
みなさんゴキゲンよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
千里の道も、一歩から。初心者でもクルマを目一杯楽しんで、最後の最後は「ニュルブルクリンクへ走りに行こう!」というこのコラム。
今回はなんと、マセラティのレーシングカーでサーキットを走ってきちゃったお話です。だいぶ盛り上がったので前後編に分けてお届けします。
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山田弘樹(以下・山田):ちょっと前の話になるけれど、
モデナで「マセラティGT2」に乗ってきました!
編集部TAKASHI(以下・TAKASHI):
モデナの
マセラティで
GT2ですか!?
ちょっとアタマがバグってきます(汗。
山田:マセラティのホームタウンはイタリアの
「モデナ」なんですね。そこで、
マセラティGT2というレーシングカーに乗ってきたということ。
TAKASHI:モデナといえばフェラーリのイメージでした。「360モデナ」とかありましたよね。
山田:懐かしいね(笑)。フェラーリの現在の本拠地も同じモデナ県の
「マラネロ」。ちなみに
エンツォ・フェラーリの生家はフェラーリ・ミュージアムになっています。
TAKASHI:なるほど! ところでマセラティGT2ですが、そんなスポーツカーありましたっけ……? 新車ですか?
山田:いやいや、マセラティGT2は
「MC20」をベースにGT2規格で作られたレーシングカーなんだ。確かにややこしいから、MC20 GT2でいいと思うんだけどね。マセラティもこの一台に、気合いと期待を込めているというわけでしょう。
ちなみに写真で見ると、こんな感じ!
>>『Car Watch』での試乗記はこちら!
TAKASHI:うわっ!
めちゃくちゃガチなレーシングカーじゃないですか!? すごっ…。よくこんなの乗ろうと思いますね……。私ならチビりそう……。
山田:いや、最初話が来たときは
「まぢか…汗」とフリーズしたよ。
国際ライセンスを持っていて、レース経験があるジャーナリストをマセラティが探していて
「乗ってみませんか♪」ってお誘いが来たんだ。
TAKASHI:なんだかずいぶん軽いノリですね。
さすがイタリア🇮🇹🍕
山田:いい意味でね(笑)。一応マセラティも、審査はしているみたいだから。決まればすごくスムーズなのはいかにもイタリアだよね。
TAKASHI:でも山田さん、ご存じの通り
「みんじど」は初心者のためのコラムですよ?
さすがにマセラティGT2には
現実味が薄い気がするのですが……?
山田:いやいや、だからこそ紹介したいんだ。TAKASHI君はクルマ大好きだからこういうの見ると、素直にワクワクするでしょ?
きっとみんなの中にも、そういう気持ちってあると思うんだよね。
TAKASHI:でも「オレには関係ないや」みたいな気持ちになっちゃいそうな……。
山田:そうそう。とてもじゃないけど買えないし、乗りこなせる気もしないから「関係ないや」って思っちゃう。
でもさ、見ているだけでもシンプルにドキドキするじゃない?
そして、
「もし運転したら、どーなっちゃうんだろう!?」って思わない?
TAKASHI:
思いますっ!(単純)
山田:そういう気持ちが大切なんだよ、ってみんなに伝えたかったんだ。
TAKASHI:ちなみにお値段は……?
山田:
44万ユーロです。
TAKASHI:いまは1ユーロが約170円だから……ひゃー!
山田:でもね、実はひとつ下のGT3規格の
「フェラーリ296GT3」は50万ユーロでもっと高いんだよ。
TAKASHI:どちらにしろとんでもない額……。
50万円なら世帯持ちで家のローンが残っているサラリーマンの私でも買えるんですが(笑)。
でも、下記カテゴリーより車両価格が安いって確かに面白い逆転現象ですね。
山田:狙いもそこにあるんだ。いまGTカーレースで世界の中心になっている
「SRO」って組織があるんだけどね、そこが先鋭化しすぎたGT3カテゴリーの反省から、GT2シリーズを2018年に立ち上げたんだ。
TAKASHI:日本だとSUPER GTのGT300クラスに参加しているGT3マシンたちが、SROのレギュレーションで戦っていますよね。
山田:そうそう。GT3カテゴリーは最初、先鋭化しすぎて衰退してしまったGT1/GT2クラスの反省から作られたんだ。
マシンのコストを落として、ジェントルマンドライバーが参加しやすいカテゴリーにしたんだよね。
でもその人気が高まったことでメーカーが積極的に参入して、マシンの開発競争も激化してしまった。あとドライバーも複数で参加するんだけど、プロ同士の組み合わせがほとんどになっちゃったんだ。
TAKASHI:GT300クラスがGT3車両を導入したのも、いちからクルマを作っていくJAF-GTマシンよりコストが抑えられるからでしたもんね。レースって、そうやって同じ道をたどるんですねぇ……。
山田:でも、盛り上がるのはいいことだから。だからこうやって、時期を見て方向性を正して行く必要があるんだよね。
TAKASHI:なるほど。じゃあGT2マシンって、GT3よりも低コストなんですか? 格式は上なのに、マシンは遅い……?
山田:ボクも完全には把握できていないんだけど、コストは正直同じくらいかな。でも、格式的には上だからバジェットが抑えられていることになるよね。
あと車両のベースが
“スーパースポーツ”になるから、
マシンパワーはGT2の方が高い。今回乗ったマセラティGT2だと
600馬力オーバーかな。BoP(バランス・オブ・パフォーマンス)によってパワーは上下させられるから、最大でそのくらいということだけど。
TAKASHI:
ろっ…ろっぴゃくばりき!?(白目)
全然アマチュアレベルじゃないじゃないですかッ!(震)
山田:いやいや、空力性能を制限して、コーナリング性能を抑えているみたいなんだ。中・高速コーナーで速度が出過ぎなようにしているらしい。
TAKASHI:
で! で! 乗ってどうだったんですか!?(フゴフゴ)
山田:それがさ、すごく乗りやすいんだ。
TAKASHI:またまたぁ。
マセラティにリップサービスしてないですか??笑
山田:
そんなことはない(笑)。もちろん
スポーツドライビングの基本は必要です。
でもね、それをマジメにやったドライバーなら普通に乗れる。そこから速く走らせられるかは、また別です。
TAKASHI:きちんと作られたレーシングカーって、すごく乗りやすいって話を聞いたことがあります!
山田:それそれ。そしてSUPER GTみたいなプロフェッショナルレースとは違って、
ワンメイクのカスタマータイヤを使うから、ジェントルマンドライバーでもがんばれば扱えるんだよね。
これは全てのスーパースポーツにも言えることだけど、
公道用タイヤを履いているよりも、スリックタイヤを履いたレーシングカーの方がグリップ感はずっと高いよ。
TAKASHI:確かにいまどきのスーパースポーツって、ちょっと無理がありますよね(苦笑)。
ただ走っているだけならいいけど、その性能を発揮する場所なんてサーキット以外にないですし……。
山田:そういう意味で言うとサーキットまで自走して行けるポルシェ「911 GT3 RS」のようなクルマはとても便利だよね。あとはこのマセラティGT2みたいに、サーキット専用で走らせる方が、よっぽど安全にスポーツカーを楽しめると思う。
TAKASHI:あっ、今月の文字数既にオーバーです(笑)。
山田:もっと面白い話が沢山あるから、続きは次号にて!
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山田弘樹(やまだ こうき)モータージャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。
こうした経験を活かし、現在はモータージャーナリストとして執筆活動中。愛車は86年式のAE86(通称ハチロク)と、95年式の911カレラ(Type993)。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。