
みなさんゴキゲンよう!
さてさて今回のハチロク日記、お題はずばり
「エンジン」です。
というのもワタクシ、
「頭文字D 30th Anniversary 2days」に行って、驚いたんです。
事前の告知で、
「ハチロクのエンジンが復刻される」という情報はつかんでいたんですが……
実際に復刻されていたのは、なんと
「キューニー後期ヘッド」じゃないですかッ!!
普通ハチロクのエンジンと言われたら、
「T-VIS」(トヨタ・バリアブル・インダクション・システム)が付いた
第一世代の4A-Gだと思うじゃないですか?
でも実際に復刻されたのは、第2世代用ヘッドだったのです。
……って何言ってるのか意味わからないって? そりゃそうですよね。
えーとつまり今回復刻されたのは、AE92後期型に積まれた「4AーGE」エンジンのシリンダーヘッドだったのです。
いやー、GRカンパニーってば、激シブ!
というのも先々のエンジンチューンを考えたとき、AE92後期のヘッドは
ド定番といえる選択なんです。
ハチロクの16バルブヘッドは、バタフライバルブの開閉で吸入空気量をエンジン回転に応じて調整する「T-VIS」に合わせて、ポートが大きく開けられています。簡単に言うとそれは、チューニングには不向き。
対してAE92後期用ヘッドだと、ノーマルでもパワーが130PS(グロス値)から140PS(ネット値)へと上がった上に、吸排気ポート研磨に自由度が出ます。
ライトチューンだとAE111用の20バルブエンジン(165PS)には敵わないけれど、トコトンやったらAE92後期ヘッドの方が、かつてはパワーが出せてました。
今だと20バルブエンジンのノウハウやパーツも、前よりは増えているかもしれませんが。
なおかつパワーの盛り上がり方やサウンドは、断然AE92後期の方がハチロクらしかったんですよね。20バルブはなーんか、洗練され過ぎちゃって。
ちなみにワタクシが20バルブベースで5.5A-Gを作ったのは、ずばりライトチューンでパワーが出せるからです。
でも未だに好きなのは、カリッカリに仕上げたAE92後期ヘッドベースのチューンド4A-Gなんですよ。
筆者の愛車、赤パン
だからヘリテージパーツとして92後期ヘッドを出したその選択には、
本当におったまげました。
でも冷静に考えれば、なんで20バルブじゃないんだろう?
この質問に対しては、当日説明をしてくださったトヨタ自動車 パワートレーンカンパニーの大嶋(智也)さんが、
「関連イベントでアンケートを取った結果なんです」と教えてくれました。
えー、それって我々オジサン世代にだけ聞いてない?
もし若いハチロク・オーナーにアンケートを取ったら、20バルブエンジンのヘッドを欲しがるんじゃないかなぁ?
なんせ、藤原拓海くんが載せ替えたエンジンですからね。そしたらAE111用じゃなくて、AE101用になるのかな?
それはそれでマニアック過ぎるな(汗。
これについても大嶋さんいわく、
「20バルブとは、最後までどちらにするかを協議しました」とのこと。
まぁ20バルブヘッドを復活させたら、4連スロットルも用意しなくちゃいけなくなるかもしれないしね。
となるとチューニングの伸びしろがある、AE92後期ヘッドの復刻が、最善の選択なのかもしれませんね。
というわけでここからは、どのような形でAE92後期ヘッドが復刻されたのかを追って行きましょう!
まずその設計は、当時の図面をトレースして、CADデータに起こすところから始まりました。
面白いのは、現代的な技術でリメイクしながらも、あくまで4A-Gのシリンダーヘッド(とブロック)として作られているため、パワーアップができないこと。
しかしながら随所には、効率を上げる処置が施されています。
たとえば燃焼室のバルブシートには、現代水準の高強度素材を使用。燃焼室には切削加工を追加して、鋳肌を滑らかにすることで圧縮比のばらつきを低減しています。
吸気ポートに至っては、当時の図面から起こしたポート形状を、さらにシミュレーション解析して再設計。
性能は上げられないため吸入空気量は同等ですが、当時よりも気流が強いタンブル流となるようにチューニングされています。
ちなみにT-VISの吸気は横方向に渦を巻くスワール方式で、この92後期ヘッドから吸気が、縦回転のタンブル流に変わりました。
またポート内側の鋳肌も塗型材で処理をして、表面がツルツルになっています。
ポート研磨まではしないライトチューン派にとって、これは嬉しい処理だと言えそう。
逆にポート研磨をする場合を考慮して、ポート周りは肉厚化。同じく燃焼室の裏側、プラグホール回りも、現代の強度基準に合わせて厚みを増しています。
まだまだ、終わりませんよ!
