
みなさんゴキゲンよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
千里の道も、一歩から。初心者でもクルマを目一杯楽しんで、最後の最後は「ニュルブルクリンクへ走りに行こう!」というこのコラム。
今回は、大幅改良された新型ロードスターの試乗会にTAKASHI君と参加してきたので、その模様を振り返ります。TAKASHI君、かなりショックを受けています……。
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山田弘樹:(以下・山田):ロードスターの大幅改良モデル、やばかったね!!
編集部TAKASHI(以下・TAKASHI):……。
山田:TAKASHI君……?
TAKASHI:……あまりにショックで、言葉が出ません。
山田:……あ…はは(汗)。
TAKASHI君は前期型オーナーだもんね。
TAKASHI:一昨年
「KPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)」が追加されたときも、
「すごく乗りやすくなった!」と思いましたけど、それほど驚きませんでした。
でも今回の改良は……すご過ぎます。
山田:今回の改良は先進安全機能とマツダコネクトの進化が中心で、走りは
「アシンメトリックLSD」の採用と
「電動パワーステアリング(EPS)の進化」くらいだったもんね。
TAKASHI:あと山田さんに
以前レポート頂いた
「DSCーTRACK」も搭載されましたね!
山田:あっ、そうだったね。でもDSCーTRACKは、サーキットじゃないと試せないしな。
>>【コラム】そうだ、ニュルへ行こうよ!Vol.14 ~マイチェン後のロードスターに搭載される「DSC-TRACK」を体験してきた!~
TAKASHI:
つまり、デフとEPSだけですよ!?
山田:でもそれが、すごかった。スーッと走り出して、最初のカーブでわかるよね。
TAKASHI:ステアリングを切り始めたときの質感が、これまでとはまるで違います。最初からジワーッと手応え感が出てる。
旧型は大げさに言うと、切り始めで
スコッ! って抜けてから、ロールが安定して曲がる感じがしました。
山田:ある意味その“スコッ!”が、俗に言うロードスターの
“ヒラリ感”を演出していたのかもしれないね。
でも僕はその感じ、あまり好きじゃないんだ。
“ヒラリ感”というより、
“ヒヤリ感”というか。
TAKASHI:
うまい! 山田くんに座布団1枚!
山田:今回TAKASHI君が、自分のNR-Aを比較用に持ってきてくれていたでしょう? あれ、とってもよかったよ。
NR-Aも旧型だとEPSの切り始めに“抜け感”があるんだけど、ダンパーがロールスピードを抑えてくれるから、“スコッ!”となった途端に“グッ”と踏ん張ってくれる。さすがはパーティーレースのベース車両だよね。
TAKASHI:
でしょう!? でしょう!?(必死)
山田:
だから新型のNR-Aは、もっと良いんだろうね! あっ……。
TAKASHI:……(涙)。
山田:ごめん、ごめん。
TAKASHI:わかってます(笑)。
「DSC-TRACK」の体験と合わせて、サーキットで乗ってみたいですね。いや……今はまだ心の準備が……(笑)。
しかしEPSの制御だけで、あんなにクルマの動きが変わるものですかね?
山田:それが
アシンメトリックLSDの効果なのかねぇ。
TAKASHI:そもそも、このLSDはどんな効果をもたらしてくれるんですか?
山田:詳しい説明はぜひ
carview!での試乗記を読んで頂くとして、その狙いは実にマツダらしいよ。
>>1t超もその魅力は輝きを増すーー新型ロードスターは“小さな”変化で走りを“大きく”進化させた
このLSDはTAKASHI君のNDにも付いている
「スーパーLSD」がベース。その加速側と減速側に作動制限のカムを付けたものなんだけど……。
TAKASHI:に、日本語でお願いします……(汗)。
山田:要するに、アクセルオフのカム角を大きめにして、アクセルオン側は少なめにしたということだね。
TAKASHI:1.5WAY式LSDみたいな感じなんですかね? どうして両方同じカム角にしないんですか??
山田:まずは、コーナーにアプローチしたときの姿勢を安定させるため。
ロードスターはブレーキングやアクセルオフをしてコーナーに入って行くと、リアがフワッと軽く感じるときあるでしょ?
TAKASHI:ありますね! うまいドライバーは、それを利用して曲がるんですよね?
山田:確かにそうなんだけど、普段の運転もあるでしょ?
目測を誤ってオーバースピードでコーナーに入っちゃったときとか、雨の日とか。
そこでLSDが作動して、後輪の左右差を減らしてくれたら……。
TAKASHI:スピンしにくくなりますね!
じゃあどうして、加速側は角度が少ないんですか?
山田:ロードスターは内輪接地がいいから、それほど作動制限する必要がないんだろうね。効かせ過ぎても、アクセルオンでスピンしやすくなるし。
TAKASHI:なるほど。
山田:そして一般的に言う機械式LSDのようなイニシャルトルクがほとんど掛かっていないから、カーブはオープンデフのように曲がりやすい。
TAKASHI:だからコーナーのアプローチは安定しているのに、カーブが軽快なんですね!
山田:そういうこと! そしてEPSの操舵感が安定しているから、トータルで質感が高く感じるわけ。
TAKASHI:ただ旧型には、電気系のアップデートはできないんですよね。LEDヘッドライト、私のロードスターに付け替えてみたかったんだですけど……(苦笑)。
ということは、このアシンメトリックLSDを組めば、ボクのNR-Aもかなり良くなるんじゃないですかね!?
山田:そうかもしれないね。でも本当にEPSとデフだけで、こんなにクルマの質感変わるかな?
TAKASHI:足周りには、まったく変更がないと言ってましたよね。
山田:本当なのかなぁ? 運転した感覚では、特にフロントのダンパーがワンランク上がったような印象なんだよね。私のレベルだと、LSDの効きはほとんど体感できなかった。
TAKASHI:確かにボクも、ただただ運転しやすいと感じただけでした。
山田:本当はそれこそが、最上のセッティングなんだけどね。
あとはKPCの制御も、そつなく効いていると思う。アシンメトリックLSDの設定がない「S」に乗ったとき、それは感じた。
ただ「S Special Package」を新旧で乗り比べたとき、あまりの違いに驚いたんだよ。そのときちょうど雨が降り出したんだけど、新型と比べてしまうと旧型は、まるで接地感がなくてちょっと怖かった。
TAKASHI:何はともあれそのくらい、新型が良くなったということですね! ますますNR-Aにサーキットで乗りたくなくなってきました!(笑)
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山田弘樹(やまだ こうき)モータージャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。
こうした経験を活かし、現在はモータージャーナリストとして執筆活動中。愛車は86年式のAE86(通称ハチロク)と、95年式の911カレラ(Type993)。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。