みなさんごきげんよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
クルマ好きの、クルマ好きによる、クルマ好きのためのコラム「そうだ、ニュルへ行こうよ!」。第9回目となる今回は、滑りやすい路面のお話です。
毎年冬になると、自動車メーカーやタイヤメーカーが雪上や氷上で試乗会を開催します。そこで我々自動車メディアの人間は、滑りやすい路面でクルマを安全に走らせることができる技術や性能を確認します。
そして同時に、運転する側の技術も磨いています。
ということで今回は、滑りやすいシチュエーションでの運転が、実際どんな風にドライビングテクニックの向上に役立つのか? 安全性の向上に役立つのか? もっと言えば、どれくらい楽しいのか? についてお話しします。
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みんカラスタッフTAKASHI(以下:TAKASHI):先日、と言ってもだいぶ前になっちゃいましたが……
日産の雪上試乗会が開催されましたね!
山田弘樹(以下:山田):毎年恒例の、女神湖での試乗会だね。TAKASHI君、行ってきたの?
TAKASHI:それが、行けなかったんですよー! 先輩(&伊藤梓さん)に取られちゃいました(苦笑)
↓↓↓伊藤梓さんのレポートはこちら↓↓↓
伊藤梓のモタスポ調査隊・番外編:新型エクストレイル e-4ORCEの開発目標のひとつは、「スキー場にもっとも早く、もっとも安全に到着できるクルマ」だった!?
山田:それは残念。年に一度のチャンスだから、編集部でも人気なんだね(笑)。
ボクも今年はスケジュールが合わなくて、行けなかった。「GT-R」はまだ、24年モデルじゃなかったみたいだね。でも「フェアレディZ」もあったから、行けたら楽しかったかもね。
TAKASHI:そうなんですよ。ボクも氷上走行って、学生時代の遙か昔に一度経験しただけで。だから今年こそ行きたかったんですけど……。
やっぱり氷上や雪上走行って、運転の上達になるんですか?
山田:うん。普段よりも低いスピードで、タイヤのグリップ限界を試すことができるからね。走り続ければ運転もうまくなれるし、クルマのことがよくわかるようになるよ。
TAKASHI:確かにタイヤメーカーの雪上試乗会へ行くと、
「あっ、ABSってこんな風に効くんだ!」とか、
「オーバースピードだと曲がらない!」って、普段は感じないことが体験できますよね。
山田:それが氷上路面だと、さらに低い速で体験できるんだ。
タイヤメーカーの説明だと、
一般的な路面の摩擦係数を1としたとき、
濡れた路面だとこれが0.4~0.6くらいになって、
雪道だと0.2~0.4くらいまで下がる。これが
氷上路面だと、0.1程度になると言われているんだよ。
※参考:ブリヂストン ブログ
https://www.bridgestone.co.jp/blog/20161203.html
TAKASHI:氷の上だと、タイヤのグリップが一般道の1/10くらいになっちゃうんですかッ!?
山田:そう。だから
凍結路面ではスタッドレスタイヤが必要なんだ。
そして仮にスタッドレスタイヤを履いていても、完全な氷盤路面だと時速30km/hくらいで、簡単にグリップが失われちゃう。
テストコースの氷盤路面は、走ったことある?
TAKASHI:はい。止まるときはABSまかせですけど、そのブレーキを踏む場所まで、目標のスピードに乗せるのが難しかったです。
アクセル踏みすぎるとタイヤが空転するばかりで、速度がなかなか出なくて大変でした。
山田:そうそう。ただあれは、スタッドレスタイヤの氷上性能を試すために作った、特別な路面。だから女神湖みたいな湖を使って作った氷上コースの方が、もう少し走りやすいかな。
どこかしら路面に雪が残っているから、トラクションも割ときちんと掛かる。
それでも雪道と比べればはるかに滑りやすいから、より
低い速度で色々なことが試せるし、色んなことを学べるんだ。
TAKASHI:速度が低いから、リスクが少ないわけですね。
山田:たまに雪壁が凍っていて、
当たり所が悪かったりするとクルマが壊れることもあるよ。でもサーキットと比べれば絶対スピードは遙かに低いから、リスクも低くなる。
あと、タイヤとブレーキパッドが減りにくい(笑)
TAKASHI:女神湖以外だと、どこに走りに行ったことがありますか?
