セブンのヘッドライト等に流用されるECE規格パーツについて、色いろと調べてました。かなりマニアックな話ですが、共有した方が良いかなと思い、ブログにしました。
ECEというのは欧州経済委員会のことで、1952年に国連のなかに作られた組織です。そのECEには車の国際規格を決めるグループがあり、彼らが承認した関連用品がECE規格パーツです。ECE規格はチャイルドシートなどにも及んでおり、非常に広い範囲をカバーしています。欧州車といえばドイツ抜きは語れませんが、東西に分裂していたドイツが1990年に統一し、1993年にはEUが創立され、国連のなかでECEの立場は強くなっていきます。ECEは「自動車基準調和世界フォーラム」で認証基準を定め、そのルールに米国や日本も巻き込まれていきます。
自動車基準調和世界フォーラムは、主に6項目の認証規格を定めています。
①安全一般(GRSG)
②衝突安全(GRSP)
③自動運転技術分科会(GRVA)
④排出ガスとエネルギー(GRPE)
⑤騒音とタイヤ専門分科会(GRBP)
⑥灯火器(GRE)欧州は国が多く、自動車に限らずルールを統一しないと不都合も多かったと思います。ルールの統一化に苦心してきただけあり、EUは今後も「世界のルール作り」を先導する可能性は高そうです。ルールを作るには自動車やパーツ類を定義する必要があり、それぞれの定義をUNGTR(国連統一技術規則:UN Global Technical Regulations:以降GTR)と呼びます。国連のGTRを日本が認めた場合、そのGTRに適合するECE規格パーツであれば日本の車検基準を特例(※道路運送車輌法75条3項)でパスできます。米国では車の登録許認可の権限は各州が持っており、合衆国政府には権限がありません。そのためGTRは採用してもECEは認めていません。ここで注意すべきは、日本人の感覚や日本語の曖昧さはGTRやECEとマッチしない点です。 ECEは上記①〜⑥の項目でルールを定める際、その対象をGTRのカテゴリーに従っています。例えばバイクなどのランプ類を定めるECE GRE No.50は対象をカテゴリーLの車輌に限定しています。カテゴリーLの車輌は7種類に分かれ、L1〜L5は二輪車と三輪車で、四輪車はL6(:重量350kg以下、最高速45km/h以下、ガソリンエンジンは50cc以下、EVは出力4kW以下)とL7(:重量400kg以下で出力15kW以下)のみです。セブンはL6やL7の車輌には相当しない一方で、セブンのヘッドライト類はバイク用のパーツ=ECE GRE No.50です。一般的な四輪車であればECE GRE No.48が存在し、そのパーツを使えば特例で日本の車検を通せます。ところが四輪車のヘッドライトやウインカーは、殆どセブンには流用できません。バイク用のパーツを流用するセブンのような四輪車は、GTRとECEの矛盾を抱えることになります。セブンに流用できるEマーク付きのヘッドライト類はほぼ全てバイク用のパーツであるため、四輪車であるセブンの車検には特例が使えないのです。
このようにEUが主導したGTRとECEの厳格なルールに対して、日本の曖昧さは結構ヤバいです。トヨタのコムスを例に挙げますと、コムスは道路運送車両法では原付である一方で、道路交通法では普通自動車として扱われます。そのため原付(1人乗り専用、高速道路不可、車検なし)+普通自動車(二段階右折は不要、要普通免許、最高速60㎞)という乗り物で、この時点で意味不明な感じです。こういう意味不明な車はEUにも存在し、それがカテゴリーL6eのクワドリシクルです。最高速はコムスより遅い45km/hですが、出力はコムスを超える6kWまでOKです。運転免許は不要で、フランスの場合は小学校・中学校の成績が良ければ14歳から運転できます(出典:森口将之「トヨタ『C+pod 』発表で超小型EVは普及するか」東洋経済オンライン2021年1月15日5:30)。「ろくでなしBLUES」という漫画で、主人公が原付の後ろに恋人を乗せて走るシーンがありますが、フランス人は「こいつら成績が悪くて、クワドリシクル乗れないのかな?」と思うのかもしれません。
このようなクワドリシクルはルノーやシトロエンも造っており、日本に持ち込まれる可能性もゼロではありません。 ルノーのTWIZYAMI
シトロエンのAMI
どちらもセブンと同様、並行輸入車として軽自動車規格の登録も可能でしょうが、TWIZYやAMIは車輌カテゴリーがL6eですから、それぞれに付いてるランプ類はECE GRE No.50であって、日本の軽自動車に相当するECE GRE No.48とは異なります。そのため日本の車輌登録の規則:ウインカー面積20c㎡以上に従う必要がありますが、実車の画像を見る限りウインカー面積は20c㎡未満でしょうから、このままでは軽自動車はおろか普通自動車としても登録できません。だからといって車体に埋め込まれたウインカーを大きくすると、デザインが崩壊します。ちなみに光岡ロックスターのウインカーは面積20c㎡未満っぽいと私は勝手に疑ってまして、ECE GRE No.48のウインカーを使って特例で登録してるのかなと妄想してます。
セブン160のフロントウインカーは面積20c㎡未満ですが、そのまま国内で車輌登録できてしまったのは国交省のうっかりミスだと思います(※恐らく160スプリント系のブレーキランプも同様)。もし四輪車にECE GRE No.50の二輪車用のヘッドライトをつけて車検に通っても、恐らく検査官のうっかりミスでしょう。セブン170が160よりフロントウインカーが大きくなったのは、並行輸入車であろうと現行車である限りは、ウインカー面積20c㎡以上を満たすよう国交省から要求されたのだろうと思います。それにセブンが対応できたのは、TWIZYやAMIのように車体にランプが埋め込まれていない、あのようなセブン特有のデザインだからこそなのでしょう。
以上のように、車検を通す前提ならば、セブンに使うECE GRE規格のパーツは厳密に吟味する必要が出てきます。探し続けた結果、候補となるパーツが見つかったので装着して報告したいと思っていますが、1月から転職して新しい勤務先でドタバタしており、いつになるやら…。
Posted at 2023/01/28 22:42:54 | |
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