
みなさんゴキゲンよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
千里の道も、一歩から。初心者でもクルマを目一杯楽しんで、最後の最後は「ニュルブルクリンクへ走りに行こう!」というこのコラム。
今回はワタクシ山田が、伝説の
「TRD N2 AE86レビン」に乗った時のお話です。夏の暑さの抜けきらない筑波サーキットのパドックからお届けします。
++++++
編集部TAKASHI(以下・TAKASHI):いやー、カッコよかったですね!
自分、ハチロクにはまったく縁がなく、
マンガ『頭文字D』のクルマぐらいのイメージしかなかったんですけど、
ホンモノのオーラというか……ちょっと感動しちゃいました!!
山田弘樹(以下・山田):
…………。
TAKASHI:あらっ? どうしたんですか? ヤマダさーん!
山田:いやぁ……ホッと……しましたぁ……(放心。
TAKASHI:
だだだだだ、大丈夫ですか!?
山田:N2走らせるの、準備段階から手伝っていたからさ。なんか気が抜けちゃって。
TAKASHI:確かに歴史的なレーシングカーを試乗するのって、むちゃくちゃ緊張感ありますよね。山田さん乗る前、
顔が真っ青でしたモン(汗。
山田:ちょっと笑ってたくせに……。
TAKASHI:あはは? そんなことないですよぉ。人聞き悪いなぁ(グヘヘ。
でもあそこまで山田さんが緊張したのを初めて見ました。やっぱそれくらいのクルマってことですよね。
山田:乗る前までは
「つっても200馬力程度のハチロクでしょ? タイヤもスリックだし、普通に乗ることくらいできるよ!」って考えたんだけど……。
TAKASHI:けど?
山田:いざ乗る段階になったら、急に緊張してきたのよ。
レーシングカーの経験が少ないのもあるけど、やっぱりオーラあったよね~。
TAKASHI:特に今回は、博物館で展示されるクルマでしたからね。
※展示は10月中旬ごろからの予定。詳しくはhttps://fuji-motorsports-museum.jpを参照。
それに山田さん、オーナーでもあるくらいハチロク大好きですからね!
マニアとしても
「N2に乗れる」って、とっても嬉しかったんじゃないですか?
山田:もっちろん! こんな経験、フツーはできないモン。
TAKASHI:というわけで今回は、
「TRD AE86 N2」試乗インプレの、こぼれ話です!
山田:
こぼれっぱなしです!
\carview!での試乗インプレはこちら!/
>>走り出すとそれは、紛れもなくハチロクだった…伝説の「TRD N2 AE86レビン」が筑波で再び蘇った日
TAKASHI:山田さん、ぶっちゃけ、
“エヌツー”の運転って難しいんですか?
山田:さっきも言ったけど、フツーに運転するだけならタイヤも太いし、パワーも200馬力そこそこだから、TAKASHI君でも運転できちゃうと思うのね。
ただ……。
TAKASHI:ただ?
山田:
ものすっごく、ハンドルが重たい!
TAKASHI:パワステ、取っちゃってるんですよね?
山田:あの頃のレーシングカーに、パワステなんてないからね。
軽くするために、快適装備は全部取っちゃう。
TAKASHI:最近はレーシングカーもエアコン付いているのに……。
エヌツーは車重も830kgしかないんですよね? それで200馬力だと……パワー・ウェイト・レシオは4.15kg/PS!
山田:パワー・ウェイト・レシオだけで見れば現代のスポーツカーで、それ以上のクルマは結構あるよ。シビック タイプRだって約4.3kg/PSだからね。
TAKASHI:逆に言えば、
ハチロクなのに最新のタイプRよりすごいんだ……(汗
山田:そうだね(笑)。30年以上前のテンロクとして考えたら、ものすごいことだよね。
とはいえN2って、当時のトップカテゴリーを走ったレーシングカーですから。
そんなN2で大変なのは、その“重ステ”をレーシングスピードで走らせないと、きちんとタイムが出せないことなんだ。
TAKASHI:つまり?
山田:ブレーキもサーボなしで重たいから、コーナーに突っ込むなら本気でブレーキングして、
「おりゃー!」って曲げないといけない。でも恐れ多くてブレーキロックすら、できなかったよ。
TAKASHI:いやいや、博物館まで無事に送り届けてください……(真顔。
山田:つまりさ、昔のレーサーはこういうマシンを本気で走らせていたわけだよね。そういう心構えがないから正直、かなりしんどかったです。谷口信輝選手にもドライブしてもらったけど、さすがはプロ。
逆に今のレーシングカーはパワステ付いてるけど、その分コーナリングGやブレーキングGが凄いから、首を鍛えないといけないけよね。あとはブレーキ踏力をきっちり出せないと乗れない。
そういうところで鍛えられているから、谷口選手はさっと乗れたんだろうね。
\谷口選手のインプレ動画はこちら/
TAKASHI:でも1枠走って、
「もう大丈夫!」って言ってましたね(笑)。もしN2にパワステが着いてたら、もっと楽に乗れます?
山田:だろうね。高速コーナーでオーバーステアが出ても、素早くカウンター当てられるだろうから。
TAKASHI:あーなるほど。
私のような運動不足の“もやしっ子”だったら一気にスピンしちゃいそう……。
やっぱりパワステ取らない方がよかったんじゃないですか……?
山田:だから当時のエンジニアは、そんなこと許しちゃくれなかったわけです(笑)。そこも含めて乗りこなすのが、プロなんだよね。
あの土屋圭市さんでさえ、現役のときN2には乗せてもらえなかったらしいよ。
TAKASHI:へーーー!!!
だからN2に強い憧れを抱いていて、
「N2決戦」が始まったんですね。
やっぱり
レーシングドライバーはアスリートなんだなぁ。ハチロクってやっぱり、ロマンがありますね!
山田:そんなN2仕様のTRD号は、富士スピードウェイホテルにある
「富士モータースポーツミュージアム」に無事、搬入されました!
TAKASHI:おーパチパチパチ!
山田:このマシンはレースこそ出ていないけれど、TRDが最後に製作した由緒ある「カローラ/スプリンター グランドカップレース」仕様のAE86 N2です。
ハチロク好きはもちろん、レース好きのみなさんも、ぜひその姿を見に行ってくださいね!
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山田弘樹(やまだ こうき)モータージャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。
こうした経験を活かし、現在はモータージャーナリストとして執筆活動中。愛車は86年式のAE86(通称ハチロク)と、95年式の911カレラ(Type993)。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。