
みなさんごきげんよう!
モータージャーナリストの山田弘樹(やまだ・こうき)です。
クルマ好きの、クルマ好きによる、クルマ好きのためのコラム「そうだ、ニュルへ行こうよ!」。
第5回目となった今回は、みんカラスタッフTAKASHI君と一緒に、新型シビック タイプRを鈴鹿サーキットで試乗してきました!
そして、あのクルマの偉大さを再認識することになりました。
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山田弘樹(以下:山田):シビック タイプRすごかったね!
TAKASHI:しかも鈴鹿で!
山田:そうだよ。みんな簡単に
「鈴鹿、スズカ」なんて言うけどさ、あの国際コースを走れるだけでも、すごいことなんだ。
TAKASHI:グランツーリスモで予習したんですが、実際のコースは迫力が違いました。セバスチャン・ベッテルが
「世界一鈴鹿が好き」と言うのも納得です。
山田:SUPER GTが走るサーキットの中でも旋回Gが一番高くて、最もタイヤの負担が掛かるコースだと言われているんだよ。初めて走った時はもう、ただただ怖いだけだった(笑)。
TAKASHI:でもシビック タイプRだと怖くなかった。ほんと楽しくて、
「このまま、ずーっと走っていたい!」と思いました。
山田:それはTAKASHI君がある程度サーキット走行をしているせいもあるだろうね。あとバイクに乗っているから、高い車速に慣れているせいもあるよ。
でも冷静に考えると、あの速度域をアマチュアドライバーで走れるんだから、
シビック タイプRは相当ヤバいよ。
TAKASHI:確かにそうですよね。本当にすごいことだと思います。
山田:それができるのは、まず車体や足周りの剛性が高いから。だからストロークのあるサスペンションにすることができて、動きが穏やかになる。
TAKASHI:運転していてピーキーなところが全くありませんでした。リアもどっしりしていて、安心してターンインできました。
山田:縁石をまたいでも、車体がフラットだもんね。すごくしなやかにバネ下が上下動して、ちょっと感動した。
TAKASHI:エンジンもパワフルでした。
山田:出力的には10PS/20Nmしか上がっていないんだけど、冷却機能が向上したからパワーを発揮し続けられるんだよね。
TAKASHI:フロントバンパーの開口部なんて、先代モデルに比べてそんなに大きくなったとは思わないんですけどね。
山田:開口部は大きければいいってモンじゃないんだよね。空気抵抗が少なくて、空気の流れる速度が速くなる形状にすることが大切なんだ。
あとはボンネット側できちんと空気を抜いているのが効いているみたいだよ。新型は風洞で空力性能をさらに煮詰めたんだね。
TAKASHI:今回の先導車は先代のリミテッド・エディションだったから、特に違いがわかりましたよね。先導してくれたGTドライバーのおふたり(伊沢拓也選手と武藤英紀選手)も、かなり大変だったみたいですし(笑)。
山田:そうなんだよ。いくつか記事でそのことを書いたときに「それは先導してくれたドライバーがペース合わせてくれたんだよ!」みたいな書き込みがあったんだけど(笑)、伝えたかったのはそういうことじゃないんだよね。
TAKASHI:もちろん基本的な運転能力は必要だけれど、クルマの差が劇的に違いましたよね。
山田:そう、がんばらなくてもコーナーやストレートで追いついちゃうんだ。
むしろ自分のようなアマチュアドライバーが乗っても、余裕をもってハイスピードドライビングできるポテンシャルに注目して欲しいんだよね。
伊沢拓也選手が4月に鈴鹿をアタックしたタイムは
2分23秒120でしょ?
当日は気温が高かったこともあるけど、タイム的に今回の試乗会は
2分30秒フラットくらい。つまりまだまだ新型シビック タイプRには、全然余力があるということなんだよ。
TAKASHI:うわー、それすごいですね。
山田:そんな新型シビック タイプRだったわけだけど、
"みんじど"的にはどうかな?
TAKASHI:ボクは
ものすごく欲しい! と思いました。ただ……。
山田:ただ?
TAKASHI:やっぱり
高いなぁって。正確に言うと
「買えるなら欲しい!」です。
山田:なるほど。でもそれは、日本が超デフレだからだよね。北米やヨーロッパの感覚でいうと所得も1.5割増しだから、
あの性能が500万円くらいで買えるのって大バーゲンなんだと思う。
TAKASHI:たしかにアレが300万円台後半だった
絶対買ってますね!笑
乗り心地もさらに良くなっている感じがしたし、5ドアだから普段も使えますし。
山田:実は鈴鹿の後に、九州の試乗会で一般公道も走ったんだ。
TAKASHI:ノーマルタイヤ(ミシュラン パイロットスポーツ4S)を履いた試乗ができたんですか? どうでした!?
