デカくない実用車ならコレも見ておくべきかな〜。
と、試乗したのは3代目シエンタ ハイブリッド Z(最上位グレード) 5人乗りモデルの2WDです。
知人がエンジンモデルを持っていて、後席に乗ったときに車の挙動の良さを感じて興味を持ちました。2代目に乗ったときはかすりもしなかったけど、3代目は「コイツはナニモンだ?」と。さらにラゲッジが大容量とも知ったため実車の確認に至ったのでした。
結論から言うと、いろいろ良くできています。実用性と走行性能とデザインのバランスが良く、小振りで価格も抑えられていて、人気があるのも頷けます。
試乗は一般道のみ、妻は後席(運転席の後ろ)に座り、営業の方が助手席に座りました。外気温は10℃くらいで強めの雨でした。
なお、試乗の感想は私が個人的に感じたことであって、試乗した車の良し悪しを論じているわけではありませんので誤解なきよう。細かい装備の使い勝手までは試乗ではわかりませんので、その点もご了承下さい。
また、現所有車のスバル レガシィアウトバック(BS9型)に8年超乗っているので、評価基準がそこにあることが多い点もご了承下さい。
■外装
イタフラ車のパクりとの知見を披露したくて(?)他者批判に励む志の低い似非評論家もいるようですが、二番煎じで市場をごっそり刈り取るのは昔からのトヨタの十八番ではありませんでしたっけ?
で、最近の車は目つきが悪いのを通り越して銀河の彼方を見つめていたり、
「実は化石燃料好きなんです...」
みたいな後ろ暗さが隠せない辛気臭い表情が多い中、シエンタは
「いや、ストロングハイブリッドあるんで」
と、どこ吹く風な感じが爽やかですね。
ミニバン勢の「クルマはオラ顔、オーナーはドヤ顔」な方々とは距離を置いているのも良いです。
■内装
ファブリックを多用して気負わない雰囲気に仕立てている点では、ソフトパッドの上質感ばかり気にしているよりも良い方向と思います。
それと車内が無臭?
新車っぽい匂いも他の何かの匂いもなかった印象です。シート表面に消臭機能が備わっているそうですが、そこまで効果があるものだろうか?
■ラゲッジスペース
ここに一番興味がありました。5人乗りモデルで2列目シートを倒さない状態で693リットル(VDA法)あるそうです。7人乗りモデルは700リットル以上もあります。
トヨタのFAQサイトより →
https://faq.toyota.jp/usr/file/attachment/220803_35.pdf
アウトバックは同条件で559リットルと十分なサイズではあるのですが、キャンプに行くときは荷物が入りきらずに座席にも積んでいました。シエンタなら全部入りそう。
実物は高さも横幅もあり、四角い空間が工夫次第でいかようにも出来そうなので使いでがありそうです。バックドア開けて後ろに立つと、大きな車の後ろにいるような感じがします。
5人乗りは2列目を倒すと2mを超えるスペースが現れるので、長尺物の積載にも十分。
■乗り心地、乗り味
穏やかでなかなか良いです。路面の凹凸で揺すられることもなく、荒れた路面での振動が不快ではない感じでした。路面から想定される予想通りの応答をする点も良いです。ボディがよじれる感触はとくになく、しっかりと走ってくれます。
ただし、曲がるときに助手席の人がやや揺れているように思いました。ミニバンの運転は慣れが必要そう。とはいえ、柔らかめなのに大きくは揺れないという、その匙加減がなかなかよかったです。
後席乗り心地評論家(妻)も及第点とのこと。
先日試乗したカローラクロスのような驚くほど良いというほどではなかったとも。カローラクロスの乗り心地が強烈に印象に残っていて、あくまでもそれと比較するとそこまでではないということです。
もちろん、アウトバックよりも全然良いですし、アウトバックの乗り味に苦しめられている反省から相当厳しめに見ても問題なさそうです。
ちなみにホイールベースはなんとアウトバックよりも長い。
シエンタ:2,750mm
アウトバック:2,745mm
とくに後ろ側のオーバーハングがやたらと短く、ほとんどの重量物がホイールベース内にあります。これが穏やかな乗り心地と良好な挙動をもたらしている一つの要素かも知れません。
■ドライバビリティ
ハイブリッドシステムは直列3気筒1.5Lエンジンを組み合わせています。ハイブリッド車はエンジンを常に高負荷で使うので、3気筒のデメリットが出にくいでしょうかね。
さて、実はミニバンを運転するのは人生初。走り出してまずハンドル軽い!が第一印象。タイヤが15インチと小径だからかな?軽い方が好みなのでこれはOK。しっとり軽やかという感じ。
でも、この軽さだとハンドル操作が下手な車好きおじさん(笑)がロールが〜とかコーナーリングが〜とか言いそう。
さておき、アクセルとブレーキの操作性はとても素直で好印象です。アクセル踏み込んだときのトルクの出方の滑らかさ、ブレーキ踏力一定のときの減速感や停止直前の操作性がよくて、回生協調も良くできてる感じです。
とくに停止間際のブレーキはそこらのエンジン車よりも良いかも。エンジン車のトルコンのロックアップクラッチが解除されて減速感が変わるあのポイントがきれいになくなっている感じです。しかもカローラクロスのハイブリッドモデルよりも神経使わずに停められます。
アクセルは強めに踏み込むともりもり加速してくれます。しっかりアクセル踏み込める人なら合流などで気後れすることは全くないと思います。エンジン回転が速度とともに上がっていって、まるで過給器付のトルクのあるエンジンで加速していくような感じ。
これはダウンサイジングターボ+DCTよりもよっぽどいいんじゃなかろうか?
