CVTは所有車としては初めてなので、独立記事で詳しく。
なお、私が実用車の駆動系に求めるのは
「言われた通りに黙って仕事しろ」
であり、
「ユーザーに余計なことをさせるな」
なので、スポーツ性やら官能性は興味が有りません。この先、リニアトロニックの山坂道での反応みたいな話は皆無です。
まず、ゴルフプラスからの乗り替えにあたってVWを選ばなかった理由のひとつにDSGがあります。
過去に4年ほど乗ったTT RoadsterはMTでしたが(当時はMTしかなかった)、クラッチ締結は自分でやるからいいのであって、DSGのように機械にやられると、上手いんだけど「そこじゃないよ~」と思うことが試乗程度でも度々有りました。乾式クラッチのDSGは構造的にクラッチの繋がる瞬間が分かるので、気持ち悪いこと。
電光石火のシフトチェンジも別にメリットに感じないし、故障も多かったみたいで。スムーズで枯れたトルコン式が良いです。
が、アウトバックが相変わらずの自社のステップATだったら、これまた選択したかどうか。
所有していた初代レガシィもそうでしたが、その後のモデルでもシフトショックなどは改善されなかったようで、スバルのATはダメという思い込みがあり、それは水平対向のレイアウトゆえにトランスミッションメーカーから仕入れられない構造的な欠点と思っていました。
電気モーターと違って内燃機関は回転を上げないと実用的なパワーが出ない=減速/変速が必要になるという特性なので、エンジンそのものよりもトランスミッションの方がドライバビリティに影響が大きいのではないかと思っています。だとすると、CVTは無段階に変速できてエンジンの特性を生かせて効率がよく、多段のギアを切り替えるよりもシンプルな機構なので変速機として望ましいのではないか?
ということからCVTには機械的な興味が有ったので、何の抵抗感も持っていませんでした。
ところで、CVTといえば「ラバーハンドフィール」に代表されるギアを切り替えるのとは違った感触です。陸上の乗り物のほとんどはエンジン/モーターの回転と速度が概ね同期しますが、航空機や船舶は発進加速時は回転数が一定です。
CVTを積んだ車は陸上の乗り物でありながら、後者のような流体をかき混ぜながら進むような感触なのが人によっては違和感をもたらすのでしょうか?「ダイレクト感」が大事なんですかね。本当にベルトやチェーンがずるずると「滑る」と思っている人もいるようですが、そうだったら故障です。
リニアトロニックとて例外ではなく、街中では1500~2000回転で回転数固定のまま加速します。でも、先の特徴の通りでいかにも効率的に思えて何も違和感を感じないのですが...。家族からもトランスミッションの違いに起因する指摘は無いです。
もっとも、エンジンが静かに回るからいいのかも知れません。一定の回転数でボクサーサウンド宜しくドコドコいってたら町工場のコンプレッサーの騒音と同じ。一緒にターボがキーンとかいってたら、歯医者の待合室かと(笑)。
速度が高まればアクセルへの応答はステップATと変わらないどころか、負荷に応じて無段階にギア比が変わって出力を引き出してくれるし、シフトショックがなくて騒音の急な変動もなく快適です。
「言われた通りに」=操作に忠実に
「黙って」=静かに
仕事をしろという要求には十分に応えてくれています。
アウトバックは2.5lで低回転からトルクがあるためか、やたらとエンジン回転数が先行することもないので、尚更にそう感じるのかも知れません。
以下、ユーザーが選択出来る各モードについて。正直なところ、マニュアルモードとXモードがあれば他のモード切り替えは要らないです。レヴォーグやWRXとはセッティングが違うかも知れませんので、スバルの全ての車種でそうだと言うことでは有りません。
【Iモード】
イグニッションONで選ばれるモード。これでとくに不満なしです。前モデルの試乗時に感じた発進時の飛び出し感や、やや過敏なアクセルの反応もなくなり、扱いやすい。DQNアクセルな人にはそれが、「もっさり」という印象をもたらす場合もあるかも知れませんが。
アクセルを大きく開けるとステップ変速制御が入りますが、変なシフトショックも相まって昔の4速ATみたいな感触。高速での合流位でしかそうなりませんが。
【Sモード】
Iモードより500回転ほどエンジン回転数が高まる。高低差のある道ではたまに使う程度。適度にエンジンブレーキが効くことから、雪道ではこのモードが運転しやすいらしい。
故障時のフェイルセーフではSモード固定となるそうです。実は一番ニュートラルな設定だったりするのでしょうか?
