私の車のアッパーアームは運転席側と助手席側で異なるジョイントがついており、どうしてそうなったのか経緯も不明でした。アラゴスタのサスをソフトMAXに設定しても実感できず、かなり以前からジョイント不良を疑っていました。夏に
トーヨー企画さんを助手席に乗せて都内を走った時も「このジョイント、ブッシュ腐ってません?(笑)」とか「殆ど動いてないんじゃないスか?(笑)」とか言われたい放題でして、早く何とかしたいなーと思っていました。そこで
クマオーさん製のピロマウントジョイント変更にお伺いしてきました。ちなみにトーヨー企画さんの言った通り、純正ジョイントは殆どダメになっており、特に運転席側は機能してなかったと思われます。
ジョイント交換の手順について、私の理解の範疇で記載させて頂きますが、写真は運転席側と助手席側が混在するのでご注意下さい。
①【現状の角度・距離の測定】
ジャッキアップする前に交換前のキャンバー角と、装着されてる純正ジョイントの中心(縦ボルトの中心)から固定ナット内縁までのアームに沿った距離を測定する。
画像:キャンバー角が1.0(画像は助手席側)。
画像(左親指がジョイントの中心の位置):中心-ナット距離が約58.5mm(画像は助手席側)。
私の車は左右ともに角度・距離は同じだったが、車体ごとの個体差があるためキャンバー角と中心-ナット距離がバラバラなことも珍しくないとのこと。交換後のジョイントの調整目安になるため、作業を始める前に必ずメモしておく。
②【純正ジョイントのナットを緩める】
タイヤを外して、純正ジョイントにフェンダー外からアプローチしやすい位置にハンドルを切って調整する。純正ジョイントはボルト上端に黒い蓋がついており(写真中央)、上からボルトにアプローチできない(※そのため純正ボルトの固定は下からL字型六角10mmでアプローチする必要があるものの、地面との距離が狭くて作業性が極めて悪いだけでなく、1人でナット操作とボルト固定を行うことが困難にしている)。まず純正ボルトの下側についてるナットを22mmレンチで緩め、ナットが手で回せる状態にする。この時点でナットは緩めるだけで完全には外さない(※手順③でプーラー下側を噛ませるため)。下側ボルトの先端がナットより少し出るくらいまでナットを緩める(画像は助手席側)。

③【純正品ジョイントの固定を外す】
純正ジョイントを外す工具:プーラー(黒い巨大な洗濯バサミみたいな道具)を上は純正ジョイントのブーツ下縁に、下は②で緩めたナット上縁にかける。その際、車体側をタオル等で養生するのを忘れずに(画像は助手席側)。
プーラーのボルトを締め込んで広げていくと(画像は助手席側)…
あるポイントでガコンッ‼︎と音がして純正ジョイントが上向きに外れる。いきなりガコンッ‼︎と外れるのでプーラーのボルト操作はジワリジワリと慎重に締める。プーラーのボルトを少し締めた状態で数秒放置し、ガコンッ‼︎と外れないことを確認して再びジワリと締めていく感じ。外れる時に硬化したブッシュの破片が飛ぶ可能性があるので、車体の養生だけでなく作業者も注意。純正ジョイントが外れたので、ブッシュ下に隙間ができてるの図(画像は運転席側をシート側から見ている)。
④【純正品ジョイントを完全に外す】
ガコンッ‼︎と外れた後で、緩めておいた下側のナットを手で外す(画像は運転席側を前方から見ている)。実際の作業では運転席側の純正ボルトはサビが酷くて途中からナットが手で回らず(写真のボルト下端のサビが酷い)、工具で外すことになった。固着したナットを工具で回すとボルトも一緒に回ってしまうので、手でナットを回して外せない場合、工具でボルトを固定しながらナットを回す必要がある。ところが手順②で書いたように、純正ジョイントのボルトは上からアプローチできない。メガネレンチでないとナットにトルクがかかりにくいため、実際の作業は下からナットにレンチをかけ、同時に下からボルトに六角をかけて固定し、2人で地面にゴロンしてタイミングを合わせながらナットを緩めることになる。その場合、1回の操作でナットは10度くらいしか回らないので、2人で少しずつ数十回かけて緩める。この点、クマオーさん製ジョイントはピロボール部が着脱式で上から六角キャップボルトを入れて下からナットで締め付けられる、いつでも簡単に外せる仕様。
