
本日のブログは少々真面目で長文です。
お時間のない方はスルー推奨でお願いします。
私には18の頃からずっと囚われていた言葉があった。
それはある人に言われた「運転センスがない」という一言だ。
その人は私が通っていた教習所の教官で、1年くらいの間に同い年の従姉妹、姉、私と親族3人の教習をメインで担当してくれた人だった。
私がこの3人の内では一番最後だったためか、ある日の教習中にこんな話をしてくれた。
「従姉妹ちゃんは運転センスがあったね~。彼女は上手かった。お姉さんは逆にセンスがなかったね。本人も運転好きじゃなさそうだし。中とろさんは……う~ん、お姉さんよりは向いてるけど、そんなにセンスのある方じゃないね」
車が好きで免許取得を非常に楽しみにしていて、それまで学科も実技もスムーズに進んでいてそれなりに運転できているという自負のあった私は、その一言に結構がっかりしたのだった。
「そうかぁ。私はあんまり運転センスがないんだな」
その後無事に免許も取得し、毎日のように車を乗り回す日々が始まり、「結構上手くなったな」と自信を持ったり、「ちょっといい気になってた。気をつけないとな」と気を引き締め直したりしながらも楽しいカーライフを送っていた。
学生時代、私が仲良くしていた友人にHちゃんという子がいた。
私の車好きに大きな影響を与えてくれた一人だ。
彼女は入学前に免許を取り、大学には新車のシャレードで通っていた。
毎日通学やバイト通いなどで結構な距離を運転していた彼女は傍目から見ても同級生の中で抜群に運転に慣れていて、私は助手席に乗せてもらうたびに感心していた。
運転センスのある人というのはこういう人のことを言うんだろうなと人知れず羨んだりもしていた。
そんな彼女はもらい事故やら家族の都合やらで在学中になんと4台も車を乗り換えることになったのだが、サイズも排気量も違う車でもすぐに自分の手足のように乗りこなしていた。
特に私が感心したのが車両感覚で、左側や後ろの寄せが非常に上手く、狭い道路のすれ違いや車庫入れなどなんてこともないようにさっとこなしてみせた。
「いつも思うけど、Hちゃんは本当にすごいよね。何に乗り換えてもあっさり乗れちゃうよね~」
私がさして考えもせずに発した言葉に、Hちゃんはとんでもないというように手を振りながらこう言った。
「だって私、乗り換えるたびに毎回ちゃんと車幅の感覚とか後ろの見え方とか車から降りて確認してるもん。運転席からこのくらいに見えたら何10センチくらい離れてるとか、少しずつ寄せてどのくらいが限界なのかとか自分の目でチェックしておかないとギリギリまで寄るってやっぱできないよ」
私はこの発言を聞いて穴があったら入りたいような気持ちになった。
彼女の車両感覚はセンスがあるとかないとかそんな天賦の才に関係なく、彼女がきちんと努力して身につけたテクニックだったのだ。
それを自分は「彼女が運転が上手いのはセンスがあるから。私がそこまでできないのはセンスがないから」と勝手に決めつけて、それを言い訳に努力を怠っていたのだ。
それからは私も彼女のような車両感覚を身につけようと、寄せてみては車を降りて間隔を目視で確認したり、助手席側のタイヤでわざと白線を踏んで音を確認してみたりと努力を重ねてきた。
そんなHちゃんの発言に恥じ入った経験からさらに10数年経過した頃。
私はサーキットデビューを前にヒール&トゥを練習する必要に迫られていた。
免許取得以来ずっとMT車に乗ってきたとはいえスポーツ走行など意識したこともなく、ただ漫然と10年以上運転してきた私にとってヒール&トゥ習得は容易いものではなかった。
ダンナに見本を見せてもらい、まずは公道でのシフトダウンの際にブリッピングをして回転数を合わせることから練習を始めたのだが、なかなか上手く回転数を合わせることができなかった。
ダンナは私の口から言うのも何だがこれまでに乗せてもらったことのある人達の中でもヒール&トゥは抜群に上手い方で、しかも教師としては厳しい方なので、「ああ、もうそんなこともできないなら、ATに乗り換えちまえ」「サーキット走りたいって言うのならこのくらいできなくてどうする」と叱責され、当時の私は何度も「こんな思いをするならもう二度とサーキットなんて走らなくてもいい」と言う機会を探していた。
自分の不器用さに我ながら嫌になり、運転のことをあれこれ言われるのが嫌でダンナを助手席に乗せるのが憂鬱だったりした。
そんな日々を過ごしていたある日、
「ダンナはさ、クラッチ操作もシフトダウンも上手いからわからないかもしれないけど、普通の人にとってみたらヒール&トゥをマスターするのってすごく大変なんだよ!」
とついに切れてしまった。
するとダンナに
「そんなの知ってるよ。俺免許取って最初の2年はずっとATだったからクラッチ操作なんてすっかり忘れてたもん。今なら笑い話になるけど、R32買って初めて乗り出したときなんて、クラッチ切らずにいきなりシフトチェンジしようとしたんだぜ」
「ヒール&トゥだって最初は全然できなくて、自動車部の先輩の助手席に乗せてもらったときはもう足下ばっかり見てさ、どういうタイミングでどんな風に踏むのかとかずっと研究して、その後すぐに自分の車で練習したんだ」
「誰だって最初からバッチリできる奴なんていないんだよ」
と言い返され、またしても私は自分がHちゃんの時と同じ過ちを犯していたことに気がついた。
ダンナはセンスがあるから簡単にできる。
私はセンスがないからできなくても仕方がない。
そんな逃げ道を作って自分を甘やかしていたって、言い訳ばかり上手くなるだけで肝心のドライビングスキルは少しも身についていないじゃないか。
センスがあろうとなかろうとテクニックを磨くためにはトレーニングが必要で、センスの有無はその習得時間に差がつくだけでしかない。
Hちゃんなら数回でマスターできても、私だったら数10回しないとマスターできないかもしれない。
ダンナが1ヶ月でできたことが、私には1年かかるかもしれないし、ひょっとしたら10年かかるかもしれない。
でも誰だっていきなりいろんなことができる訳じゃないんだ。
自分の能力はそんなに極端に換えようもないし、スキルアップに楽ちんな道なんてないかもしれない。
私は私なりにやっていくしか方法がないんだなぁとそう考え方を変えたらずいぶんと楽になった気がする。
ということで1年経っても相変わらずオルガンペダルのヒール&トゥに手こずっている私ですが、そんな下手くそさも含めてのんびりと自分のペースでサーキット走行と付き合っていこうと思っています。
やっぱりサーキットは楽しいからね♪
Posted at 2013/11/14 23:04:49 | |
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