【S#モード】
エンジンが暖まらないと選択できません。Iモードより1000回転ほどエンジン回転数が高まります。このモードはステップ変速制御になるのですが、これの第一印象は
「え?! カッコ悪ぅ~w」
でした。わざとらしいシフトショックがあり、ガキが世代の古いATの車でアクセル開けて強引に走る、という感じの下品さ。多段ATやDCTに似せる気は無いのかもしれませんが、それがレガシィの伝統的な走りなのなら、もうレガシィは捨てた方がいい。
Iモードで深めにアクセル踏んだときの4速ATモード(笑)の方がまだマシです。が、Sモードより使います。エンジンブレーキ専用で。
【Xモード】
選択するとAWDの締結力が増しVDC/ABSの制御を速めてタイヤの空転を抑える、下り坂では一定速度を維持するヒルディセントコントロールが有効になる、というモードです。40km/hを越えると解除されます。
平坦路で走ってみるとギア比が低いままとなることに気がつきます。
下り坂では一定速度を維持してくれて(速度調節はアクセルかブレーキで行う)、ハンドル操作と安全確認に注意を払えます。後退時でも作動します。
許可を得た上である自然公園内で急坂で歩行者のある道をこのモードで走ったことがあるのですが、登りはじわじわと進行、下りはスピードが上がらないのでとても楽に安全に走れました。
積雪/凍結路面は未経験ですが、厳しい条件下で走りきるという状況では頼りになりそうです。オフロード走行用ではないことは言うまでもありません。
追記:
積雪時の登りでハンドルを切った状態では発進できないケースがありました。
→ 「
シンメトリカルAWD 空転ス」
【マニュアルモード】
シフトレバーで選択するか、パドルでもシフトダウンの方だけはいつでも受け付けます。
パドルで操作してしばらくすると元のモードに戻りますが、任意のタイミングで戻すにはシフトレバーで一旦マニュアルモードに変えて戻す必要あり。どこかのメーカーのは左右のパドルを同時に引くとマニュアルモードが解除されたと思いますが、アウトバックは(スバルは?)そうはなりません。なお、マニュアルモードになるとACCが自動解除されます。
でも、これもシフトアップ時はわざとらしい嫌なショックがあります(同乗者の頭が前後するのが分かる)。少しアクセルを戻せばましになるのかも知れませんが、昔の自動MTやスリップの大きいトルコンではあるまいし、古くさい。シフトダウンは反応は早いけど回転数合わせもしない。
工数けちっているのかどうなんだか分かりませんが、「ATなんてこんなもの」的な感覚でセッティングしている? まぁ、自社のトランスミッションしか知らない開発者ならそうなってしまうのかな。
結論として、エンジンブレーキが欲しい時だけ左パドルでシフトダウンして、あとはIモード任せが一番です。他のモードは商品性向上のためには必要なギミックなんだと理解しました。Xモードはマトモだとは思います。
ボタンとソフトウェアで実現できるので、ディーラーオプションに出来ないですかね?お金払いたくなかった。
パドルではなくて、ダイヤルで無段階に任意のギア比を選べないかな。Driver Control Centre Differential みたいに、名付けて「Driver Control Variable Transmission」とか。それなら欲しい。
ということで、ステップ変速制御以外は非常に気に入っています。ACCでの定速/追従走行時はまさしく本領発揮というところで、加減速や勾配などの負荷に応じた無段階の変速による滑らかな走行感覚はCVTならではです。
制御がより洗練されていくといいですね。
追記:
発進直後~トルコンのロックアップクラッチが締結するまでの領域をベルト/チェーンが滑ると勘違いされている方がいるようですね。
参考:
CVTはDCTの夢を見るか?