
2026.2.4修正
Gr.III鉱物油を合成油と表記して販売したのはご存じカストロール。
厳密にはペトロナスカナダが最初みたいですが。
今ではVHVIなのか組成が判らないオイルまでも合成油表記で販売されています。
今回はカストロール合成油問題について調べてみました。
昔話で話の正確性も微妙なのでエンターテインメントとして見て下さい。
間違いや追記のご指摘大歓迎です。
是非コメントをお願いします。
問題となったのはカストロールのSyntec®というオイル。
1997年頃まではPAOベースの化学合成油だったものが1997年末頃から鉱物油100%に切り替わっていました。
当時のSyntec製品に「Synthetic(合成)」という直接的な表記はなかったものの、合成油を連想させる表示であるとして、不当表示を理由にモービルが全米優良事業局(BBB)の広告部門(NAD)へ問題提起をします。
ところが、NADは「Gr.III鉱物油は合成油と遜色ない性能を持つ」というカストロール社の立場を支持する裁定を下します。
この1年後にペトロカナダはVHVI製品を合成油と記載すると宣言し、以降は皆さんご存じの通りです。
何故モービルは負けてしまったか?
・SAEが合成油の定義を明確にしていない。
・カストロールが使っていた鉱物油はシェル製XHVIだった。
・モービルも欧州他エリアでは似たような表記で販売していた。
ざっくりこんな感じ。
まず一つ目、
SAE(アメリカ自動車技術会)はJ357項でベースオイルの定義をしているのですが、ここに合成油とかVHVIに関する記載が無いようです。
中身が有料で見られないので
現在のJ357がどうなっているか確認出来ませんが、現在のアメリカや日本の販売状況を鑑みると曖昧のままでしょうね。
二つ目のシェル製XHVIを使っていた件、
これがPAOを上回る高性能鉱物油だったのです。
シェルの高品質ベースオイルはXHVIという商標が付いてます。
VHVIの更に上、と言う意味でXHVIだと思います。
(XHVI=eXtreme High Viscosity Index)
シェルのXHVIは
スラックワックス異性化鉱物油です。
現在だとエクソンモービルのVISOMやエネオスのWBASEがこれです。
NADの検証時に比較したオイルが並のPAOとXHVIだとしたらXHVI優位です。
実際にSyntec®で使用していたオイルはXHVIだったようなので、PAOより優秀な結果が出るのは想像に難くありません。
一般的に流通しているVHVIとは全く別ものの高性能鉱物油です。
(XHVIの粘度指数は当時でも140以上、PAOは120以上)
90年代初頭シェルはXHVIを売りにしていてPAOより優れていることをアピールしていました。
本来ならモービル VS シェルの構図。
カストロールは騒動に巻き込まれた感じですね。
金持ち喧嘩せず。二大メジャーは喧嘩しませんでした。
三つ目、
モービルが欧州他エリアで同じような手法でVHVIを販売していたとしたら、この訴訟で自分達も鉱物油を合成油として売るための「お墨付き」を得たことになりますね。
もしかするとモービルは最初から勝つつもりはなかったのかも?
負けても以降は鉱物油を合成油として大手を振って売れます。
実際今のエクソンモービルはその通りになっていますね。
Mobil1ですら大半はVHVIベースです。
最初から予定調和だったかもしれません。
カストロールを吊し上げにしてシェルとモービルはGr.III鉱物油の合成油表記の確約を得る。
ただし、この合成油論争の結果、合成油と言えばMobil1と言うイメージが薄れてしまったのは確かでしょう。
PAOの単体の販売もしているモービルとしてはPAOの販売量も減るでしょうから果たしてこの結果は正しかったのかどうか。
この裁定の問題点はXHVIとそれ以下のGr.III鉱物油の定義を明確にしなかったところですね。
何故XHVIとPAOの性能検証が拡大解釈されてVHVIも含むGr.III鉱物油まで合成油表記を不問としてしまったのか?
XHVIとVHVIは2ランクは性能が違うオイルです。
ここまで予定調和だったとするとSAEもAPIもシェルもモービルも全員罪人です。
シンプルにXHVI(高粘度指数VHVI+)のみを合成油表記OKとしていれば現代でもこんな紛らわしい世界線に入っていなかった筈です。
あの時、Gr.III鉱物油の定義が明確になっていれば「HIVI 100%化学合成油」なんてこの世に出てこなかったでしょう…
あるいは、あの時代にシェルとモービルがGTLを持っていたらまた違った結果になっていたと思います。
GTLならPAO相当以上のパフォーマンスがあってPAOより安価。
XHVIよりも製造コストも低そうですし同等以上の高性能。
(GTL…天然ガスから合成する高純度な潤滑油や燃料)
90年代だと南アフリカのサソールはGTLを作っていたと思いますが、シェルとモービルがGTL事業に本格参入するのはもうちょっと後なんですよね。
GLT量産があと5年早かったら歴史は変わっていたかもしれない…
かつて、カストロールRSというエンジンオイルがありました。
水色の背景に黒字のストライプでRSと書かれた10W-50だったかな?
90年代は富士興産が製造していたと思いますがPAOベースでした。
安売りだと4Lで3980円でした。ターボ乗りの若者はみんなコレ。
で、丁度99年辺りでRSが「良くない」って話をしていたのです。
今思えばこの辺りからVHVIに切り替えが始まっていたのでしょうね。
参考文献
XTREMEREVOLUTION.NET
AMSOIL
この他 Katherine Bui "A Defining Moment for SYNTHETICS Part 1 of 2 and Part 2 of 2"で検索すると当時の記事が見つかるかもしれません。
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