下側のナットを外したらキャリパー類を斜め外側に傾けて、純正ボルトを内側(車体側)斜め上に引き抜く(画像は助手席側)。
車体側アームのナットも緩めて…(画像は運転席側)
緩んだら、純正ジョイントごとクルクル回してアームから完全に引き抜く(画像は運転席側)。
⑤【フィッティングと調整、グリスアップ】
手順①で確認した角度・距離を目安に薄ナット(車体側)と厚ナット(ジョイント側)でキャンバー角を調整するため、ボルト孔にジョイント本体・歯止め金具・ボルトを仮組みする。その際歯止め金具はテーパー側(下向き:純正が入ってたボルト孔に入れる側)と非テーパー側(上向き:ジョイント本体側)があるので向きに注意(画像は運転席側)。
歯止め金具だけでなくボルト孔の中もグリスアップして、歯止め金具をボルト孔に装着する。先ずはクマオー製ピロボールをアッパーアームに装着せず単体でハブに仮組みするが、その際に
歯止め金具は装着するジョイント本体と径が一致しており、ほぼアソビが無い。そのため「ボルト孔と歯止め金具」「歯止め金具とジョイント本体」がストレスなく垂直かつ水平に装着でき、無理やり捻じ込んだりしてないか繰り返し確認する。今回の作業のなかで最もデリケートな手順になる(画像は運転席側)。
写真右下にあるボルト孔は、この時点ではグリスアップのみで、歯止め金具は入っていない。
キャンバー調整できたら、ジョイント本体の孔・ボルトもグリスアップして固定する(画像は運転席側)。写真左にあるボルト孔には歯止め金具のテーパー側が装着され、非テーパー側が上向きに露出しており、そこにジョイント本体を装着することになる。
⑥【元に戻す】
ボルト+歯止め金具に通したジョイントを下からナットで固定。その後にジャッキアップを下げ、作業前のキャンバー角が出てるか確認する。実際の作業では助手席側は58.5mmで1度ついたが、運転席側は1.5度ついてしまったのでジョイントを外して1mmほど短く調整した。キャンバー角の確認が済んだら、最後にボルト上端を黒キャップで保護して終了(画像は運転席側)。写真はジョイントをボルトに通してる最中で、その後に上からボルトを固定してキャンプをつける。
⑦【Impression】
クマオーさんから
「装着後、走行200km前後で各ボルト、ナットの増し締めして下さい。また締め付け完了マーキングを高力ボルトラインマーカーを用いて記しておくと目視で確認ができますのでオススメです」 とのこと。
私はキャンバーゲージとプーラーを持ってませんが、その2つがあれば自力で取り付けできるかもしれません。純正ジョイントの外し方が特殊ですが、それは純正ボルトが上からアプローチできないことが原因で、寝転がらずに1人で作業するためにクマオーさんが編み出された必殺技なのだと思います。
外した純正ジョイントと比べれば一目瞭然ですが、クマオーさん製のジョイントは非常にフレキシブルに動きます、…というか純正ジョイントは私のような素人でも「なんだコレ?」という状態で、特に右側はほぼ完全に固着してました。
交換後にクマオーさんとツーリングしましたが、ハンドルが軽くなり、高速道路を走ってると路面に合わせてサイクルフェンダーが上下に動く(※段差を超える時にピョコピョコ動くだけでなく、轍に合わせてムニョンと動くのも分かる)ようになり、下から突き上げられる衝撃も減って、アラゴスタのサスが実感できるようになったと思います。
⑧【その他】
工業製品としてのセブン160は極めて粗悪で、製造業が崩壊した現在のイギリスを象徴するかのようですが、反対に趣味車としてのセブン160は非常に魅力的です。しかしながら整備しにくい部品や故障が多いパーツのうち、せめて車の根幹に関係する今回のジョイントやマフラーくらいは日本製にしてもらいたいものです。
クマオーさん、素晴らしいアイテムを開発して頂き、また取り付けのご相談にも対応して頂き、本当に有り難うございました。トップ画像に愛猫のお写真を使わせて頂きました(※この猫ちゃん、私のことをメッチャ気に入ってくれた!)。