カムの取り付けに当たっては、これまで前側にしかついてなかったカムキャップのノックピンと位置決め穴を、全てのジャーナルに追加。
これによって、それまでは職人の
“手の感触”で揃えていたカムの位置決めが、スムーズにできるようになった。
ちなみにカムは、吸気側のみまだ手に入るようで、排気側はレストアが必要とのこと。とはいえチューニングを前提とするなら、カムやバルブは変えちゃいますよね。
さて、お次は腰下です!
まずブロックには、剛性が高い現代水準の素材を使用。クランクキャップにはAE111で使われた素材を使いながら、シミュレーション解析で導きだした剛性の高い形状に変更しました。
そしてシリンダー内壁にも、現代水準のホーニング処理を施工。
またヘッドを用意した関係もあるのでしょう、FF車(つまりはAE92レビン/トレノだろう)にも搭載できるように、横置き搭載用のボスとリブを追加。
これによってハチロク16バルブよりも高剛性なブロックになりました。
要するに、AE101/111ではなくて、
AE92後期用ブロックの進化版ですね。ちなみに水回りは、当時のままとのこと。
そして一番肝心なお値段は、ヘッド/ブロックともに69万3000円(税込・仮)。
ろっ…ろくじゅう……orz
既に製造が終わったエンジンのヘッドとブロックを、メーカーが自ら新規に作って、しかも現代的なファインチューンを施すだけでなく、その先のチューニングまで見越したと考えれば、この価格も仕方ないとは、頭ではわかります。
でもハチロクはそもそもが、
“あすなろカー”。
シルビアやスープラが買えないけど、ぼろいハチロクでうまくなろう! という走り屋たちが乗ったクルマです。そしてこれを大人になって、多くの人たちが改めて大切に乗ろうとしているわけです。
だから昔ながらのハチロク乗りから言わせると、この価格はちょっと高いと感じます。
むしろ現代的な加工はしなくていいから、もっと安く作れないんですか? と尋ねてみたら、社内でもコストに関しては入念な協議をして、パフォーマンスアップによる大幅な価格アップはしていない、とのことでした。
つまり新たに作り直すと、このくらい掛かっちゃうということですね。
さらに言うとこの値段は、
予約の受注数が増えればもう少し下がる余地があるとのこと。
ほんとかーッ!?(笑)
というかホームページには、最大300台のキャパシティに対して
「受注台数が一定数に満たない場合は、販売を見送る可能性があります」と書かれています。
とはいえいくら価格が下がる可能性があるとは言っても、現状の価格に納得した人しかオーダーは入れられないわけですから、ちょっと色々無理がありますよね。
とはいえそんな矛盾を幾つかはらみながらも、こうしたメーカーにしかできない大物を復刻しようとしてくれる、トヨタとGRカンパニーには感謝です。
むしろ私が心配しているのは、この価格が決まったことで、巷のAE92ヘッドやブロックが急激に高騰すること。
恐らく価格をつり上げる人たちはこうした復刻パーツの作り込みなんて全く気に掛けてはいないだろうから、どうぞハチロクオーナーのみなさんは、
オークション等の価格には注意してくださいね!
何はともあれ2026年の5月になれば、このシリンダーヘッドとブロックの運命がわかります。それまでにまだ時間はあるから、もう一度インタビューしてみたいな。
大嶋エンジニアもこのシリンダーヘッドとブロックには、まだまだ沢山のこだわりがあるようですし、トコトンお話を聞いてみたい。
あと、もしこの受注が増えて行く過程で、販売価格が下がって行くカウントダウンなんかがホームページで見られたら、さらに盛り上がりそうですよね!
(写真:トヨタ自動車)