
こんにちは、みんじど特派員のKです。
昨年もレポートいたしました、アメリカ最大のカスタマイズ&アフターパーツ見本市、SEMAショー。
今年も10月31日から11月3日までの4日間、ラスベガスのコンベンションセンターで賑々しく開催されました。
時折しもドル円レートが年初来安値の1ドル150円台を突破したタイミング。
ついつい長年の習性で1ドル100円計算をしてしまうワタクシ。物を買おうとするたび、円換算すると漏れなく1.5倍になる感覚に襲われ、手に取った商品をそっと棚に戻すことも一度や二度ではありませんでした(トホホ)。
ちなみにこちらが、とある1日にワタクシめがSEMAの会場内で食した昼食でございます。手のひらサイズの紙トレーにペラペラのチキンナゲット3枚とフライドポテトが少々。そして小さな袋に入ったBarbecue味のポテチ。しめて20ドルでございます。
日本円に換算しますと、3000円!
日本円に換算しますと、3000円!
大事なことですので二度言ってしまいました。
もともとアメリカはインフレが進んでいる上、大規模イベント会場ですので物の値段が割高になるのは致し方ないのですが、ポテチが4ドル=600円と気づいた時にはレジで卒倒しそうになってしまいました(トホホのホ)。
さて。そんなことはともかく、イベント自体は今年も盛況でありました。
GMやクライスラー、ホンダなどの大手自動車メーカーが出展を見合わせ、コロナ前の勢いを取り戻した……とまでは言えない印象も残りましたが、ブースを設けた業者間の商談は相変わらず活発に行われていたようです。ある意味トレードショーとしての本来の姿に回帰したような雰囲気も見受けられました。
そんな中で、とびきり注目されていた
ビックリドッキリメカたちをご紹介していきましょう!
こちらはアメリカでは「350Z」という車名で販売されていた日産のZ33型フェアレディZです。
ド派手なワイドボディもさることながら、驚くべきはエンジンルーム。ホンダのミニバンなどに搭載されるK24型直列4気筒エンジンが、なぜか横置きに搭載されているではありませんか。
そしてクルマの後ろに回って、さらにびっくり!
なんとリヤ全体がパイプで組まれたチューブラーフレームとなっておりまして、こちらにも同じくK24型エンジンが搭載されているのです。そう、こちらは
前後横置きのツインエンジンに仕上げられた4WDのZ33なのであります。
もうひとつエンジンスワップで印象的だった国産車が、こちらのGRスープラ。
なんと昨今の復活劇で話題の
マツダ製ロータリーエンジンを積んでいるではありませんか! しかも13B型のローターハウジングを4つ連ねた
4ローター仕様であります。
国産車で会場の話題を掻っ攫った一台といえばこちら。三菱ミニキャブをタイムアタックマシンに仕立てたカーボン製ワイドボディ仕様です。
単なる外装コスメであればそこまで話題にはならないのですが、なにせ製作元が全米のタイムアタック競技会やヒルクライムで有名なパイクスピークの参戦実績を誇るプロショップ。
これでマジでタイムアタックするん!?と大バズり。アメリカのKトラブーム、ここに極まれり!と感動いたしました。
地元アメリカのクルマも負けていません。
こちらは第2世代のポンティアック・トランザムをベースにしたV8ツインターボ車両。
ハコの中身を入れ替えたというレベルではなく、エンジンやサスペンションパーツを搭載する完全チューブラーフレームに、トランザムの外板を上から被せた代物です。
エンジンとトランスミッションは、ほぼ室内と言っていい位置に搭載され、エンジンルームに見えるのは幾何学的に結びついたサスペンションのアーム類。
何がどう動いてどうなるのかまったくわからない、もはやアートの世界です。
イギリス出身の実業家スティーブン・ウィン氏が立ち上げた新星DMC(デロリアン・モーター・カンパニー)の登場で、にわかに注目度が上がっているデロリアンことDMC-12。
どうしてもバック・トゥ・ザ・フューチャーのイメージが強いのですが、こちらはオリジナルのワイドフェンダーを装着し、カスタム車両として高い完成度を誇る一台です。
もともとV6エンジンをリヤに搭載するRRレイアウトのデロリアンですが、こちらはみんな大好きV8にスワップした上、ツインターボに仕上げています。リヤバンパー下にターボとツインエキゾーストを取り回したオリジナルの配管がエグいですね。
古いクルマを新しい技術で「進化」させる試みも、SEMAで毎年楽しみにしているトピックです。
今年印象に残ったのが、こちらの57年式ポンティアック・チーフテン。6.0LのV8エンジンに載せ替えた上、さらにベルト駆動でエンジンをアシストする50kWの直流モーターを加えた
「E-Charger」システムを搭載しています。
いわゆるマイルドハイブリッドを後付けするようなもので、50%の排ガス低減と150ポンドフィート(約203Nm)のトルク増幅を実現するそうです。モーターがやたらとデカいのが非現実的ですが、V8スワップしたショーカーにはむしろ映えポイントと言えるでしょう。
やたらとデカいで、もうひとつ気になったのがこちら。
スーパーチャージャーのメーカーであるプロチャージャーの関連企業Inovairが参考出品した「3200GS」というブロワーです。
本来は航空機のジェットエンジンを始動させるためのスターターとして使われる物だそうで、これひとつで
ドラッグレースのトップフューエル3台分のエアフローを供給するそうです(白目)。
そしてそして、デカいで忘れてならないのが、ラスベガスの新名所としてオープンした
球体型複合アリーナ施設の「Sphere(スフィア)」です!
