
みなさん、こんにちは! 自動車ライターの伊藤梓です。
私は、仕事でもプライベートでも相変わらずサーキット三昧な生活を送っております。
色々なレースを見て楽しんではいるのですが、最近はレギュレーションなどでザワつくレースが多かった気がします……。
ということで、今回は、ペナルティやハンデなどのレース規定を踏まえつつ、最近の各レースがどうなったのか? を詳しく見ていきたいと思います!
まずは、今年大きな動きがあったル・マン24時間レース。
写真:トヨタ自動車
これまで5連覇を果たしてきたトヨタは、今年からトヨタと同じハイパーカークラスに参戦しているフェラーリに優勝を奪われ、6連覇の夢はあえなく消えてしまいました。
これまでハイパーカークラスはトヨタが圧倒的実力を誇ってきましたが、今年はワークスチームが増え、フェラーリの他にも、ポルシェ、プジョー、キャデラックなど大メーカーがしのぎを削るクラスとなりました。
写真:トヨタ自動車
「やっぱり他のワークスが出てくるとトヨタも勝てないのかぁ……」と思ったそこのあなた! 実は、今回は実力差だけで負けた訳ではないのです。
その要因は
大きなハンデ。
「ハイパーカークラスの車両に性能差がありすぎる」ということで、なんと大会10日前に性能調整(BoP)が行われたのです。
スーパーGTをご覧の方はご存知だと思いますが、BoPによって勝者にハンデを与えることで、レースシーズンの最後の最後まで接戦を楽しんでもらおうという目論見があります。
ルマンのBoPも概ね同じ理由です。その結果、トヨタは、なんと
37kgのウェイトを積んでルマンを戦うことになってしまったのです。
写真:トヨタ自動車
「37kgってそんなに影響あるの?」と思うかもしれませんが、レーシングカーは1kgでも1gでも軽くなれば有利に働くもの。37kgのウェイトを搭載したことで、
1周あたり1.2秒も遅くなると推測されました。
重量が重くなれば燃費は悪化し、ブレーキもタイヤも厳しくなります。トヨタは善戦したものの、1位のフェラーリから
81秒793遅れという2位でフィニッシュしました。
個人的にBoPはあっても良いものだとは思いますが、WECのこれまでの4戦はBoPが入らなかったことと、BoPが決定されたのが開催10日前というどうしようもないタイミングだったことは正直納得がいきません……。来年はハンデを付けるなら付けるで明確にし、各チームが純粋に戦えるようにと祈るばかりです。
※編集部注:トヨタ以外も、フェラーリは24kg、キャデラックは11kg、ポルシェは3kgのハンデを課せられた。
そして、私が大好きなF1では、アルファタウリで戦う角田裕毅選手に対して
「これがペナルティ?!」という裁定が下され、しばらくショックを引きずりました😭
それが起きたのは、スペインGPの決勝。角田選手は15番手という位置からのスタートにも関わらず、着々と順位を上げ、入賞圏内でポジションを争っていました。
写真:Red Bull Content Pool
正直に言うと、角田選手の所属しているアルファタウリのマシンは、今年は上位を戦うのが厳しく、入賞できるかできないかギリギリのボーダーラインにいます。
そんな中でも、角田選手はマシンのポテンシャルを最大限に引き出す素晴らしいレースを見せており、スペインGPでは、特に見事なレース運びで
「これならポイントを取れる!」とファンは誰もが期待していました。
写真:Red Bull Content Pool
ところが、9番手を争っていた56周目。
後ろから良いペースでアルファロメオの周選手が迫ってきて、2人は1コーナーで並びかけました。イン側に角田選手、アウト側に周選手がいたのですが、お互い譲らずバトルをしていたかと思うと、周選手がふいにラインを外れ、ランオフエリアへと逃れるように出て行ったのです。
私自身が見ていた感覚では、確かにあのままのラインで走って行ったら接触した可能性もありますが、
角田選手の外側にはまだ走れるスペースがあったようにも見えました。
その結果、周選手はランオフエリアを走ったことで、タイヤカスなどを拾ってしまいペースダウン。
写真:Red Bull Content Pool
その後、特に審議にもならなかったので
「この件はお咎めなかったんだな」と思っていました。それが、レース後半になって、突然角田選手に
5秒のペナルティが科されるとの表示が!
これによって、角田選手はコース上では9番手でフィニッシュしたものの、その後5秒加算されて、12位ノーポイントという結果で終了してしまったのです😭
FIAによれば、1コーナーでのバトル時に、周選手が角田選手の前にいたタイミングがあったため、優先権は周選手にあり、角田選手はもっとスペースを残さなければいけなかったとのこと。
写真:Red Bull Content Pool
規定ではそうかもしれませんが、コーナーに入り込んでのあのバトル中に、減速してあえてスペースを空けるようなことは、無理な話だと思います。
百歩譲ってペナルティが科されたのは仕方ないにしても、FIA側はバトル直後にもっと早くペナルティの判断できなかったのか、5秒加算ペナルティではなく周選手と位置を入れ替えるような指示はできなかったのか(それなら10位入賞はできた)など、モヤモヤした感情が残りました……。
今はもう角田選手も前を向いているので、
「ファンとしても前向きに応援しなきゃ!」という気持ちではいますが、これからより納得できる裁定が下されることを祈るしかありません🙏
と、いうことで今回のコラムはやや愚痴っぽくなってしまいましたが! 何が言いたかったかというと、
レースには、コース上でのバトル以外にもレースの順位に絡んでくる要因がたくさんあるということです!
こういったレースの基本ルールを知っておくと、選手が単純に
「勝った、負けた」だけではなく、
奥行きのあるレース観戦ができるようになるので、レース観戦中級者になったら是非そういう目線でもレースを楽しんでみてくださいね♪ というお話でした。
次回からはまた楽しくコラムを書いていきますので、見捨てないでください😭笑
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伊藤梓(いとう・あずさ)
クルマ好きが高じて、グラフィックデザイナーからカーグラフィックの編集者へと転身。より幅広くクルマの魅力を伝えるため、2018年に独立してフリーランスに。
現在は、自動車ライターのほか、イラストレーターとしても活動中。ラジオパーソナリティを務めた経験を活かし、自動車関連の動画などにも出演している。
YouTubeチャンネル『伊藤梓の気ままな日常』ではF1を(ほぼ)毎戦、予選・決勝をYouTubeで実況生配信中!
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