の発生量の増加に繋がります。
煤詰まりのリスクも増えるし、DPF再生回数間隔が短くなるのでオイル寿命も短くなります。
認証オイルを使わないリスクも説明して売るべきですよね。
ちょっと脱線しましたが、今回は
MB229.71とVW508/509規格の話です。
MB229.71は0W-20ないし5W-20が条件になります。
Lubrizolから引用しています。
VW508/509同様にNoackが11%未満です。
VW508/509はこんな感じ。

塩基価(TBN)は意外にもMB229.71が7.5以上に対してVW508/509は6以上でした。
ロングドレインの筈のVW純正規格でも塩基価が結構緩い。
Lubrizol(添加剤メーカー)のサイトにこんな文言ありました。
VW50800/50900 oils are typically high HTHS (≥ 2.6cP and ≤2.9cP) SAE 0W-20 based on API Group IV base oils.
(VW50800/50900 オイルは、通常、API グループ IV ベース オイルをベースにした高 HTHS SAE 0W-20 です。)
なるほど、某ブログはこれを丸パクリして書いたのかな。
Gr.IVベースオイル=PAOです。
ひとつ前の規格VW504/507ではこんな感じでした。
VW50400/50700 oils are typically high HTHS (≥ 3.5cP) SAE 5W-30 based on a mix of API Group III and Group IV base oils.
Gr.III鉱物油(VHVI)でもOKと。
Lubrizolが何故Gr.IVと書いたのかは何となく想像できます。
組成の判らないVHVIではNoack11%が達成できないのでしょう。
VW504/507は*W-30ベースで硬い分まだマージンがあったのでVHVIもOKとしていたけど、*W-20ではNoackが普通に厳しい。
合成油のMobil1の0W-20でも10.8%くらいありますしね。
ポリマー使うとNoackの低減が出来るのでそれだとVHVIでも規格を満たすことが出来るので「使うな」の意味を込めてGr.IVとしたのかもしれません。
素人相手じゃないのだからそんなに優しく書く必要も無いですよ。
プロなんだからどういうVHVIが使えるかブレンダーなら判りますよね?
VW純正オイルの成分分析の結果は
チラホラ落ちてるので見てみましたが、塩基価は7未満、Caが1700ppmで多めなだけでした。
SAPSはACEA C5の0.8%より緩い1.0%で塩基価も低めなのでスペックだけで見ると案外緩い規格に見えます。
VW504/507(*W-30)も改めて見ると結構緩い。
SAPSも1.5%未満でSN規格品でも達成出来そうなレベル。
あまり厳しい規格にすると独禁法で怒られるからこんなに緩いのでしょうか?
VW純正オイルはGTLベースで組成が良いからこの程度のスペックでもロングドレインは成立すると思いますが、社外品でVHVI使って果たして同等の品質を確保出来るのだろうか?
特にNoack対策でポリマー添加しているオイルがあるとしたら…
こういう不確定要素が絡んでくるとやはり適合品では不安が残ります。
適合品は適合する添加剤を入れたオイルなだけで実際にメーカー認証のお墨付きを受けていません。
「適合するだろうオイル」
価格差が大きいのならば適合品を選ぶ理由も一理ありますが、せっかくメーカーアプルーバルにこだわるなら認証品を使いたいですね。
あ、重要なこと忘れてました。
VW508/509は色指定があります。
青(緑)です。
ブルーオイルってことですが、Mobil1 ESP 0W-20は緑でした。
日本人には緑に見える青なのか?
偽の添加剤で誤魔化せないので偽物流通防止にはなりますね。
【おまけ】
MB229.71の話が全然無いのでSDSを付けてみます。
ネットオークションで売られているMB229.71純正オイルは中国製ですが、GTLっぽいです。

Zusätzliche Hinweise
この中のどれかが入っています。シェルお得意のSDSの書法です。
何が入っているか判らない。
ドイツ仕様?のSDSだとGTLが80%のようです。

このSDSだと通知対象物でVHVIの記載がありました。
日本仕様のSDSには通知対象物にVHVIが無し。
加えて日本仕様の方が低密度なのでGTLで間違いなさそう。
日本製のMB229.52では酷い目に遭いましたがこれは試してみたい。
惜しむらくはMB229.71なんですよね。
MB229.72ならLSPI対応なのでGRカローラでも試せるのですが、MB229.72純正オイルは流通がありません。(社外品はある)
そんなことよりMOTULのNGEN買えって?w