と思う味付けです。
近年、THS Ⅱの制御でブレークスルーがあったのか考え方の変革でもあったんですかね?
積極的にエンジンを回しつつターボの代わりにモーターでトルクを上乗せする形で、ダウンサイジングターボの市場をかっさらうつもりかな?
1点気になったことは、運転支援のPDAによるものなのか、前走車が減速したときにアクセルをオフにしただけでブレーキ踏みかえる必要がないくらい減速すること。前走車がいない時はそこまで減速感を感じなかったと思います。さすがに試乗の短時間ではどのような減速をするか読めなかったけど、慣れれば大丈夫かな?
なお、後席車酔い確認スペシャリスト(妻)によれば、全体的にこれと言った問題はなさそうとのこと。
▼運転席
シートの座り心地は布地ということもあってか表面の当たりが柔らかめ。でも沈み込むようなことはなく、長時間の運転も大丈夫そうな気はします。
やや立った姿勢で座り、ハンドルも立っている感じだし、窓がデカくて上半身裸になったみたいで何となく落ち着かない。これがミニバンの運転環境なのか〜と感じた次第。
ちなみに、ハンドルはチルトもテレスコピックも調整できます。
▼ペダル配置
GA-Bプラットフォームはペダル位置がややオフセットしているそうで、見た目だけだと確かにブレーキペダルはもう少し右でもいいんじゃないかと思わなくもない。けど、実際に運転してみるととくに違和感はなく、おかしな姿勢を強制されるわけでもありませんでした。
買わない理由が欲しい、評論家っぽいことを言いたいといった場合には指摘すればよい程度のものです。
■その他
▼静粛性
コンパクトカーとしては特筆すべき静かさだと思います。
強い雨の中で荒れた路面を走っていても、車内は普通に会話できます。ロードノイズがとくに静か。それに天井をたたく雨の音もぜんぜん気になりませんでした。いろいろと対策されているんでしょうね。
高速走行はしていないので、そのときにどのような車内環境になるかは分かりません。
3気筒エンジン特有の元気な音もエンジン振動も感じはしますが、予想していたよりは静かに感じました。
▼後席の居住性
広すぎるくらい広い。5人乗りの2列目シートは前後には動かないので、ちょっともったいないくらい。
後席居住性担当大臣(妻)によれば、リクライニング出来るので楽〜と。座り心地も問題無しとのこと。ドアトリム内蔵シェードも高評価。
個人的に気になったのはシートの座面も背もたれも平たくてホールド性に乏しいことと、太腿の裏が浮いてしまうのでお尻中心で体重を支えることです。長距離移動時はどうかな。
■総評
場所を取らないけど中はスペースたっぷり、気軽に使える便利な車として良いと思います。
そして、TNGA世代のトヨタ車にハズレ無し?
静粛性の高さと各操作に対する滑らかな応答に良好な乗り心地など、よく出来ているように思いました。
走らせていて全体のまとまり感があって雑に感じるところがなく、分かっている人がしっかり仕上げたんだな〜って雰囲気。これは先のカローラクロスの試乗でも感じたことで、スバル車の個別最適の寄せ集め的な感触とは異なるものでした。
現所有車のアウトバックはゴツい乗り心地と図体で乗るのがもう億劫になってしまったのですが、シエンタもカローラクロスもどこかへお出かけしたくなる楽しさがあります。
トヨタは変わりましたね。車の楽しさに気付かされるとは。
自分も変わったかな。トヨタのミニバンやカローラシリーズに興味を持つなど以前は考えられず、妻に驚かれたくらいです。
シエンタの納期はハイブリッドモデルは長めでオプションによって変動あり、エンジンモデルはそこまで長くはないようです。詳しくはお近くの販売店へ。