
すっかりマツダ・ヲタと思われているであろうボクが今更ホンダを語ったところでねぇ…と思ったら意外に沢山読まれている上にファン登録数の増加にまで貢献しているこのお題(^_^;)。
今回の話題は日本で750台限定で発売されたシビック TYPE R(FK2型)ですが、副題は予告wで書いた通りで
「全く心配してなかったシビックTYPE Rの残念な話」
ですA^_^;)。
ボクは初代FF TYPE RであるDB8のオーナーで、それなりにクローズドコースも走り回った経験を持っていますので、TYPE Rを語らせたらちょっと煩いです(笑)。その辺は
過去にブログで書いているので今回は割愛しますが、副題の通りでホンダがTYPE Rを復活させるという報に触れたとき、ボクはそのクルマの仕上がりに全く心配はしていませんでした。
いや、マジで(^_^;)。
ホンダがTYPE Rの称号を冠するクルマが変なクルマである筈がない!これはもう確信を通り越して信仰に近いものだったかもしれませんが、ひょんなことから
このレビューを見付けて読んだところ
「あれ?(^_^;)」となりました。
正直に書きますが、オーナーの人となりは何も知らなかったので、ロクにサーキットを走ったことも無いような人がテキトーな事を書いていると
最初は思いました。つまり「有り得ない」であり「信じられない」話だったのですが、レビューの主のブログを少し拝見して考えが変わります。勿論オーナーさんの技量を推し量るには至りませんが、少なくとも然るべきペースでクローズドコースを走れる実力と、様々なコースの走行経験をお持ち(具体的には鈴鹿や菅生)というところまでが伺えると、そういうオーナーさんに
少なくともレビューで書かれているような評価を下されたクルマであるという事実は受け止めなければイケないと思いました。
その後、
某親方wがガッツリと辛口レビューを公開するに至って確信に変わるワケですが、どーやらFK2型のTYPE Rは、ボクの知るTYPE Rとは違うクルマになってしまったようなのです。
ボクの知るTYPE Rとは過去のブログでも書いている通りで、
サーキットを思い切り走らせると何の不満も不安も無くドライバーは運転に集中し、楽しくてしかも速い!クルマ。そのために一般市販車に求められる快適性(乗り心地、静粛性、etc)はことごとく排して、サーキットまでの往復を自走で行える必要最低限の装備まで絞り込む潔さが身上でした。
ただ、もし最新のTYPE Rが多少快適性に配慮したクルマ造りになっていたとしても、ボクとしては全く非難するつもりは無かったのですが、本題から外れるので一旦横に置いて、、、(^^;;
ボクが
残念に思った点は、サーキット走行を楽しむオーナーと、スポーツ走行を我々に指導する立場のプロが
クルマに対して不満を訴えた点と、両者が口を揃えた
「全然楽しくない」という感想でした(-_-;)。
ボクの知るTYPE Rは、それこそビギナーからプロまで、クルマに不満を感じることは何もなく、走らせればレベルの差はあっても皆が「楽しい!」と口を揃えた上で、速かったクルマでした。
で、
問題はどーしてそんなクルマになってしまったのか?です(-_-)b。
その原因を
某親方がズバッと鋭く指摘していますが、ボクもそう思います。というか、それ以外には考えられません(^_^;)。
要するにFK2-Rはニュルで最速ラップを刻むことに特化したセットアップをしてしまって、汎用性というか他のコースに適合する柔軟性を失ってしまったのでしょう。
何を言っているか解らない人向けにちょっと例え話で解説しますが、、、
スポーツカーが完成して市販された場合には、その時点の性能がいわばそのクルマの基本性能となります。複数のサーキットに持ち込めば、菅生で何秒、もてぎで何秒、筑波で、富士で、鈴鹿で何秒で走れるか?というワケですが、当然あるコースに特化するワケでは無いので、様々なコースの色々なコーナーであるレベルのパフォーマンスが出るようなバランスで仕上がっているものです。
これがそのクルマの基本性能の部分ですが、メーカーが力を入れて開発しているスポーツモデルであれば、その基本性能を底上げする、平たく言えば上記の全てのサーキットでラップタイムをX秒縮める、なんてことは容易ではありません。
じゃぁそのクルマを更に速くする方法は全くないのか?というと、あります。それがコースに合わせたセットアップです。
例えば筑波サーキットを例に取ると、ここには180度回り込むコーナーが3つ、100Rの中速コーナーが1つあります。
そのクルマの基本的な性能に対して、180度回り込むコーナーを更に曲がり易くしてあげてコーナー毎に0.3秒強速く走れるようにクルマをセットアップ出来れば、ラップタイムは1秒縮められる可能性があります。じゃぁなんで最初からメーカーがそれをやらないのか?といえば、低速コーナーで回頭性を上げれば、中高速コーナーでの安定性が落ちるからです。
3つの低速コーナーで0.3秒づつ縮められても、100R~90Rの最終コーナーで1秒以上遅くなってしまっては、トータルでラップタイムは縮まりません。逆に高速コーナーを1秒速く走れるようにする一方で、曲がり難くなる低速コーナーで0.1秒遅くなるだけで済めば、差し引きで0.7秒ラップタイムが縮められます。
みたいな話で、あるコースに特化して「どこをどれだけ妥協すれば」「よそでどれだけ稼げて」「もっとも速く走れる」のはどんなセッティングか?を詰めていくのがセットアップですが、それで筑波サーキットでノーマル比?秒速くなったとしても、他のサーキットで同じように速くなることは有り得ません。
それが或るコースに特化したセットアップという世界です。大体、色々なコースで有効なセットアップがもし見つかれば、それは基本性能の底上げという話で、TYPE Rのようなクルマの場合、メーカーは当然、取り得るあらゆる手段を使って既にやっている話です。
とすると、じゃぁ
ホンダはなんでそんなことをやったのか?という話になりますよね?(^_^;)
思うにシビックTYPE Rの開発に於いて、
プロトタイプが仕上がってニュルでタイム計測をしたところ、
FF最速のタイムには届かなかったのでしょう。当然考えられるあらゆる手立ては講じた上で、です。そのタイムギャップが3秒だったのか5秒だったのかは知りようがありませんが、社長が「ニュル最速のFF」と言ってしまった以上、その
タイム差をなんとかして
削らなければなりません。そうなったらもうニュル北コーススペシャルのセットアップを施す以外に手は無かったんじゃないかな?
