
みなさんゴキゲンよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
千里の道も、一歩から。初心者でもクルマを目一杯楽しんで、最後の最後は「ニュルブルクリンクへ走りに行こう!」というこのコラム。
今回は、軽自動車の耐久レース「K4GP」にワタクシ山田が参戦してきたので、その模様をレポートします。
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編集部TAKASHI(以下・TAKASHI):山田さん、
「K4GP」楽しかったですねー!
山田弘樹(以下・山田)
ウィザムカーズさんがエントリーするケータハム セヴン170に乗りました。
TAKASHI:私、K4GPにすごく興味あったんですよ。
軽自動車なら敷居が低くて、レースを始めやすそうじゃないですか?
山田:K4GPは歴史も長いし、しっかりしたチームも多いからね。
ホームページのレギュレーションを見ながら車両を作るのも楽しいし、いきなりレースに出ないでも練習走行会に参加したりもできる。先輩チームに色々教えてもらいながら慣れて行けば、レースのことを覚えられるよね。
TAKASHI:参加台数も127台と多くて、ビックリです。
3台揃って出場していたアルトワークス、かっこよかったですね!
山田:あとはザウルスJr.をベースにしたポルシェ917とか、カプチーノベースのコルベットなんかもいたね。
かつてはフォードGT40とか、トヨタ7のレプリカまでいた。ボクの友人なんかはビートをベースにアルファ・ロメオ Tipo33 ストラダーレを作って、「BEAT33」なんて楽しんでいたよ。
TAKASHI:うわー、なんかワクワクしますね!
山田:K4GPはもともと、そうやって
「軽自動車で遊ぼう!」って始まったんだ。創設者である「マッドハウスの杉山」さん(故・杉山 哲氏)が、そうやってお手製レーシングカーで遊ぶアイデアを出して、周りの友達と一緒に盛り上げたんだよ。
最初の頃はこうしたマシンたちが先頭集団に並んでね。それはもう可愛らしくて壮観だった。
TAKASHI:単なる軽自動車の耐久レースじゃなかったんですね。
山田:そう。
ロマンがあったよね。
TAKASHI:軽自動車なら、それがやりやすかったというわけですね?
山田:うん。ただ速さを競うだけの競争じゃなかったんだ。
「小さなル・マン」をやろうとしていたんだよね。
TAKASHI:なるほど! そこがK4GPのルーツだったんですね。
そういう意味でいうと今回山田さんが乗った「ケータハム セヴン170」は、凄かったですね。ちょっと反則じゃないですか?(笑)
山田:ははは。でも
立派な「軽自動車」だから。
スーパーセヴンのシャシーに軽自動車のエンジンや駆動系を載せるのは、日本からのアイデアなんだよ。それが本場イギリスやヨーロッパでも、ウケた。
そういう意味でいうと
日本が誇る「軽スーパースポーツ」としてもっと胸を張っていいと思うな。
TAKASHI:スズキ製コンポーネンツですよね!
エンジンは直列3気筒ターボが85PS! 確かに軽自動車の自主規制は超えているけど、可愛らしい数字ですね(笑)。
山田:でも車重は、ロールバーと燃料を併せても450kgを切っているから、パワーウエイトレシオは約5.2kg/PSだよ。
TAKASHI:よっ…450kg! パワーウエイトレシオが5kg/PSを切るとかなり速いスポーツカーと言われていますよね。楽しそう!
山田:うん。そのちょうどよさが
「ケントの再来」なんて言われたね。
TAKASHI:ケ ン ト ?
山田:フォードの直列4気筒OHVをベースにKENTカムでチューニングしたエンジンでね。
セヴンの簡単な歴史は
コチラをどうぞ(笑)。
TAKASHI:実際走らせたセヴン170は、どうだったんですか?
山田:気持ち良かったよー!
サーキットでは先代の「160」しか走らせたことがなかったんだけど、相変わらずコントローラブルだった。
ステアリングなんかちっちゃいからさ、カウンターも決めやすいし。軽さからしてFJ1600みたいな感じだけど、フロントエンジン・リアドライブだから動きはもっと穏やか。
TAKASHI:乗ってみたい!!
山田:でもね、今回はキツかった(笑)。
TAKASHI:雪降りましたもんね……(苦笑)。
山田:セヴンは軽すぎて、気温が低いとタイヤがほんと温まらないんだ。それでも「ネオバ(ADVAN NEOVA AD09)」だから、なんとかグリップしてくれたけど。
雨は想定していても、雪対策まで思いつかなかった。
TAKASHI:前日の予選(ドライ)では総合5番手だったのに、第一スティントでどんどん抜かれちゃいましたもんね……。
山田:うっ…。だってセヴンはコーナーが命なんだよ。
5MTのギア比もあって、燃費走行すると4000回転までしか回せないから、ストレートではみんなにバンバン抜かれちゃうんだ。
TAKASHI:クラスごとに給油量が決められているのも、このレースの面白いところなわけですね。
山田:TAKASHI君が出たカートの耐久レース
「K-TAI」みたいでしょ?
JOY耐やメディア4耐もそうだけど、給油量が決められているのはスピードの抑制につながるし、そこで速く走らせる技術も学べるから、アマチュアにはいいレギュレーションだよね。
TAKASHI:途中から速くなっていったのはなぜですか?
山田:ウエットでペースをセーブしていたから、燃費がラクになったんだよね。そこから挽回できた。
TAKASHI:なるほど。
山田:ドライだったら、もっとラクなレース展開だったと思うよ。
あとはクラス優勝した「マーシャンクレート・クラブマン(マークレケンウッドDXLコペン)」と、3位に入った「テクモと愉快なお客たち(テクモアルトン23ばんたぼ)」の戦略がとてもよかった。素晴らしいチームだったね。
TAKASHI:でもクラス2位は、すごいですよ。本当はクラス優勝だけじゃなくて、総合でも上位を狙っていたと思うんですけど……。
山田:それがレースだよ。
今回なんで勝てなかったのかを考えて、それをクリアして行くのが面白いから続けられるんだよね。
TAKASHI:あとウィザムカーズのピットは、ホスピタリティも完璧で憧れちゃいました。
山田:だよねー。ストラテジストもいたし、メカニック君もがんばってくれた。
TAKASHI:ウィザムカーズさんが用意してくれたケータリングの「おひさまパン」も美味しかったですね!(笑)
山田:そうやって楽しむのも、耐久レースの醍醐味なんだよ。
TAKASHI:K4GP出てみたいなぁ!
山田:チャンスが作れるといいね!
写真:雪岡直樹
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山田弘樹(やまだ こうき)モータージャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。
こうした経験を活かし、現在はモータージャーナリストとして執筆活動中。愛車は86年式のAE86(通称ハチロク)と、95年式の911カレラ(Type993)。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。