内部はコンサート会場になっていて、SEMAの期間中はU2のライブが開催されていました。そして表面は超大型のLEDビジョンになっておりまして、時間ごとにまるで生き物のようにさまざまな模様に変化します。
昨年フォードが出展を見合わせたスキをついて、セントラルホールの一等地にブースを構えるようになったトヨタとレクサス。
ランクル250&レクサスGXの登場に合わせ、まるで
ランクル祭りと言えるようなブース展開で会場を賑わせました。ランクル250はノーマル車両の展示はあったものの、カスタマイズの出展はなし。来年から我々の度肝を抜くようなカスタマイズが登場することを期待しましょう!
“走ってナンボ”なみんじど部として見逃せないのが、こちらOPTIMAバッテリーが主催しているレースイベント「OPTIMAウルティメイト・ストリートカー・インビテーショナル」の参戦車両です。
こちらのND型ロードスター(アメリカではMX-5ミアータ)には、
フォードの2.3L直4エコブーストがしれっと搭載されておりました。
オートクロス、日本で言うところのジムカーナに近い競技の点数を競うレースなのですが、なんと採点項目には
「クルマのカスタマイズの完成度」も含まれております。
つまり、
速くてかっこいいクルマがチャンピオンになる可能性を秘めておりまして、ストリートカーをいじって走らせるのが大好きなプライベートチューナー兼ドライバーが全米からこぞって参加する草レースとなっております。
個人的にビビビと来たのが、こちらのC10トラックです。
「OPTIMAウルティメイト・ストリートカー・インビテーショナル」におきましては、
「もっと競技に向いたベース車両が他にあるだろう」というツッコミは無粋でございまして、
自分が好きなクルマ、乗りたいクルマをいかにかっこよく、そしてよく走り、よく曲がり、よく止まる車両へとアップデートしていくかがポイントなのでございます。
いかにもオートクロスには不利そうなC10ですが、こちらは荷台にキャノピーを載せたSUVルックでローダウンを行い、フルレザーの美しいインテリアまで備わっています。
走るショーカーでもなく、ショーに出られるレーシングカーでもなく、あくまでオーナー自身が
「俺がかっこいいと思うストリートカー」を製作し、競技に参戦するわけであります。いいですね。
クルマを使った遊び方においては、どこの誰よりも柔軟で自由な発想力を持つアメリカ人。それを象徴するような、新しい乗り物もフィーチャーされていました。
HOONIGANのデモランエリアが開放され、参加者が順番待ちして自由に楽しんでいたのが、こちら。「Razor」というメーカーが商品化した
「クレイジーカートXL」です。
いわゆる台車に電動モーターとバッテリー、ギヤ比が1:1の小径ステアリング、自由自在のドリフトを実現するレバーを取り付けた電動カートで、ハンドルを切りながらレバーを引くとあっさりケツが出て瞬時にドリフトモーションへと突入します。初めて乗ったであろう参加者もすぐコツをつかんで、楽しそうに乗っていました。
こんな形で誰でも気軽に楽しめる体感型のカーエンターテイメントも提供してくれるSEMA。その奥深さに今年もすっかりヤラレテしまいました。
写真:平野 陽
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みんじど特派員 K
自動車専門誌の編集プロダクション勤務を経て、フリーのエディター兼ライターとして独立。
決して表に出てこないが、恐らく誰もが一度は読んだことがあるほど多くのメディアに寄稿する、まさに自動車メディア界のドクターK(?)。
SEMAショーなどの海外取材はもはやライフワークと化しているが、オオタニサーンの応援がメインじゃないかと疑われている日々。