※注:鈴鹿サーキットの試乗では補修パーツとして用意されるサーキット向けタイヤ「ミシュラン パイロットスポーツ カップ2 コネクト」が装着されていた。
山田:そこの判断が難しくてさ。確かに乗り心地は先代よりさらに良くなっていたんだけど、ファミリーカーと呼ぶには少し固いな……と感じた。当たり前だよね、あれだけの走りをするんだから。
ただ比較試乗した「シビックe:HEV」が6000kmくらい走っていて、このアシかなりこなれてしなやかだったから、タイプRもそうなる可能性はある。
でもやっぱり、265/30ZR19の幅と、パイロットスポーツ4Sの剛性だと、横揺れしたときの乗り心地はちょっとだけ厳しいなぁ。
TAKASHI:
若い人なら大丈夫そうですね!笑
山田:あっ、またそういうこという(笑)。
でも若い人にとってはちょっと高いでしょ? 逆に
「セダン的な使い方ができるなら買えるカモ!」って考えている人は奥さんを説得する必要がありそう。
TAKASHI:そう考えると、タイプRが5ドアハッチである必要ってあるのかなぁ。だったら、もっと小さいタイプRが欲しいです。
山田:本来シビックは、そういう
「庶民のスーパーカー」だったよね。
でもシビック自体が大きくなってしまったから、矛盾が生じる。というか、次のフェイズに行ってしまったんだ。
TAKASHI:大きくなったシビックをベースに造れば当然エンジン排気量もパワーも大きくなるし、ホイールベースが長くなるから
「そしたらニュルもアタックしちゃえ!」となるわけですね?
山田:そうだね。代を経るごとにすごくなっていく。
ちなみに先代は、
歴代で最も売れたタイプRだったんだ。累計販売台数は4万7200台で、世界的に
「安くてすごいレーシングスポーツが出た!」って評価された。
ただ肝心な日本市場だと5年間で8100台だから、やっぱり
高価なレーシングスポーツなんだよね。日本国内で一番売れたのはボクも大好きな初代インテグラR(DC2)。これが3万台くらい売れたようだね。
TAKASHI:スポーツカーとして
「価値があること」と、
「アマチュアでも走りが楽しめること」って、微妙に違いますよね。
山田:だからTAKASHI君も言ってたけど、今の日本のためにホンダにやって欲しいのは
「フィット タイプR」を造ることなんだと思う。
先日ようやくフィットRSが出たけれど、やっぱりタイプRが欲しいよ。というかCR-Zに6MTのガソリン車があればよかったんだよな。
TAKASHI:そうですね!
山田:ホンダには
「タイプRはかくあるべし!」という条件が幾つかあるんだ。
フィットだとそれを満たすことはできないのかもしれないけれど、それでも小型車はフィットしかないんだから、なんとしてもやって欲しい。
別にハイパワーなエンジンを積まなくてもいいんだよね。きっちりエンジンをレブリミットまで回せて、足周りがしっかりしていて、ブレーキがきちんと効く「スポーツギア」にしてくれれば。背が高いN-BOXの走りをあれだけ素晴らしくまとめ上げられたんだから、できないワケがないんだよ。
TAKASHI:それ、すごくいいですね。 でもそう考えると、改めて
スイフト スポーツって偉大だなぁ!
山田:そう、“スイスポ”こそかつてホンダがしていたことを実践しているよ。軽自動車を作り続けているということもあるけれど、日本市場をきちんと見てくれている。
あれだけの走りを
188万5400円~というプライスで出しているのって、奇跡(笑)。
ホンダにそこまでしろとは言わないけれど、300~350万円で「フィット タイプR」を出してくれたら
「みんじど認定」だよ(笑)。
TAKASHI:速さやすごさじゃなくて、
アマチュアドライバーが楽しくモータースポーツできるクルマとして「タイプR」を出してくれたら最高ですね!
山田:開発陣のみなさんには、きちんとその思いを伝えておいたよ!
TAKASHI:
ホンダさん、お願いします!!
写真:市健治、本田技研工業、スズキ
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山田弘樹(やまだ こうき)モータージャーナリスト
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、各種ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦。
こうした経験を活かし、現在はモータージャーナリストとして執筆活動中。愛車は86年式のAE86(通称ハチロク)と、95年式の911カレラ(Type993)。
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。