
エステルは結局この話に回帰します。
エステルは極性を持っているため金属や色々な物質に吸着します。
吸着性があって潤滑性も優れています。
ドライスタートも良い。
反面、水分にも吸着してしまい、加水分解が早いです。
いわゆる「持ちが悪い」。
極性の強いエステルほど持ちが悪いので、モノエステルやジエステルは
「最初は滑らかだけどね。」
と言われてしまう所以のところ。
ポリオールエステル(POE)でも極性が強ければ加水分解も早いです。
コンプレックスエステルやポリオールエステルは耐久性は上がるけどエステルのあの滑らかさが弱くなります。(モノによる)
極性が強ければ水分にも吸着して加水分解は加速するので特性上相反します。
例のGRエンデュランスにジエステルが配合されているか判りませんが、極性の強いエステルが使われているのは体感でも耐久性でも判ります。
新油はもの凄く滑らかでも500kmでエステル滑らかさが減ってくる。
ポリオールエステルやコンプレックスエステルはこの辺が改善されていますが、やはり「エステルにしては」と枕詞を付けないと成立しない感じがします。

ざっくり構造式を比較するとこんな感じ。(Geminiさん生成)
ジエステルが直鎖構造に近くてエステル基が露出しているのに対して、ポリオールエステルは立体構造になっているのでH2O分子が触れにくい=加水分解しにくいです。
これがコンプレックス化(複合化、重合化)して構造をより複雑にしたものがコンプレックスエステルですが、構造体は大きくなり低分子量(低粘度)のエステルは生成出来ません。
エステルの特性は以下の通り
鉱物油…無極性、加水分解しない、熱分解温度超低い
ジエステル…極性高、超滑らか、加水分解早い、熱分解温度低い
ポリオールエステル(POE)…極性中、滑らか、加水分解は普通、熱分解温度中
コンプレックスエステル…極性中、滑らか、加水分解遅い、熱分解温度高い、高粘度
POEの弱点である熱分解安定性を強化したものにヒンダードエステルがあります。
POEの構造を変えて熱耐性を持たせたエステル。
これはPAOやGTL並みに熱耐性もある。(250℃~)
Mobil1のESPシリーズ(全部じゃない)でエステルが検出されることがありますが、これはGTLやPAOベースにヒンダードエステルを添加しているのだと思います。
(Oil-club.ruから引用)

これはMobil1 ESP 0W-40のFT-IR分析結果ですが、1746cm-1のピークはヒンダードエステルのようです。
添加量にして5%程度なのでシール膨張コントロールとか溶剤用ですね。
The Motor 〇il Geekでペンズオイルウルトラプラチナの1700cm-1付近がホウ酸エステルだ!って騒いでましたが、モービル、シェル(ペンズオイル)で1708cm-1は分散剤のコハク酸イミドでしょう。
このESPでも微量検出されています。
ベースオイルと言う程の検出量では無いので借りにホウ酸エステルだとしても体感出来る量ではありません。
ホウ酸エステルなら加水分解も早そうですし。
彼クラスのインフルエンサーが知らない筈は無いんですけどね。
確実に判ってて「やってる」。
だからYoutubeはエンターテイメントでしかないと…
オイル分析など調べる際にはロシアの
Oil-club.ruを見てください。
Oil-club.ruの分析は非常にレベルが高く、SDSやVOA/UOAを組み合わせた考察も豊富。
国内では感覚や宗教論だけで語られるケースも多いので、ソースを正しく分析する姿勢は素晴らしい。
せっかくFT-IRで分析しても間違った分析をするケースもありますが…
と言うことで個人的あまり興味のないエステルの説明でした。
PAO(GTL)+ANの方がリスクも無いし万能だと思います。
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Posted at
2026/05/19 10:19:10