山田:同じ長野県の、
八千穂レイクに何度か行ったよ。知り合いが走行会を開催していたんだ。
TAKASHI:氷上走行会に行くには、どうしたらいいんですか?
山田:もうシーズンは逃しちゃっているけど、ネットで調べれば沢山出てくるよ。レッスン付きだったりすると高いけれど、ただ走るだけなら1万円台からある。普通は1~3万円くらいまでの間じゃないかな?
TAKASHI:あっ、本当だ。あとみんカラでも、けっこう参加レポートが上がっていますね!
参加するには特別な装備とか必要なんですか?
山田:走行会によっては、
ヘルメットとグローブが必要なところもあるね。でもレーシングスーツは、普通いらない。冬だから長袖長ズボンは当たり前だと思うけど、
運転がしやすいものを着ることが大切。靴もレーシングシューズである必要はないけど、ゴツいブーツとかは避けたいな。
ただドライバーズミーティングや、スタックしたときに外を歩くことは必ずあるのね。そんなときは、
靴の上から履けるアイススパイクとか、“かんじき”を持って行くと便利だよ。
TAKASHI:なるほどー。クルマ側では何か必要ですか?
山田:一番大切なのは
スタッドレスタイヤを用意すること! 残り溝がきちんとあって、4年以内のものがいいね。
TAKASHI:ボクも初めて氷上を走ったとき、学生だったのでお金が無くて、古いスタッドレスタイヤを履いて行ったんですけど
全くグリップしませんでした(汗
山田:でも、基本的にはそれだけ。あとはコースを汚さないためにオイル漏れしていないとか、ブレーキパットが残っているとか、
ガソリンスタンドが近くにないから満タンにしてあるかとか。当たり前のことができていれば大丈夫。
強いて言えば、横転の危険性からミニバンとか、あまりに走りに向いていないクルマはだめだと思う。
TAKASHI:そこはホームページを調べたり、主催社に問い合わせるところですね。あー! やっぱり行けばよかったなぁ…笑
山田:普段はサーキットでもなかなか体験できない
アンダーステアやオーバーステアが安全に沢山体験できるよ。リアが“ツーッ”と滑ったあと、カウンター当てられたら嬉しいよね?
TAKASHI:やってみたいです!
山田:そして段々慣れてくると、
どうやったらクルマが曲がりやすくなるのかが少しずつわかってくる。
8の字や定常円旋回用の場所を設けているところもあって、そこで飽きるまで練習するのもいいね。
TAKASHI:FF車でも走れますか?
山田:曲がりづらいクルマだったり、車両安定装置がオフにできないクルマだと、ちょっと面白くないかもしれない。サイドブレーキを使えば曲げられるけど、そんなの最初からできるわけないよね(笑)。
でもターンインで姿勢が作りやすいクルマだったら、すごく楽しいよ。自分の進みたい方向にカウンターを当てて、アクセルを踏んでフロントを引っ張って行く。ただFRよりも操作は繊細だから、ちょっと操作が難しいかもしれないね。
TAKASHI:山田さんはいつもどのクルマで走るんですか?
山田:ハチロクだよ。でもね、氷上に行くといつもスポーツ4WDが欲しくなっちゃうんだ。やっぱりトラクションの掛かり方が、全然違う。コーナーでの自由度が、ほんと段違いなんだよね!
普段は4WD車で快適かつ安全に過ごして、年に一度ウインターシーズンは氷上を楽しむ。そんな贅沢な使い方ためだけに、4WDスポーツを買ってもいいなと思うくらいだよ。
そのくらい氷上走行って、面白いんだ。
TAKASHI:どうしてもっと早く言ってくれないんですか! 来年は絶対に、一緒に行きましょうね!
山田:行っとくけど、日が出ると氷溶けちゃうから、
メッチャ朝早いよ。
TAKASHI:えっ……。
写真:日産自動車