結果として公約は果たせましたが、出来上がったクルマはニュルのコースに最適化されている上に、そのクルマとニュル北コースを知り尽くしている開発ドライバーが走ればそのタイムが出る、という代物ですから、他のコースを我々のような素人オーナーが走らせたら何が起こるのか?それが厳しいユーザーレビューという構図だろうと洞察しました。
ベースとなった旧型のシビック・ハッチバック(欧州仕様)はセンタータンクレイアウトでリアサスはトーションビームと、シャシーは基本的にフィットと同じです。フィットがベースだったのかまでは判りませんが、TYPE Rがベース車両ありきのある種の「チューニングメニュー」であることから、当然ベースとなるクルマに備わっている潜在性能という足枷があります。結果論ですが、ニュルFF最速を狙うには、
ベースの欧州シビックには些か荷が重かったというのが真相だと思います。
しかし社長の「ニュルFF最速を狙う」という公約を「頑張りましたが出来ませんでした」と引っ繰り返す訳にもいきません。恐らく開発チームは他に手立てが無くニュルセットアップに走ったのではないでしょうか?結果「速い事は速いけど全然楽しくない」とか「コントロールが難しい」クルマになってしまうとは、もしかしたら思ってなかったかもしれません。
あくまで結果論ですが、恐らくニュルセッティングに走る前のプロトタイプ時点の基本性能をベースにチューニングを詰めて市販していれば、ニュル最速の称号は得られずとも従来のTYPE Rの延長線上にあるクルマになっていたのではないか?と推察しています。そんなクルマであったなら、オーナーが不満を持つようなことも当然無かったでしょう。
どこでボタンを掛け違ってしまったのか?(^_^;)
①伊東・元社長が「ニュルFF最速を狙う」と公言してしまったこと?
②ベースの欧州シビックにそれを狙うだけのポテンシャルが無かったこと?
まぁ今となってはそこをあまり突いても仕方がないですが(^_^;)、伊東・元社長が高い目標を掲げたこと自体はホンダらしくて良いと思うと、やはり②が想定外だったんでしょうね。
ホンダのサイトによれば、フロントにはデュアルアクシスストラットという全く新設計のサスペンションを奢る一方で、リアはトーションビームを踏襲しました。ボクは別にトーションビームだからダメなんて短絡的には思いませんから
(世の中には多いですけどw)
「FF車世界最速を達成するための剛性や特性、性能を検討したとき、トーションビームでも十分狙うことができるという見通しもありました。要は形式ではない、目標が達成できればトーションビームでもいいわけです。」
と、ホンダのエンジニアがこう言ってトーションビームのままにするのなら、それはそれでも良いと思うんですよ。でも、
こっちの記事では新型の開発責任者(LPL)が
「シャシー系は現行モデルではフロントサスは新設計(デュアルアクシスストラット)できましたが、リアサスはトーションビームのままだったので苦労しましたが、新型はリアサスがマルチリンクですので設計の自由度も増えています。そういう意味では、電子制御に頼ることなく“素”の状態で性能を高めることができたので、コーナリング性能は更にレベルアップしています。」
なーんてことを言っているよーなので、相当に苦労して電子制御に頼って…たんでしょうね(苦笑)。
果たしてどっちが本音なのか?(^_^;)ネット記事って恐~いw
もしかしたら新型から欧州シビックもシャシーを北米と統一したのは、
FK2-Rの開発で懲りたからかもしれませんね(^^;;
さてそろそろ〆ましょう。
TYPE Rを欲しがるコアな顧客は、自らサーキットに足を運んで最高のドライビング・プレジャーを楽しみたかった筈です。その点歴代のモデルは期待を裏切ることはほとんど無かったワケですから、FK2-Rに対しても同様の期待を持ったでしょう。そんなオーナーさんたちにとって、実は「FFニュル最速」なんて称号はどーでも良いモノなんですが、、、(^^;;
一方でTYPE Rの高性能に魅力を感じ、しかし自らサーキットに足を運ぶほどではないオーナーにとっては「FFニュル最速」という勲章は愛車のステータスですからあれば嬉しいモノでしょう。
じゃぁこの「FFニュル最速」という称号が、従来のTYPE Rが持っていたドライビングプレジャーを損なってでも必要なモノか?TYPE R最大の魅力と引き換えにしてでも欲しいモノなのか?と両方のタイプのオーナーさんたちに問うたら、恐らく両者共に「NO」と云うんではないでしょうか?(^_^;)
そうは思うんですが、じゃぁ開発途中でその目標を「取り下げる」「反故にする」のがホンダらしいか?といえば、それも違う気がするし(苦笑)。
この問題は、紐解けば紐解くほど「誰が悪い」となかなか言い難い、悩ましい問題だと思っているんですねA^_^;)。ただ、
残念であることには違いがありませんが、、、