DA変換を二回もしているのに音が良くなる!?
というのは目から鱗でしたが、どういうことなのでしょうか。録音された原音から考えたら本来Analog-Digital-Analogで再生されるものがA-D-A-D-Aという余分なことをしています。当然、波形を見れば音声信号は原音から離れていくでしょう。
にもかかわらず「良く」聞こえるということは、Medianavだけを使ったA-D-Aでは得ることができない「好ましい効果」をA-D-A-D-Aが持っているということになります。
これを理解するために、今手元にあるものを再利用してmo☆noさんの環境に近づけてみる実験をしてみました。
構成はこんな感じです。
スマートフォン ->
BEHRINGER HA400
-> Medianav AUX IN

(この写真は室内でのテスト時のものです。スマホへのUSB接続は単にバッテリーから給電しているだけです)
HA400というのは3000円くらいの安いヘッドホンアンプなんですが、スマートフォンだけではAUX端子以降とインピーダンス不整合があり駆動力不足で比較にもならないため、駆動力の補助に利用します。安物なりの不満点はあれど、信号増幅に徹して味付けをしないという点では信頼がおける商品です。12V駆動なんで普段は室内でACアダプタ駆動ですが、今回は車のジャンプスタートもできる
モバイルバッテリー
で駆動しました。
ケーブル、変換プラグ類は最低限の音質を確保するため、接点が金メッキされたaudio-technicaのカーオーディオ用製品を購入して利用しました。
使用したスマホは Microsoft Lumia 640XL なんでちょっと一般的とは言いにくいですが、250USDくらいで買える中堅機ですからそこまで高価な部品は使われていないでしょう。
この接続の場合、DACがスマホにあるのでスマホ側の音量を最大にし、スマホ起因のノイズをできるだけ排除します。Medianav側のアンプがなるべく影響を与えないよう、Medianavの音量は中心あたりで固定し、HA400のつまみで音量を調整しました。
やはりこれだけでも効果がありました。体感する音場の狭さが解消し、かなり広く聞こえます。狭いところにごちゃっとされて潰れた印象だった音の定位が分かりやすくなり、聴きやすくなったのです。
最初に聴いたときの本音を言うと、「純正スピーカーでこんな音が出るんだ!」という感動すらありました。その時は上の写真に写ってるIPAを3本ほど一人で飲んだ後で(運転はしてませんよ!)、次の日素面で聴いたらそこまで感動は無かったんですがw
全体の構成としてはUSB-DACですらなく、スマホのDACを使っているというところでパフォーマンス不足は否めないと思います。ただ、この「体感音質の改善」はある仮説の傍証となります。
その仮説とは、
Medianavの音作りが車内の再生環境に合っていないのではないか、というものです。
通常の再生環境のスピーカー配置というのはLR 2chで前方からこちらを向いているものです。市販の音楽は伝統的にはそれを前提にマスタリングされていますが、車のスピーカーは内側に対向していて、4ch(現在の自車は4.1ch)でもありさらに複雑な形状の障害物がいっぱいあります。願わくはそれを考慮した音の味付けを期待したいところですが、Medianavではそれが行われていないのではと思います。むしろDAC二階建てでもむちゃくちゃな音にならないあたり、MedianavのDSPは割と素直な処理をしていると言えるかもしれません。
ならば、車内に合う味付けがなされた音はどのように提供されるでしょうか。実は車内環境に少し近い再生環境があります。ヘッドホンやイヤホンです。
実際、Medianavでジャズやオーケストラの生演奏を録音したものを聴くと、音場は異常に狭く感じます。その一方で、HipHopやエレクトロニカなどヘッドホンリスニングをターゲットにマスタリングされた音源ではそれほど問題を感じないのです。
もちろんヘッドホンリスニングには障害物はありませんし、対向スピーカーがお互いに音波をぶつけ合うようなこともありませんが、こと音場の拡がりを考えると車内と同じような問題を抱えています。そして最近のヘッドホン/イヤホン利用環境の最たるものと言えば、スマートフォンです。スマホの音は当然イヤホンやヘッドホンでの利用を前提にデザインされています。上で試した接続はこの「ヘッドホン向けの味付け」が良い方向に働いた可能性が高いと考えます。
ただ、常時利用するにはこの構成は煩雑で邪魔過ぎです。そこで、HA400と同じように「ただ増幅するだけ」という噂の激安ポータブルアンプを購入してみました。
Fiio e6
です。マッチ箱の2/3ほどのかなり小さな筐体で、満充電で公称連続再生時間は10時間ですが、説明書にも「リチウムイオン電池は数百回使えますが突然壊れ、電池交換はできません」とある男気溢れる商品です。
※ 日本の正規代理店のオヤイデ電気から買えるe6と並行輸入品FUJIYAMA-E06は若干スペック表記が異なります。偽物も流通があるようなのでご注意を。僕は
こちらからFUJIYAMAのほうを買いました。
まだ数時間しか使ってないのでエージングは進んでいませんが、現状では音質は HA400 利用時より若干劣るものの狙った効果は出ています。(最初は歪みがひどくて捨てようかとも思ったんですが、だんだんと普通に鳴るようになり、「これでもいいかな」と思えるようになってきました。)
2V定電圧のLINE-Out用の設定があるのが今回の使い方には好感です。あと、電池が切れたとしてもUSBバスパワー駆動ができます。シガーソケットからバスパワー給電すると音質が落ちる気がするので電池がへたりきった後も使い続けるかは分かりませんが…。
スマホをAUX接続で使っている方で、手軽に安く音質を向上させたい、と思っている方には試す価値はあるかと思います。少なくともインピーダンス不整合は改善するのでスマホ単体よりはずっとマシになります。
まとめと感想
本来であればMedianav再生の音をなんとかしたいところですが、今回の結論に基づくとソリューションは「対向Spに適した音場構成ができるDSPを噛ませる」ということになり、さらにアンプも必要になるので現状では厳しいですかねえ…mp3に直接味付けしてしまうという手がなくもないですが、車用にわざわざ作るのはめんどくさいですからね。
この手のDSPによる味付けって、昔カセットテープ時代にコンポやウォークマンでありましたよね。有名なホールの音場を再現するプリセットなんかがあったのをふと思い出しました。あれもバブル期の徒花かと思っていましたが、今にして思えばポータブルオーディオの発達でヘッドホン/イヤホン環境が増えてきたことに呼応した動きだったのだと思います。
さらに良い音を追求するとすれば、やはり最近のブームであるポータブルハイレゾプレイヤーでしょうか。あれもヘッドホン前提なので期待が持てますが、製品によってはインピーダンスマッチングを取る必要がある(=別途ポータブルアンプが要る)かもしれません。
ハイレゾリューション音源については僕はバカ耳ですし、車内においては必要性を全く感じません。ハイレゾを抜いてしまえばポータブルハイレゾプレイヤーというのは昔懐かしいmp3プレイヤーなんですが、スマホに駆逐されたかと思いきやどっこいリバイバルブームになっていて、i-riverなんかがAstell&Kernなんつーおしゃれな名前を携えて44万もするプレイヤーを出してたりするのはなんというか時代の流れと業の深さを感じます。怖い怖い。
今回の出費はポタアンe6とケーブル・アダプターで計5000円くらいでした。最終的には激安でそこそこ効果がある構成を見つけることができたうえ、ポータブルオーディオとカーオーディオについていろいろ勉強になったので満足感が高いです。
Posted at 2015/12/03 02:02:16 | |
トラックバック(0) |
ルーテシア4RS | 日記